成形金型や切削加工におけるアンダーカットとは? 対策方法の例を解説

成形金型や切削加工におけるアンダーカットとは? 対策方法の例を解説

製造業において、金型を製作したり、切削加工を行ったりする際に「アンダーカット」という言葉を耳にすることがあります。見聞きするだけではどのようなものかイメージが湧きにくいアンダーカットですが、加工の工程や精度に大きく影響を及ぼすため、注意しなければいけません。
ここでは、アンダーカットの概要や金型を使った成型加工と、切削加工におけるアンダーカットの対処法をご紹介します。

アンダーカットとは

ポリバケツの金型例

アンダーカットとは、成型品を金型から取り出す際に、そのままの状態では抜き出せない形状のことです。凹凸形状や細かい突起などがアンダーカットの例として挙げられます。
アンダーカットがあると、変形や欠けといった離型不良、そもそも製品を取り出すことができないなど、さまざまなトラブルにつながりかねません。どうしてもアンダーカットが発生する製品については、離型が可能になる機構を金型に備えることが大切です。
また、切削加工においては、1方向から見ることができず、刃物が届かない形状をアンダーカットと呼びます。コの字型の内側にあるポケット形状などが例です。

【金型】アンダーカットを抜き出す方法

アンダーカット形状がある成型品を金型から抜き出すには、何らかの対策を施さなければいけません。金型から成型品を抜き出す方法を、3つご紹介します。

・横スライド(アンギュラスライド)

スライドとは、成型品にあるアンダーカットの処理を行い、型開きで抜けるようにする機構のことです。横スライド(アンギュラスライド)は、製品の外側にアンダーカットがある時に使用されます。
金型を開くと同時にアンギュラピン(スライドと金型を連動させるピン)に沿ってスライドコアが横に移動し、アンダーカット部分を抜き取ります。

・傾斜コア

横スライドとは逆に、製品の内側にあるアンダーカットの駒を処理する方法が傾斜コアです。金型が開いた後の製品を押し出す力を利用して、真上方向に押す力を製品の斜面に当てることで、アンダーカットを抜き取ります。
横スライドが使用できないケースで採用されることが一般的です。

・油圧スライド

スライドの一種で、油圧シリンダによってスライドコアを移動させてアンダーカットを抜き取ります。スライドコアを強い力で動かせるため、長さのあるアンダーカットの処理に使われる方法です。

切削加工におけるアンダーカットの対処法

切削加工においても、アンダーカットは見過ごせない問題です。
コの字型の側面に未貫通のポケットを作る加工など、切削加工では実現しにくい形状が存在しますが、そのような時はどう対処すれば良いのでしょうか。

・部品を組み立てる構成にする

どうしてもアンダーカット部が必要な時は、いくつかの部品に分けて加工を行うのがおすすめです。複数の部品に分割して切削加工を行い、加工後に組み立てる構造を採用すれば、高精度なアンダーカット形状も実現できます。
切削加工でポケットを作ったL字型の素材と、一の字型の素材をボルトで連結するといった方法が例です。
部品の点数やねじ穴をあける工数などは増えてしまいますが、結果として加工の難易度は下がります。 材質によっては、加工した2つの部品を溶接して組み合わせることも可能です。

・放電加工を行う

アンダーカット部の精度は求められる一方で、複数の部品に分割することができない時は、型掘放電加工を行うのも有効です。
ポケットがない形状の部品を切削加工などで作製してから、該当部分に電極を近づけることでポケットを掘っていきます。
部品を分割せずに一体のまま加工を行えるのが、放電加工を行うメリットです。
ただし、電極を作る、放電加工を行うという2つの工程が発生するためコストはかさみます。

・3Dプリンタを使用する

アンダーカット部分に精度が求められない時は、3Dプリンタを使用して製品を作るのも良いでしょう。精度が求められる時は、3Dプリンタで余裕を持って成形してから、切削加工で精度を高めるといった工夫が必要です。
デメリットとしては、3Dプリンタは対応できる材質が限られる点が挙げられます。価格が切削加工などに比べると高価な点も考慮したうえで、使用するかどうかを決定しましょう。

・設計自体を変更する

設計自体を変更してしまうのも、方法として考えられます。
例えば、加工したいポケット形状の上側に加工用の穴をあければ、直接ポケット部分を切削加工できます。ポケット部分を止まり穴ではなく、貫通穴にしてしまうのも良いでしょう。
他にも、ポケットが円弧状で問題なければ、サイドカッターで切削することも可能です。
アンダーカット形状のような、加工の難しい部分が本当に必要なのかどうかを考えて、製品を設計することを心がけましょう。

シンプルな設計を目指すことが大切

アンダーカットは、金型を使った成型加工、切削加工のいずれにおいても、トラブルが起きやすい形状です。
成型加工では、横スライドや傾斜コアなど、アンダーカットの形状に応じて、適切な方法を選定して処理を行いましょう。切削加工では、製品の構成を変えたり、工程を増やしたりすることで、対処できる可能性があります。
ただし、アンダーカットがあると工数や破損のリスクなどは増します。基本的には、アンダーカットを減らしたシンプルな設計を心がけることが大切です。
製造過程をイメージして、本当に必要な部分なのかを考えながら、設計を検討しましょう。

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