銅・銅合金の特徴は? 種類ごとの違いや切削加工時の注意点も解説

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銅・銅合金の特徴は? 種類ごとの違いや切削加工時の注意点も解説

銅は電気を流したり熱を伝えたりすることを得意とする金属です。また銅を主成分とした合金も多く、見た目や性質を変えて、工業品から身の回りのものまで広い分野で使われています。 この記事では、銅が持つ特徴や銅合金の種類、切削加工時のポイントなどをご紹介します。

銅の特徴

銅は利用しやすい特性を多く持ち、古い時代から人の暮らしに関わってきた金属です。人々と長く深い関わりのある銅の特徴とは、具体的にはどのようなものでしょうか。

・熱や電気の伝導性に優れる

銅は、金属の中でも優れた熱伝導性と高い導電性を持っています。その特性を生かして、調理道具やヒートパイプをはじめ、導電媒体として電子機器などにも使われています。銅を用いたヒートパイプや電子部品がなければ、スマートフォンのような小型電子機器は実現していなかったでしょう。

・さびづらい

銅は空気に触れると表面に保護皮膜ができ、腐食の進行を防いでくれます。古代の銅製品が形を保ったまま発掘されることがあるのは、銅が耐食性に優れていてさびにくいためです。現代でも、屋根や船のスクリュー、給水管など、水にさらされる場所に使われています。

・色合いが美しい

銅は金以外では唯一金色の光沢を持ち、見た目が美しい金属でもあります。また、銅は大気中に置かれていると酸化が始まります。酸化が進むことで次第に褐色に変化していき、最後には美しい緑青色になるのも特徴です。

この見た目の変化も、酸化の際に金属表面に作られる保護皮膜によるものです。

・磁性を持たない

銅は磁性を持たないので、磁気を生じる恐れがありません。この特性を生かして、磁気が厳禁となる観測機や工具などに使われています。

・抗菌作用を持つ

銅イオンは抗菌作用を備えています。ドアノブや手すり、三角コーナーやシンクのストレーナーなどに銅が使われるのは、抗菌作用が期待できるためです。 他にも抗菌作用を持つ金属はありますが、金や銀のように貴金属で高価なものや、中毒の恐れがある鉛などのため、銅が使われています。

・加工性に優れる

銅は柔らかく展延性に優れています。銅線や銅管、銅鍋などに幅広く利用されているのは、加工がしやすいことも理由のひとつです。 プレスによる曲げ加工や絞り加工でさまざまな形状にできるだけでなく、被削性も良好なため、切削加工の材料にも適しています。

純銅の種類

銅と一口にいっても、大きく「純銅」と「銅合金」の2種類に分けられ、純銅は溶解の過程で残る酸素の量によってさらに3種類に分けることができます。ここでは、純銅の種類と、それぞれの特徴についてご紹介します。

・タフピッチ銅

導電性や熱伝導性、加工性に優れた純銅の一種です。600℃以上に加熱すると、内部に残存する酸素が水素と反応して水蒸気になり亀裂が入る「水素脆化」が起こる恐れがあります。
そのため、水素を含む還元性ガスのある環境下での高温加熱や溶接には向きません。主に化学工業や器物、建築などの用途で使われています。

・脱酸銅

タフピッチ銅に脱酸処理を行い、水素脆性の対策を施したものが脱酸銅です。りんを使って脱酸したものは「りん脱酸銅」と呼びます。 タフピッチ銅より導電性は低いですが、酸素を含まないため溶接やろう付けといった用途に適しています。

・無酸素銅

酸素をほとんど含まない最も純度の高い純銅です。酸素量は0.001%~0.005%で、特に電子管で使うものは純度99.99%以上が基準となっています。

銅合金とは?

「合金」とは、ひとつ以上の金属元素と、他の元素が混ざり合ってできた物質のことです。純粋な金属は、それぞれ長所や短所を併せ持っています。例えば、純度の高い鉄(純鉄)は脆く酸化しやすいなどの特徴を持っていて、そのままだと実用性は低いです。
しかし、鉄を主成分にクロム(Cr)などを混ぜて「ステンレス鋼」にすれば、酸化しにくい、強度に優れるなど、多くの特徴を持たせることができます。

このように、純金属の性質を改良できるのが、合金の強みです。銅は純金属の状態でも使われますが、亜鉛や鉛、錫、アルミニウム、ニッケルなどを組み合わせた「銅合金」としても広く使われています。
純銅と比較すると、銅本来の性質は弱まるものの、組み合わせる金属に応じて強度や被削性などの性質を高められるのが特徴です。

銅合金以外にも、鉛と錫で作られる「はんだ」や、アルミニウムに銅とマグネシウムなどを添加した「ジュラルミン」、マグネシウムに元素を添加する「マグネシウム合金」など、さまざまな種類の合金が開発されています。

銅合金の種類

銅合金は、混ぜ合わせる元素の種類や組み合わせによって、名称が変わります。主な銅合金の種類と特長は、以下のとおりです。

・高銅合金

銅合金の中でも銅の比率が高いもので、銅の持つ熱伝導性や導電性を大きく損なうことなく強度を高めたものが高銅合金です。 チタン銅、ベリリウム銅、ジルコニウム銅、コルソン合金、鉄入り銅、錫入り銅などがこれに分類され、中でもベリリウム銅は、銅合金としては最も高い強度を持っています。

・黄銅(真ちゅう)

黄銅・真ちゅう・ブラスといくつかの呼び方があります。古くから使われてきた合金で、銅合金の中でも使用量が多く種類も豊富です。 ベースとなっているのは銅と亜鉛(Zn)の合金で、鉛(Pb)や錫(Sn)、アルミニウム(Al)などを添加することで作られています。 亜鉛や添加元素の比率によって、丹銅やアルミニウム黄銅、雷管用黄銅、快削黄銅、七三黄銅、六四黄銅、65:35黄銅、ネーバル黄銅、アドミラルティ黄銅、高力黄銅などに分けられ、伝導率や加工性は異なります。

・青銅

青銅は銅を主成分に、亜鉛や錫を添加して作られます。黄銅と同じく、人類が古くから使用してきた合金の一種です。りんを添加して展延性に優れるりん青銅、さらに鉛を添加して被削性を向上させた快削りん青銅、高い耐海水性を発揮するアルミニウム青銅などがあります。 アルミニウム青銅は青銅に分類されるものの、錫を含んでいない点に注意が必要です。

・銅ニッケル合金

銅とニッケル(Ni)の合金で、耐食性や耐海水性を持ち合わせています。白銅、キュプロニッケル、洋白のほか、鉛を添加して被削性を向上させた快削洋白などの種類があります。

銅や銅合金の表記記号

銅や銅合金はJIS規格によって表記記号が定められていて、JISではアルファベットのCと4桁の数字で銅や銅合金を表しています。
C1000番台は無酸素銅やタフピッチ銅といった純銅が、2000番台なら銅と亜鉛の合金、3000番台は銅と亜鉛に鉛を添加した快削黄銅など、数字から大まかに種類を確認可能です。
また、数字の後に記載されるP(Plate・板)やT(Tube・管)などのアルファベットで、材料の形状を示しています。

銅を切削加工する際の注意点

銅は一般的に切削性に優れていますが、粘り気が強くバリが出やすいです。溶解温度も低いため、刃先に溶着しやすいというデメリットもあります。

また、純銅はアルミニウム合金より切りくず圧縮比が高く、被削性はやや劣ります。切削抵抗が大きく、低速切削ではその傾向がさらに顕著です。これらを考慮したうえで、純銅や銅合金を切削加工する際には、次のような注意点があります。

・油性のクーラントを使用する

切削加工では、刃先の冷却や溶着の防止を目的としてクーラントを使用します。銅や銅合金の加工を行う際は、クーラントの種類に注意が必要です。水溶性のクーラントでは銅が変色する可能性があるため、油性のクーラントの使用が推奨されます。

・すくい角の大きい切削工具を使用する

切削の際は、すくい角の大きいシャープな切削工具の使用が有効です。 材種としては、超硬素材のみの刃先を研磨したものが適しています。工具の切れ味が落ちていると、切削抵抗が増加し切削面が荒れる原因となるため、切れ刃の状態が良いものを使うようにしましょう。

・低速での切削は避ける

純銅は銅合金よりも切削抵抗が大きいです。切削速度が低い場合は切削抵抗が特に大きくなるため、温度上昇による溶着に注意しながら高速切削を行う必要があります。

純銅や銅合金ごとの違いを踏まえて最適な銅加工を

加工しやすく独特の光沢もある銅は、人類が長く使い続けてきた金属のひとつです。熱伝導性や導電性、耐食性、抗菌作用などの優れた特性を持ち、現代でもさまざまな形状に加工され使われています。 しかし、加工性が高いとはいえ、使用するクーラントの種類や切削抵抗を減らすための工具の選定など、注意したい点もいくつかあります。 適切な工具選定と切削加工時のポイントを踏まえ、効率的に銅の加工作業を行いましょう。