ローレットとは? 加工方法ごとの特徴と加工時の注意点をご紹介

ローレットとは? 加工方法ごとの特徴と加工時の注意点をご紹介

ドリルチャックの外周や工具の持ち手、手動で回す部分などに、ギザギザの加工が施されているのを見たことがある方は多いはずです。このようなギザギザの加工は、「ローレット」と呼ばれます。ローレットはどのようにして加工されていて、何が目的で行われるのでしょうか。この記事では、ローレット加工の概要や種類、加工方法などをご紹介します。

ローレットとは?

ローレットとは、金属表面に細かい凹凸を付けた模様のことです。模様を付けるための加工をローレット加工といいます。
フランス語で小さい輪や車輪などを意味する「ルレット(roulette)」が語源です。英語ではギザギザのことを「ナーリング(Knurling)」というため、ナーリング加工と呼ばれることもありますが、どちらも意味は変わりません。
ローレットの模様として一般的なのは、1方向に線が入っている「平目模様」と、2方向の線が十字に交わる「綾目(あやめ)模様」の2種類です。他にも、斜めの線が入った「斜目」などが使われることもあります。

ローレット加工を行う目的は?

ローレット加工は、金属製品において手で触れる部分の滑り止めを主な目的として施されます。平目は円周方向に対しての滑り止めとして、綾目は円周や軸方向に対しての滑り止めとして使われることが一般的です。
例えば、手動工具(ハンドツール)では持ち手部分にローレット加工が施され、滑り止めとして機能します。日常的にも、ペンのグリップやダイヤル、ネジのつまみ部分など、多くの場所で滑り止めとして用いられています。
また、ローレット加工を施すことで摩擦や食いつきが増えるため、抜けや回転を防ぐ用途でも活用可能です。プラスチック製品に組み付けるインサートナットなど、樹脂や木材に圧入する金属部品の外周にも、接合強度を高める目的でローレットが用いられています。
機能性を増すため以外には、製品のデザイン性を向上させる目的で加工が施されることもあります。

ローレット加工の方法

ローレットを施す加工の方法は、切削加工と転造加工の2種類に分けられます。ここでは、それぞれの具体的な方法を見ていきましょう。

・切削加工

切削加工によって被削材に細かい溝を彫り、模様を成形する方法です。旋盤に切削ローレットと呼ばれる、ローラー状の刃物(ローレット駒)が付いた工具を取り付け、被削材に押し付けて切削します。ローラーの数は模様によって異なり、平目だと1つ、綾目だと2つです。切削加工でローレットを施すメリットやデメリットとしては、以下の点が挙げられます。

【機械への負荷が少ない】
切削によるローレット加工は、切り屑を排出するため抵抗が抑制され、機械への負荷がそこまでかかりません。また、外形の盛り上がりが少なく、中空材や細長い対象物の加工にも最適です。
【長尺の被削材の加工に向いている】
切削加工は連続して加工を行うことができるため、長尺の被削材にローレットを施したい場合にも適しています。また、加工できる材質の幅が広く、樹脂などの金属以外の材料でも加工可能です。
【段差などの加工ができない】
幅広い材質に対応できる一方で、工具が干渉してしまうため、段差や出っ張りなどがある場合は加工できる箇所が限られてしまいます。また、切り屑を排出するため、仕上がりが素材径より小さくなる点にも注意が必要です。

・転造加工

対象となる金属に転造ローレットと呼ばれる工具を押し当てて、粘土に模様を付けるように模様を転写して造形する方法です。盛り上げ加工と呼ばれる場合もあります。切削ローレットと同様に、転造ローレットもローラーが1つのものは平目用、2つのものは綾目用です。転造加工でローレットを施すメリットやデメリットとしては、以下の点が挙げられます。

【短時間・低コストで加工できる】
転造加工では、塑性変形によって対象物を削らずに加工を行うため、切削加工に比べると短時間で加工が完了します。また、転造ローレットは切削ローレットよりも部品点数が少なく、安価な点もメリットです。
【段差があっても加工できる】
切削加工の場合は、工具が干渉するため段差があると加工できる範囲が限られてしまいます。一方で、転造加工なら段差の際まで加工を行うことが可能です。
【長尺物の加工には不向き】
転造加工は工具を押し付けて模様を転写するため、転造ローレットの幅分しか加工が行えません。切削加工と異なり、長尺物への加工には不向きです。
【加工時の抵抗が大きい】
加工時に大きな抵抗がかかり、工作機械への負担が大きくなる点も転造加工のデメリットです。硬い素材の加工には不向きで、樹脂素材は加工を行えません。

ローレット加工を行う際の注意点

ローレット加工の際は、注意したい点もいくつかあります。場合によってはローレット加工を行うことがデメリットとなり得るので、加工前に注意点を把握しておくことが重要です。 ローレット加工を行う際の注意点としては、以下の2つが挙げられます。

・コストアップ

ローレットは、主目的となる形状に成形した後に、滑り止めや美観向上といった用途で行う、付加的な加工です。目的形状に成形するだけよりも工数が増え、製造コストも増大します。
ローレット加工による利便性や接合強度、デザイン面での向上が、工数やコストの増加と見合っているかを見極め、バランスを取ることが重要です。

・精度への影響

切削加工、転造加工どちらの場合も、ローレット加工を施す部分の外形を変化させる可能性があります。また、切削ローレットや転造ローレットといった工具の状態によって加工精度が変わるため、精度の維持には工具管理の手間やコストがかかる点も見逃せません。

ローレット加工の方法は素材などに合わせることが重要

ローレット加工は、工具の滑り止めやインサートナットの接合性向上を目的として施される加工です。主目的とは異なる付加的な加工というイメージが強いですが、ユーザーの利便性を向上させ、製品の付加価値を高めるうえでは重要といえます。
また、インサートナットの場合は、ローレット加工を行わないと必要な強度を出せず、要件を満たせないこともあるかもしれません。
このように、ローレット加工は製品の価値として重要な意味を持ちます。ローレット加工を施す際は、求められる精度や対象の素材などを考慮し、加工方法を考えることが大切です。

この記事を読まれた方はこんな記事も読まれてます