ツーリングのシャンクとは? 種類やBT・NTの違いなどを解説

ツーリングのシャンクとは? 種類やBT・NTの違いなどを解説

工作機械やマシニングセンタで切削加工をするとき、切削工具を保持するために使用する専用の保持具が「ツーリング(ツーリング工具)」です。ツーリングの各部には、ホルダやアーバ、ツールアダプタ、チャック、シャンクなど名称があり、それぞれ役割が異なります。
ここでは、ツーリングで重要な役割を持つシャンクについて、形状の種類や選定方法などをご紹介します。

ツーリングのシャンクとは?

ツーリング工具におけるシャンクとは、機械主軸につながるテーパ形状の部分で、ドリルやエンドミルのシャンクと同様に柄にあたる部分を指します。切削工具を工作機械やマシニングセンタなどの主軸に固定する際に、テーパ形状により芯のブレがないよう確実に保持するのが目的です。
ツーリングのシャンクは、汎用工作機械用とマシニングセンタ用の2種類に分けられ、形状や機構によって「BT」「NT」「HSK」のように呼ばれる場合もあります。また、「30番」や「40番」など、シャンクを番手で呼ぶケースもありますが、これは主軸に差し込むシャンクの大きさによる分類の方法によるものです。

ツーリングのシャンク形状の種類

ツーリングのシャンクの形状にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。ツーリングのシャンク形状のうち、主な5種類についてご紹介します。

・BTシャンク

BTは「ボトルグリップテーパ」を略した規格名称です。主にマシニングセンタに使用されるツーリングの規格で、ATCで使用するボトルグリップを持ちシャンクテーパ部で主軸に固定するタイプのシャンクを指します。シャンク後端に突起のついたプルスタッドボルトがあり、この突起を引っ張ることで強固に主軸へ引き込み保持します。
主軸との接触箇所は7/24テーパ、つまり軸方向24mmに対して直径が7mm小さくなるテーパ形状となっています。

・BBTシャンク

BTシャンクが持つ課題を解決するために、BTシャンクを改良したのがBBTシャンクです。BTシャンクは主軸とホルダの互いのテーパ部分が接触しますが、切削熱による加熱や重切削による応力によってシャンクが主軸に強く食い込んでしまい、Z軸方向の加工精度の誤差が発生したり、ツーリングの取り外しが困難になったりすることがありました。

BBTシャンクでは、テーパに加えてホルダのツバ(フランジの端面)と主軸の端面を接触させることで剛性を上げ、主軸を食い込みにくく且つ曲げ剛性をアップさせています。

・HSKシャンク

短く軽量という特徴を持ったシャンクです。ドイツ語のHohlschafte-Kegel(中空のテーパシャフト)から名付けられています。
名前の由来通り中空になっていて、軽量であることによりATC(自動工具交換)の交換時間が短いです。中空構造により切削工具やツールホルダに働く遠心力が小さく、バランスの良さと軽量さが求められる高速回転での切削にも対応できます。
また、HSKシャンクは1/10とテーパが小さいため、繰り返しの位置決め精度にも優れています。

・CAPTOシャンク

テーパは1/20で、上から見ると三角形の各辺が膨らんだようなおにぎり型(ポリゴン形状)になっています。このポリゴン形状によって曲げ剛性や捩り剛性、トルク伝達力が高められていて、重切削作業にも耐えることができるのが特徴です。
CAPTOシャンクは複合加工機向けとして使われることが多いです。マシニングセンタとターニングセンタで共用することでコストを抑えられるほか、時間短縮による生産性が向上できるなどのメリットがあります。

・NTシャンク

NTとは「ナショナルテーパ」を略した規格名称です。引きねじによって固定するタイプのシャンクで、フライス盤や中ぐり盤などに使用されます。

BTシャンクとNTシャンクの違い

BTシャンクはプルスタッドというスタッドボルトによって固定します。機械的に単純な動作でクランプできるものの、固定は確実で強固なため、ATC(自動工具交換)を備えたマシニングセンタへの取り付けに用いられています。
一方、NTシャンクは引きねじによって固定する方法です。汎用旋盤や中ぐり盤など、手動で工具を交換する工作機械への取り付けに用いられます。
このように、主軸に取り付けるための構造や使用される工作機械のタイプが異なる点が、BTシャンクとNTシャンクの大きな違いです。

シャンク規格の選定の際に確認したい点

シャンクには複数の規格が存在するため、選定の際には取り付ける工作機械に適したものを選定しなければなりません。ツーリングのシャンクタイプの選定にあたって確認したいポイントとしては、次の4点が挙げられます。
・取り付ける工作機械や主軸の規格
・加工対象物の材質や形
・回転数などの使用条件
・取り付ける切削工具の種類

適切なツーリング選定は加工効率の向上につながる

ツーリング工具のシャンクにはさまざまな規格があります。ツーリングの取り付け精度や保持力は加工精度にも影響するため、工作機械の主軸の規格に合わせた選定が重要です。それぞれの規格同士で互換性がない場合も多いため、規格を誤らないように注意して選定を行いましょう。

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