鋼の持つ特徴とは? 種類や被削性の違いによる工具の選定方法を解説

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鋼の持つ特徴とは? 種類や被削性の違いによる工具の選定方法を解説

普段「鉄」と呼ばれているものは、実は「鋼」のことを指しています。鉄と鋼はどのように違い、鋼にはどういった種類があるのでしょうか。この記事では鋼の種類や特性、切削加工時の工具選定方法などについてご紹介します。

鋼の特徴

炭素を含む鉄鋼を「炭素鋼」や「鋼」と言います。鋼はもともと「刃金」と書かれていました。字からもわかるように、日本刀に代表される刃物に使う金属として、価値の高いものだったのです。 鋼には炭素が含まれていますが、実際には鉄の中に炭素が分子として混ざっているわけではなく、セメンタイトと呼ばれる化合物(Fe3C)の状態で含有しています。セメントのように硬いことから名付けられたこのセメンタイトという物質によって、鋼は硬さを得ているのです。 鋼は炭素量が多ければ硬くなりますが、その反面粘り強さが少なくなり、炭素が少なければ柔らかくなりますが粘り強さが増すという性質を持っています。そのため、用途に応じて硬さと粘り強さのバランスを取ることで、多くの場面で使用されているのです。

鋼と鉄の違い

日常的に鉄と読んでいるものはほとんどが鋼で、純粋な鉄がそのまま使われることはありません。 純粋な鉄は非常に脆く柔軟性に欠けます。強度に乏しく加工にも適さないうえ、酸化しやすいという、扱いの難しい物質なのです。 このような事情から、0.02~2%の炭素を意図的に含ませることで、強度や扱いやすさを向上させた鉄の合金である「鋼」が広く使われています。

鋼の種類

鋼は炭素含有量によって呼び方が異なり、鋼としての品種も分かれています。材料としての「強さ」には、硬さ・粘り強さ・耐摩耗性・耐食性などさまざまな視点があり、全てを完全に満たすものはありません。 材料として使う経済性を考えると、コストも考慮しなければいけないため、用途に適した種類の鋼を使う必要があります。一般的に使われている鋼の分類は、以下の通りです。

・SPC材

炭素含有量0.1%未満の鋼は、JISではSPC材として規格されています。SPCはSteel Plate Coldの頭文字をとったもので、冷間圧延鋼板として家電の外装などに使われています。

・SS材

炭素含有量0.1~0.3%ほどの鋼は、構造用鋼(Steel Structure)に分類され、SS材と名付けられています。SSのあと3桁の数字が付き、それぞれ引っ張り強さを表しています。 一般構造用圧延鋼材としてよく知られているのは、SS300、SS400、SS490、SS540の4種類です。中でもSS400は低炭素鋼=軟鋼の代表的存在で、建築や自動車など多岐にわたる分野で活躍しています。

・S-C材

炭素含有量0.1~0.6%の鋼は、機械構造用炭素鋼鋼材と呼ばれます。S-Cの間に入る数字は炭素含有量を表し、使われることが多いS45Cは炭素含有量0.45%という意味です。 S-C材は焼入れ・焼戻しなどの熱処理によって特性を変えることもでき、強度が必要な軸やピンなどに使われています。

・SK材

SK材のSはsteel、Kはkouguを表し、炭素工具鋼鋼材と呼ばれる鋼です。0.6~1.5%の炭素を含み、S-C材と同様に、SKの後ろに付く2桁の数字は炭素含有量を表しています。 硬さと耐摩耗性に優れますが、SK材の多くは高温で硬度が低下するため、やすりや斧のような熱の発生が起こりづらい手工具を中心に使われています。

鋼の被削性と切削工具材種の選定方法

金属を被削材として見た場合、最も普及しているISO(国際標準化機構)の規格では、被削性によって金属は6つのグループに分けられています。 その中で、鋼はP系列に分類されていますが、炭素やその他元素の含有量によって被削性が異なるため、鋼の性質ごとにさらに細かく分けることができます。

1. 軟鋼

広義の炭素鋼、つまり鋼全体の中で炭素含有量0.25%以下のものは、一般的には軟鋼と呼ばれます。 軟鋼は切り屑が延びやすく仕上げ面を傷つけやすいため、切り屑の処理方法を考えなければなりません。切り屑が溶着すると、切り屑が刃先を覆って新しい刃先の層を作ってしまう「構成刃先」が起こり、加工後の仕上がりが悪くなります。 そのため、溶着しにくく切り屑を細かく処理できる切削工具の選定が必要です。

2. 炭素鋼

鋼の中で炭素含有量0.25~0.55%のものは炭素鋼と呼ばれ、主な鋼種としてS-C材が挙げられます。 炭素鋼(S-C材)は超硬合金との親和性が高く、炭素量が低いほど溶着しやすいです。一方で、炭素量が多くなれば切削熱が大きくなり、すくい面摩耗が発生しやすくなるので熱に強い工具を選定、高速度で切削し、構成刃先を防ぐ必要があります。

3. 工具鋼

鋼の中で、炭素含有量0.6%を超えるものは工具鋼と呼ばれます。 工具鋼は熱処理を加えて硬さを得ていますが、切削加工の切削熱により焼きが戻ってしまう恐れがあります。これにより被削材の強度が低下してしまう可能性があるので、切削熱には注意が必要です。

4. 低合金鋼

低合金鋼とは、一般的にNiやCr、Moなどの合金成分が5%以下のものを指します。 これらの低合金鋼は、合金成分と施されている熱処理によって被削性が異なることを留意しましょう。すくい面摩耗と逃げ面摩耗に注意し、高硬度鋼の工具でブレーカのあるものが推奨されます。

5. 高合金鋼

合金成分の量が10%以上の合金を高合金鋼と呼びます。合金成分の増加に伴って硬度が高くなり被削性は悪化するため、より硬い材種の切削工具を選定する必要があります。

鋼の種類と被削性に合った工具を使うことが大切

鋼の種類によって特性が異なりますが、一般的に硬さが増すほど粘り強さは小さくなるという特徴があります。この特徴は被削性に大きく関わるため、鋼を切削加工する場合は炭素含有量に注目することで、切削工具の選定や切削条件の設定が行いやすくなります。 効率的な切削と工具寿命の長期化のためには、鋼の分類に合わせた適切な工具選定が大切です。