鋳鉄とは? 鋳鉄の用途や種類ごとの特性、加工時のポイントを解説

鋳鉄とは? 鋳鉄の用途や種類ごとの特性、加工時のポイントを解説

鋳鉄(ちゅうてつ)はエンジンブロックやヘッド、フライホイールやブレーキローターのような自動車部品や、身近なものだと家庭用の鍋、道路のマンホールなど、幅広く活用されている金属です。しかし一言で鋳鉄といってもいくつか種類があり、それぞれ特性も異なります。 ここでは、鋳鉄の種類と特徴、加工のポイントなどをご紹介します。

鋳鉄とは

鋳鉄とは、鉄(Fe)を主成分に、2.1~6.7%という多量の炭素(C)を含んでいる鉄の合金の総称です。 含有する炭素量が多いほど溶ける温度は低くなるため、鋳鉄は比較的容易に型に流し込んで成形できます。これは、純粋な物質に別の物質が加わることで液体と固体の境目の温度が下がる、凝固点降下という作用によるものです。 鋳鉄は機械部品や工業品、水道管やマンホールの蓋など、身の回りのものから工業品まで幅広い用途で使われています。

鋳鉄と鋼や鉄との違い

通常、鉄の含有量が高く純度の高い「純鉄」は柔らかすぎる、酸化しやすいなどのデメリットがあり、実用性は高くありません。そのため、炭素や他の元素を加えて強度を持たせ、鋳鉄や鋼として使用します。つまり、鋳鉄や鉄、鋼はいずれも鉄と炭素で構成された金属で、大きな違いは炭素の含有量だけです。炭素量が多い順に、鋳鉄・鋼・鉄(純鉄)となります。また、鋼は鉄と一定量の5元素(炭素・ケイ素・マンガン・硫黄・リン)だけで構成される炭素鋼と、その他の金属を含んだ合金鋼に分けられます。

炭素含有量が少ない純鉄に近づくほど、硬さや耐摩耗性が小さく、靭性(粘り強さ)や溶融温度が高くなるのが特徴です。一方で、炭素含有量が多いほど、硬さや耐摩耗性に優れますが、靭性や溶融温度は低くなります。

鋳鉄と鋳物の違い

鋳鉄と似ている言葉に「鋳物(いもの)」があります。鋳物とは、溶かした材料を型に流し込んで作られたものを指す言葉です。つまり、鋳鉄は素材そのもの、鋳物は素材から作られた製品という違いがあります。
鋳鉄は生産量が多く、鋳物に使用される機会も多い鋼材ですが、すべての鋳物が鋳鉄でできているわけではありません。鋼を1500℃まで加熱して型に流し込んだ鋳鋼(ちゅうこう)がある他、アルミニウムや銅、マグネシウムなども鋳物の材料に使われています。

鋳鉄の種類

鋳鉄は添加物や炭素の状態、製造方法などからいくつかの種類に分けられ、それぞれ異なる特性を持っています。鋳鉄の種類と、それぞれの特徴をご紹介します。

・白鋳鉄

鋳鉄に含まれる炭素やケイ素が少ない場合、炭素は黒鉛(グラファイト)として析出せずに、炭素化合物のセメンタイト(Fe3C)になります。このセメンタイトの結晶により、破面が白くなるため白鋳鉄(はくちゅうてつ)と呼ばれています。 白鋳鉄は硬く耐摩耗性に優れますが、被削性は悪く加工が困難で、もろく割れやすいのが特徴です。

・ねずみ鋳鉄

鋳鉄にある程度の炭素量があると、炭素がセメンタイトよりも黒鉛の形で多く結晶化します。黒鉛の影響で破面がねずみ色に見えるものが、ねずみ鋳鉄や普通鋳鉄と呼ばれる鋳鉄です。

鉄(Fe)と鋳造(Casting)の頭文字を取ってFCと略され、FCの後ろには引張り強度を表す3桁の数字が記載されます。例えばFC150なら、引張り強度が最低150以上のねずみ鋳鉄ということです。黒鉛が花片の集まったような形状から「片状黒鉛鋳鉄」と呼ばれるものや、ねずみ鋳鉄と白鋳鉄が混在し、破面が白黒の斑点状に見える状態のものはまだら鋳鉄と呼ばれます。

ねずみ鋳鉄は強度や靭性に乏しいものの、鋳造しやすく被削性が高いのが特徴です。優れた耐摩耗性や耐食性に加えて、振動吸収性という特有の性質も持つことから、機械本体や部品、水道管、エンジンのシリンダーブロックなど、幅広い場面で使用されています。

・球状黒鉛鋳鉄(FCD)

マグネシウム(Mg)やセリウム(Ce)などを加えることで、組織中の黒鉛の形状を球状にしたものが球状黒鉛鋳鉄(FCD)です。強度に優れる「強靭鋳鉄(高級鋳鉄)」の一種で、球状化により引張強さ・延性などを得ていて、ねずみ鋳鉄の数倍の強度を持ちます。 「伸ばしやすい/しなやか」という意味のダクタイル鋳鉄や、「球状の」という意味でノジュラー鋳鉄と呼ばれることもあります。 機械的強度や耐摩耗性、耐熱性に優れ、熱処理によって靭性と耐食性を得ることもできますが、マグネシウムを添加するため引けやピンホールが生じやすいので注意が必要です。

強度の高さを生かして、自動車の部品や車道のマンホールなど、強度が必要な部品に使われています。

・CV鋳鉄(FCV)

CV鋳鉄は、ねずみ鋳鉄と球状黒鉛鋳鉄の中間の特性を持つ材料です。国際規格では以前からある材料ですが、日本国内では2013年にJIS規格として定められました。CVは「Compacted Vermicular」の略で、バーミキュラ(ぜん虫状の・うねうねした)という名前の通り、芋虫状の黒鉛組織を含有しています。

球状黒鉛鋳鉄に等しい強度を持ちながら、優れた機械加工性や鋳造性、高い熱伝導率、振動吸収性を備えているのが特徴です。その特性をいかして、油圧バルブやシリンダーブロックなどに使われています。

・可鍛鋳鉄

白鋳鉄を熱処理し、延性を与えたものが可鍛鋳鉄(かたんちゅうてつ)です。ねずみ鋳鉄や球状黒鉛鋳鉄は、鋳造した段階で黒鉛を生成しますが、可鍛鋳鉄は鋳造した白鋳鉄に焼きなましを施して、セメンタイトから黒鉛を生成します。もろく伸びにくいという鋳鉄の欠点を補いながら、ねずみ鋳鉄のような鋳造性を備えていて、叩いても割れが発生しにくいのが特徴です。
熱処理の方法から「白心可鍛鋳鉄」「黒心可鍛鋳鉄」「パーライト鋳鉄」の3種類に分けられます。

【白心可鍛鋳鉄】
熱処理で一部の炭素を除去(脱炭)したものが白心可鍛鋳鉄です。黒鉛がないことから、鋼と似た性質を持ちます。鋳造性や強靭さに優れ、溶接やろう付けを行うことも可能です。

【黒心可鍛鋳鉄】
熱処理によって白鋳鉄のセメンタイトを分解し、地鉄と黒鉛の組織にしたものです。柔らかさや伸びに優れています。

【パーライト可鍛鋳鉄】
パーライトとは、フェライト(α鉄の結晶)とセメンタイトが交互に重なった層状組織のことです。黒心可鍛鋳鉄よりも短時間の熱処理で、鉄の部分をパーライト組織とします。粘り強さがあり、引張り強度は可鍛鋳鉄の中でも特に優れています。

鋳鉄の特徴

前述の通り、鋳鉄は合金鋼や炭素鋼といった鋳鋼よりも、多くの炭素を含んでいるのが特徴です。炭素があることで融点が下がるため、比較的低い温度で溶解や鋳造といった作業を行えます。
また、多くの種類があることからもわかるように、鋳鉄の特性には黒鉛の形や大きさ、分布などが関与しています。そのため、黒鉛の分布によって材質を変えられる点もメリットです。熱処理や添加する合金元素によって、強度特性を変化させられます。

鋳鉄の被削性や加工時のポイント

鋳鉄は一般的な被削性を持ち、切削加工が容易な金属です。鋼やステンレス鋼に比べると切削抵抗は低く、切削熱も控えめで切り屑処理においても有利ですが、適切な工具と加工法の選定は必要になります。 切削加工に使う工具を選定する際のポイントや加工時の注意点をご紹介します。

・鋳鉄に適した切削工具

黒鉛の組織によって切り屑が細かく分断されるため、鋳鉄の切り屑排出性は良好です。黒鉛が潤滑作用を持つため、切削抵抗も小さくなります。 しかし鋳鉄は全般的に硬度があり、すくい角が大きく刃先が鋭い工具は欠けが起こりやすいです。欠けを防ぐために、すくい角が小さいネガチップを選ぶと良いでしょう。

・鋳鉄を加工する際のポイント

鋳鉄の切削加工では、切削油を使わないドライ加工が一般的です。粉塵による影響を最小限にする目的でウェット加工を行う場合もありますが、浸潤した切り粉が溝やすくい面に詰まることがあるので注意が必要です。 同じ鋳鉄でも、種類によって機械的特性が異なるため、切削条件を変えるようにします。一般的にねずみ鋳鉄は加工が容易ですが、球状黒鉛鋳鉄は構成刃先が起こりやすく、白鋳鉄は特に硬度が高く耐摩耗性があるため加工が難しいです。

鋳鉄の特徴を理解したうえで加工することが大切

鋳鉄は脆く割れやすいというイメージがある一方で、硬さや耐摩耗性に優れ、振動吸収性といった性質も持っています。切削加工は容易とされるものの、被削性が良く加工しやすいねずみ鋳鉄と球状黒鉛鋳鉄では機械的性質が異なります。種類によって特徴が異なるため、使用する切削工具や切削条件も変えなければなりません。 全般的に硬くもろいという性質があるため、刃先の欠けや材料のコバ欠け対策を考慮した工具の選定と条件設定、粉塵による工作機械の劣化や作業環境の悪化対策などが大切です。 鋳鉄の切削加工の際は、種類ごとの特徴を理解したうえで、適切な工具を使って加工を行いましょう。