ジュラルミンとはどんな金属? 加工に生かせる特徴や注意点

ジュラルミンとはどんな金属? 加工に生かせる特徴や注意点

ジュラルミンは、アタッシェケース(ジュラルミンケース)の素材として有名な金属です。軽量ながら強度が高いという特性を持つため、アタッシェケース以外にもさまざまな用途で活用されています。
この記事ではジュラルミンの特徴や種類ごとの違い、加工時の注意点などをご紹介します。

ジュラルミン(A2017)とは

ジュラルミンは、アルミニウムと銅を主な成分とした、軽量ながら高い強度を持つアルミニウム合金の一種です。亜鉛やマグネシウムなどの元素を配合して特性を変えた、超ジュラルミン(A2024)や超々ジュラルミン(A7075)といった種類もあります。
アルミニウム合金の一種なので、アルマイト加工と呼ばれる表面加工によって耐食性を高めることが可能です。

ジュラルミンはさまざまな場所で使われていますが、その中でも有名なのがジュラルミンケースでしょう。名前のとおり、ジュラルミンでできたアタッシェケースで、軽量かつ高強度というジュラルミンの特性が生かされています。
その他にも、航空機の部品や航空宇宙機器、金型、ネジ、テント、アウトドアチェアーなど、「軽さと強度」が同時に求められる場面において、幅広く使われています。

ジュラルミンの特徴

ジュラルミンは、さまざまな特性を持つアルミ合金の一種です。純アルミや他の金属と比較しながら、ジュラルミンの特徴をご紹介します。

・硬度はアルミニウムより高くステンレスより低い

ジュラルミンは、ジュラルミン・超ジュラルミン・超々ジュラルミンの3種類ともに、純アルミと比べて硬度が高いという特徴を持っています。超ジュラルミンで、硬度は純アルミの約2倍です。

しかし、鋼材ほどの硬度はありません。ジュラルミンの中で最も硬度の高い超々ジュラルミンでも、ステンレスに比べると硬度は劣ります。
硬度だけを比較すると、3種類とも純アルミとステンレスの間に位置します。

・耐食性を高める処理が必要

ジュラルミンには、硬度を高めるために銅が含有されています。銅の影響で、純アルミよりも耐食性は低下しているため、用途によっては耐食性を高めるための処理が必要です。
表面に酸化被膜を生成するアルマイト加工が一般的ですが、ステンレスのような耐食性の高い金属で表面を覆う加工も有効です。

・低比重で軽量

ジュラルミンの比重は純アルミと大きく変わらず、ステンレスの半分以下です。このことからも、軽量ながら高い強度を持っていることがわかります。

・溶接性は低め

他のアルミ合金より溶接性が低いため、結合方法に工夫が必要です。一般的には、リベットやボルトで結合を行います。
溶接する場合は、電気抵抗で発生する熱を使い接合させる「抵抗スポット溶接」が用いられます。

・切削性は全体的に良好

ジュラルミンの切削性は全体的に良好で、切削加工に適した金属といえます。
ただし、硬度が高くなるほど切削性は低下するため、超々ジュラルミンの加工は切削工具の選定と切削条件の設定に注意が必要です。

超ジュラルミンや超々ジュラルミンとの違い

ジュラルミンと同じ主原料でできていながら、異なる特性を持つ超ジュラルミンや超々ジュラルミンには、どのような違いがあるのでしょうか。
それぞれの特徴を見ていきましょう。

・超ジュラルミンの特徴

超ジュラルミンは、ジュラルミンと同じく2000番台のアルミ合金です。アルミと銅を主成分とする点はジュラルミンと同じですが、銅やマグネシウムの添加量が異なります。
超ジュラルミンは、銅とマグネシウムの添加量を増やすことで、強度と同時に切削性も向上させているのが特徴です。

・超々ジュラルミンの特徴

超々ジュラルミンは7000番台のアルミ合金で、銅とマグネシウム以外に亜鉛を5.1~6.1%含みます。アルミニウム合金ながら、鋼に近い強度を持つのが特徴です。
ただし、ジュラルミンと同様に銅を含むため、耐食性は高くありません。使用環境によっては耐食処理が必要です。

ジュラルミンを加工する時の注意点

ジュラルミンの切削加工を行う時には、以下の点に注意が必要です。

・切削工具への溶着

ジュラルミンは金属の中では比較的融点が低く、A2017だと約660℃で溶解が始まります。切削加工においては、切削点が熱を持ち、工具の刃先にアルミが溶着した結果、構成刃先が形成されたり、精度や仕上げが低下したりする恐れがあります。

このような溶着によるトラブルを防ぐには、切削熱を抑えて溶着を防ぐ工夫が必要です。
ポジティブなすくい角の切れ刃を選定する、クーラントで冷却するといった対策を取ると良いでしょう。

・クーラントによる腐食・変色

前述したとおり、溶着が起こりやすいジュラルミンの切削加工において、クーラントによる冷却は重要です。一方で、クーラントの種類によっては、腐食や変色といった別の不具合が発生することもあります。

クーラントは、アルミ合金に使用できるものや、変色に配慮したものを選定すると良いでしょう。変色防止のため、ドライ加工でエアブロー冷却を採用するケースもあります。

適切な条件での加工が大切

ジュラルミンは、アルミ合金としての軽さと鋼に近い強度を併せ持つことから、幅広い用途で使われています。
切削性も良好で金属の中では加工しやすい部類ですが、溶着や変色など、注意が必要な部分もあります。ジュラルミンの特性を考慮して、適切な条件で加工を行うことが大切です。