テーパーの意味とは? 勾配との違いや旋盤を用いた加工の手順

テーパーの意味とは? 勾配との違いや旋盤を用いた加工の手順

テーパー加工が施された部品は、さまざまな機械や設備に用いられています。この「テーパー」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
ここでは、テーパーの意味や勾配との違い、角度の計算方法などをご紹介します。

テーパーとは

テーパーとは、構造物の太さが先端に向かって細くなっている形状のことです。
テーパー形状を持つねじや工具などの名称として使われる他、先端に向けて細くなるパイプをテーパーパイプ、ピンをテーパーピンと呼ぶこともあります。
日常生活で身近なものでは、使い捨ての紙コップやプラスチックコップ、工事現場に置かれる三角コーンなどの側面の傾斜がテーパーの例です。

このようなテーパー形状を作る加工がテーパー加工で、強度を持たせる、嵌合の際に挿入しやすくする、密着性を高める、軸ブレや振動を軽減するといった目的で行われます。

テーパーと勾配の違い

テーパーと似た意味で使われる言葉に「勾配」があります。2つの違いを理解して、明確に使い分けることが大切です。 テーパーと勾配は、JIS規格では次のように定義されています。

テーパー:投影図又は断面図における相交わる2直線間の相対的な広がりの度合い
勾配:投影図又は断面図における直線の、ある基準線に対する傾きの度合い

言い換えると、テーパーは両側の傾斜の広がり(開き角)、勾配は片側の傾斜の傾き度合い(傾斜角)です。円錐状のバケツを例にすると、両側の傾斜の開きが対象だとテーパー、中心線を基準に片側の傾きが対象だと勾配になります。

テーパーと勾配を取り違えると、角度が2倍変わることもあります。設計時や加工時には、厳密な使い分けと入念な確認が必要です。

テーパー加工を行う方法の例

テーパーは、さまざまな方法で作ることができます。金属のテーパー加工としては、次のような方法が代表的です。

・旋削加工

円錐状のテーパー加工をするのに最適なのが、旋盤による旋削加工です。一般的には、片刃バイトで加工を行います。
送り方向に対して切込み量を増やしていくことで、テーパー形状を成形できます。

・テーパーエンドミルを用いたフライス加工

テーパーエンドミルとは、外周刃がテーパー形状になっているエンドミルのことです。さまざまな角度のテーパーエンドミルがあり、使い分けることで多種多様なテーパーを作ることができます。
抜け勾配を考慮した金型の製作時に使われる加工方法です。

・プレス加工

プレス加工でテーパーを作ることも可能です。金型でテーパー角が決まるため、予め定められたテーパー角で金型を作っておく必要があります。

・放電加工

テーパーエンドミルを使わずに、スクエアエンドミルで切削してから放電加工を行うことで抜け勾配をつける方法もあります。
放電加工は、アーク放電によって対象物を溶解させることで、目的形状に仕上げる加工方法です。放電加工については以下の記事もご確認ください。

旋盤を使ったテーパー加工のやり方

テーパー加工は、シャフトやスピンドルと歯車・プーリーなどを嵌合接続する際にも使われます。テーパー加工を施した部品同士を嵌合することで、軸ブレの低減による振動の抑制、機械の性能や静音性の向上といった効果を期待できるのがメリットです。

一方で、回転の芯を出した上で設計通りの強度を満たすには、高い加工精度が求められます。回転部品は断面が円形になるものが多く、旋盤やターニングセンタによる旋削加工が用いられることが一般的です。
旋盤を使う場合は、次のような手順でテーパー加工を行います。

1.刃物台を旋回させて、傾きの角度を調節する
2.縦送りと横送りのハンドルを操作し、テーパー加工の軸方向の終点を合わせる
3.横送りによって軸に対する垂直方向の終点を合わせる
4.刃物台送りによって加工の開始点に合わせる
5.刃物台送りを操作しながら被削材を切削する

また、被削材を傾けてテーパー加工を行う方法もあります。旋削を始めるまでのセッティングに手間がかかるものの、自動送りで切削することが可能です。

テーパー加工で必要な「テーパー角」の計算方法

テーパー加工を行う際は、テーパーの角度を求めなければいけません。テーパー角の計算方法も、覚えておくと便利です。テーパー角は、以下の式で求められます。

(太い側の径-細い側の径)÷長さ

この時のテーパー角は、実際の角度ではなく長さに対する傾きの倍率で表されています。
また、図面では角度ではなくテーパー比で表記されることも多いです。テーパー比(太い方と細い方の寸法比)は次のようにして表します。

太い側の径-細い側の径:長さ

例えば、太い側がΦ30、細い側がΦ10、長さが100の場合、テーパー角は1/5、テーパー比は1:5となります。

適切な工具や加工方法を選定してテーパー加工を行おう

テーパー加工は嵌合性や密着性の向上、抜け落ち防止などを目的に行われます。高精度が求められる場所に用いられることが多いため、加工には高い技術が必要です。
テーパー加工をする際は、素材の種類や加工形状に合わせて適切な加工方法・工具を選定し、効率的に加工を行いましょう。

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