- タップ加工の種類と特徴
- -切削式タップ加工の特徴
- -転造式タップ加工の特徴
- ドリル加工やリーマ加工との違い
- タップ加工の手順
- -1.下穴をあける
- -2.タップを挿入する
- タップ加工の注意点
- -加工ワークを確実に固定する
- -加工に適したタップを選定する
- -下穴径の確認
- -切削速度の設定
- -切削油の使用
- タップ加工は正しい方法で行うことが大切
タップ加工は金属におけるねじ切り加工のひとつで、切削加工のなかでは歴史も長く比較的簡単に行える作業とされています。タップ加工にはどのような種類があり、どういった点に注意すれば安全かつ精度の高い加工を行えるのでしょうか。
この記事では、タップ加工の種類や手順、注意点などをご紹介します。
タップ加工の種類と特徴
タップ加工とは、ドリルであけておいた下穴(キリ穴)にタップと呼ばれる工具を差し込み、めねじを成形する加工法です。
タップ加工は大きく「切削式」と「転造式」の2つに分けられ、それぞれ特徴が異なります。
・切削式タップ加工
切削式タップ加工は、ドリル(キリ)を使って成形するめねじの径に適した下穴をあけ、そこに切削式タップを差し込んでねじの谷部を削り落とすことで、ねじ山を成形していく方法です。 切削式タップ加工の準備で重要な点は、下穴径を正確に確かめることです。下穴径は下穴表で確認することがベストですが、「ねじ呼び径-ピッチ」でおおよその値を計算したり「ひっかかり率」から計算したりする方法もあります。
また、タップ加工では穴の内部で切削を行うため、作業に用いるタップの選定では切り屑の排出を考えることが重要です。
・転造式タップ加工
転造とは、金属に強い力を加えて塑性変形させることを指します。転造式タップ加工は、下穴の金属を押し広げてねじの山と谷を作っていく方法です。転造式タップ加工では切り屑が出ないため、切り屑の排出について考える必要はありません。
しかし、塑性変形によってねじの山と谷を作るため適正な量の材料が必要で、余分な負荷を避ける意味でも高い下穴精度が求められます。
ドリル加工やリーマ加工との違い
タップ加工は、ドリル加工やリーマ加工などと同じ「穴加工」に分類されますが、それぞれ別の目的で行われる加工です。
ドリル加工は「穴をあける」作業、リーマ加工は「穴を広げ精度を出す」作業、そしてタップ加工は「穴にめねじを作る」作業という違いがあります。
ドリル加工に関しては、こちらで詳しく解説していますのでご覧ください。
⇒ドリル加工について詳しくはこちら
タップ加工の手順
タップを使って下穴にねじ穴を加工することを「タップを切る」「タップを立てる」などと呼びます。タップを立てる手順は、以下のとおりです。
・1.下穴をあける
最初に、ドリルを使ってめねじを作る下穴をあけていきます。この段階で、使用するねじの大きさを決めておき、それに応じたサイズの下穴をあけることが重要です。
下穴が小さすぎるとタップが途中で動かなくなり、大きすぎるとねじ山を切ることができません。下穴径は、ねじの呼び径-ピッチで計算可能です。
下穴長さに関しては、タップの長さや形状にもよりますが、使用するねじの長さ+ピッチ分の余裕+ドリルの先端高さ分で計算できます。下穴径がM8までの場合は、ねじの長さ+5mmと考えても問題ありません。
また、下穴が斜めだとタップが折れる恐れがあるので、垂直に穴をあけることもポイントです。大きな穴をあける時は、複数回に分けて拡大していくと良いでしょう。
・2.タップを挿入する
下穴をあけ終えたら、切削油を注入しましょう。切削油を使うことで、切り屑の排出性が良くなり、詰まりなどのトラブルを防げます。
その後、タップを下穴に対して垂直に立て、回転させながら挿入します。タップが斜めにならないように注意が必要です。タップを回転させる方向は、正(右)ねじなら時計回り、逆(左)ねじなら反時計回りです。ただし、逆ねじを加工するには左ねじ専用工具が必要になります。
回りが悪い時は、無理に回すのではなく、少し反対に戻してから再度回転を続けましょう。そのまま回し続けると、タップが折れる恐れがあります。
タップ加工の注意点
タップ加工の際は、いくつかの注意点を意識しながら行うことで、きれいなねじ穴を作ることができます。ここでは、タップ加工で特に注意したい5つのポイントをご紹介します。
・加工ワークを確実に固定する
加工ワークの確実な固定(クランプ)は、あらゆる加工において基本です。 固定が適切にされていないと、めねじの精度不良やタップの破損、ワークの脱落、それにともなう事故の危険もあります。
・加工に適したタップを選定する
タップ加工の前に、被削材の材質や硬さに適したタップが選定されているか確認する必要があります。
また、加工する穴が通り穴か止まり穴かによっても切り屑の排出性は変わるため、タップを選定するうえでは重要です。タップの種類についてはこちらの記事でも解説していますので、ご覧ください。
ハンドタップ | スパイラルタップ | ポイントタップ | ロールタップ | |
通り穴 | 〇 | 〇 | ◎ | 〇 |
止まり穴 | 〇 | ◎ | × | ◎ |
構造用鋼 | 〇 | 〇 | ◎ | ◎ |
調質鋼 | ◎ | △ | 〇 | × |
鋳鉄 | ◎ | △ | △ | × |
アルミニウム圧延材 | 〇 | 〇 | 〇 | ◎ |
プラスチック | △ | ◎ | △ | × |
・下穴径の確認
下穴径は、精度だけでなく加工性や仕上がりにも影響する重要な要素です。
タップ加工における下穴径は、ねじ規格のめねじ内径の公差内とするのが基本ですが、公差内でもプラス方向であればタップ加工が容易で、切り屑の排出性も高まります。
・切削速度の設定
適切な切削速度が設定されているかどうかの確認も重要です。切削速度が速すぎると食いつきの悪化やかじり、切削面の荒れなどが発生し、遅すぎても作業性が低下します。
タップ加工の切削条件を求めるには、ねじ径とピッチ、回転速度と送り速度が、加工深さを計算するには、有効ねじ長やタップ食いつき部長さ、突出し長さなどが必要です。これらをもとに下穴の深さを決め、適した深さの下穴をあけておきましょう。
・切削油の使用
タップ加工における切削油の役割は、主に潤滑・冷却の2つです。切り屑の排出性や溶着防止にも影響します。
タップは他の回転式切削工具と比較すると回転あたりの送り量が大きく、1回転で1ピッチ掘り進める工具です。そのため切削油は潤滑性が重視され、不水溶性の切削油を多めに給油することが推奨されています。
ただし、近年は不慮の火災を防ぐ意味で、水溶性切削油も多用されています。
タップ加工は正しい方法で行うことが大切
素材に直接めねじを作ることができ、部品点数や工数を抑えられるなど、コストを下げて作業が行えるタップ加工は、多くの工作物において重要な加工法のひとつです。 作業の精度や安全性、作業効率を向上するためにも、適切なタップを選定し、正しい方法で加工を行いましょう。