チタンとは? 特性や種類を加工に役立てよう

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チタンとは? 特性や種類を加工に役立てよう

チタン(Ti)は優れた特性を持ち、さまざまな分野で使われている金属です。その一方で、難削材に分類されるなど、加工が難しい材質としても知られています。では、チタンを加工する際はどのような点に注意すれば良いのでしょうか。
この記事では、チタンの特徴や種類、加工時の注意点などをご紹介します。

チタンとは? 発見から実用化に至るまでの歴史

チタンとは、銀灰色をした金属元素のことです。元素記号は「Ti」で表されます。18世紀にイギリスの海岸で発見され、当初は「メカナイト」と名付けられました。
その後、ドイツの化学者が鉱石中からチタン元素を見出し、1910年にはアメリカの化学者が純度99.9%のチタンの抽出に成功したことで、金属チタンが生まれたとされています。名前は、地底の奥底に封じ込められたギリシャ神話の巨人「タイタン(ティターン)」に由来します。
チタンが工業や産業の分野で使われるようになったのは、1946年以降のことです。身近な金属である銅や鉄は数千年前から使われていることからもわかるように、実用化から日が浅く、さまざまな用途での活用が期待できる金属といえるでしょう。

チタンの特徴

チタンは、鉄やアルミニウムといった他の金属に比べて優れている部分が多く、幅広い方面で性能を発揮できることから、多くの用途で使われています。

・軽い

チタンは、金属全体の中でも軽い金属として知られています。比重で見ると、チタンの質量は鉄の2/3、銅の1/2ほどです。軽量な金属として有名なアルミニウムより比重は高いものの、強度や耐食性はアルミニウムより優れています。
この軽さを生かして、眼鏡やスポーツ用品、アクセサリーなどに使われています。

・強度に優れる

チタンの強度は、重さあたりで鉄の約2倍、アルミニウムの約3倍です。しなりやすく、少しの変形なら元の形状に戻る特性も備えています。
アルミニウムよりも強度が高いことから製作物を薄くできるため、チタンを使った方が結果として軽量化につながる場合も少なくありません。
軽量ながら強度に優れるという特性から、航空機部品にも使われています。

・耐熱性が高い

チタンの溶融温度は約1,660℃です。アルミの約660℃や銅の約1,080℃、鉄の約1,530℃と比較しても、熱に対して高い耐性を備えていることがわかります。
この耐熱性を生かして、高温になるロケット部品の材料にも使われています。

・耐食性が高い

錆びにくい点もチタンの特徴のひとつです。特に海水中での耐水性は、錆びにくい金属として有名な白金(プラチナ)にも肩を並べるほど優れており、船や海洋建造物の素材にも使われています。

・安全性が高い

チタンは安定した物質で、イオン化しにくいという特性もあります。イオンが溶出する恐れが少ないため金属アレルギーが起こりにくく、毒性もありません。
生体親和性の高さから、アクセサリーや人体に埋め込む固定器具、医療用の道具などに使われています。

チタンの種類と用途

チタンと呼ばれる金属には多くの種類があり、それぞれ特性も異なります。チタンを材質で分類すると、純チタンとチタン合金の2つに大きく分けられます。

・純チタン

名前のとおり、純度が極めて高いチタンが純チタンです。厳密には、鉄や酸素といった不純物も含まれています。チタン合金に比べて安価で流通量が多く、加工も行いやすいのが特徴です。建築や土木、電力など、幅広い業界で使われています。
JIS規格では、不純物の含有量から4種類に分けられていて、純度の高い1種が最も柔らかく、純度が低い4種に近づくにつれて硬くなります。

・チタン合金

チタン合金は、チタンにアルミニウムやニッケルなどを添加したものです。添加する物質や割合から、α型、β型、α+β型の3つに大きく分けることができます。
【α型】
チタンにアルミニウムを添加して作られた合金です。耐熱性が高く、低温環境での脆性破壊強度に優れています。安定した強度を持つ一方で、加工性は劣ります。

【β型】
β型は、クロムやモリブデンなどを添加して作られた合金です。高温に弱いという性質を持ちますが、チタン合金の中では最も強度が高いとされています。加工性にも優れていて、さまざまな用途で使われています。

【α+β型】
α型とβ型の特性を持っているのがα+β型です。耐熱性や強度、延性、靭性、加工性は良好で、チタン合金の中でも扱いやすいといえます。

いずれのチタン合金も、純チタンより高価で加工の難易度も高いため、主に医療や航空、高級レジャー用品といった分野で使われています。
また、チタン自体は生体親和性が高いものの、チタン合金にすることで、添加した物質により金属アレルギーが起こる可能性がある点に注意が必要です。

チタン加工が難しい理由

チタンは、次のような理由から加工が難しいとされます。

・強度があり工具が摩耗しやすい

チタンは強度が高いという優れた性質がある反面、強度と弾性があるため切削加工やプレス成形といった加工が難しいです。加工に使用する工具に高い負荷がかかり、工具の欠けや摩耗が発生しやすくなります。

・熱伝導率が小さい

熱伝導率が低い点も、チタンの加工が難しい理由のひとつです。切削加工時に熱が切り屑に逃げていかず、熱が刃先に集中しやすいうえに、変形抵抗が大きいことから熱も発生しやすくなります。加工の際は、切削熱の影響が大きいことを考慮しなければいけません。
また、チタンは科学的に活性であることから、他の金属との親和性が高く、加工時の熱によって工具との焼き付きが発生しやすい点にも注意が必要です。

・ヤング率が小さくたわみやすい

チタンは、変形の少なさを示す「ヤング率」が低い金属です。
切削加工中に変形やビビりなどが生じやすく、寸法精度を出しにくくなります。

・酸素と反応しやすく溶接が難しい

チタンは低温でも酸素と反応しやすい金属です。周辺が高温になる溶接時は、酸素や窒素、水素などと反応して、著しく溶接部分が脆化します。
溶接部分にシールドガスを使用するなど、十分な対策が必要です。

・切り粉が燃えやすい

細かく砕いたチタンは自然発火性が高く、切削熱によって切り屑が発火する恐れがあります。万が一切り屑が燃焼した際に、水をかけて消火を試みるのは厳禁です。燃焼中のチタンが急速に酸素と反応することで、水素爆発を起こす危険があります。
切り屑が発火した場合は、チタン用の消火材や乾燥した砂を使用して消火を試みてください。
また、切り屑を定期的に清掃するなどの対策も重要です。

チタンの特性を把握して加工を行おう

チタンは軽く強度がある、耐熱性や耐食性が高いといった優れた性能を持つ金属です。実用化から日が浅く、今後もさまざまな分野で使われる可能性を秘めた金属といえます。
一方で、熱伝導率が低い、たわみやすいといった特性から、加工の難易度が高いというデメリットもあります。切削熱を逃がす工夫を行う、溶接時はシールドガスを使用する、切り屑は定期的に除去して燃えるのを防ぐなどの対策は欠かせません。
加工を行う際は、チタンの特性を理解しておくことが重要です。

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