マフラーなどで使われるスタッドボルトとは? 特徴を知って作業に役立てよう

マフラーなどで使われるスタッドボルトとは? 特徴を知って作業に役立てよう

スタッドボルトは、機械本体と部品の組み立てや切削加工における被削材の固定など、さまざまな場面で使われているボルトです。用途の広いスタッドボルトですが、具体的にどのような特徴を備えているのでしょうか。
この記事では、スタッドボルトの特徴や取り外す際の注意点、トラブル発生時の対処法などをご紹介します。

スタッドボルトとは?

スタッドボルトとは、両端に雄ねじが切られ、軸部のみで構成されたボルトのことです。頭部を備えていないのが特徴で、植え込みボルトとも呼ばれます。
片方を機械などに取り付けた後、もう一方に別の部品を取り付けて固定できるため、着脱の必要がある機械の部品同士を連結する場合に多く使われています。
身近なものでは、自動車やバイクのマフラーのエキゾーストフランジ、車軸フランジ、エンジン、ホイールなどが用途の例です。

スタッドボルトの特徴

スタットボルトは、具体的にどのようなメリットを備えているのでしょうか。ここでは、スタッドボルトの特徴や使用するメリットをご紹介します。

・摩耗や歪みに強い

スタッドボルトは、合金鋼やステンレス鋼などの硬い鋼を使用した転造加工によってねじを成形していて、硬度に優れているのが特徴です。摩耗に強く曲げ強度も高いため、エンジン部品や切削加工の固定などの用途で広く使われています。

・汎用性が高い

スタッドボルトには頭部がないため、ねじを差し込む深さやナットの位置を自在に調整できます。差し込み深さを変えられ着脱を繰り返せるなど、汎用性の高さも特徴のひとつです。

・軸方向の引っ張りに強い

頭部がある一般的なボルトの場合、頭部の下の部分に応力(物体内部に発生する力)が集中します。しかし、スタッドボルトは両端のねじ山で応力を分散して受けるため、軸方向の引っ張りに対する強度に優れています。
そのため、何度も着脱できる部分だけでなく、一度締めたら外す必要がない場所にも使用される点も特徴です。

スタッドボルトとウェルドボルトの違い

スタッドボルトと用途が似ているものに、ウェルドボルト(溶接ボルト)があります。ウェルドボルトとは、溶接することで部品に植え込むボルトのことです。ボルトの頭部に溶接用の突起がついており、頭部を部品の穴に通して溶接を行うことで、接合を強固に行います。
一般的なボルトとナットだと接合するのが難しい自動車の板金や電化製品、建築現場などで使われることが多いボルトです。

スタッドボルトを取り外す際のポイント

スタッドボルトには、レンチをかけられる頭部がないため、取り外し方が通常のボルトと異なります。また、スタッドボルトが固着している場合も注意が必要です。特に、熱や雨によるさびの影響を受けやすいバイクのマフラー回りのスタッドボルト・ナットは固着して取り外せないケースが広く見られます。
ここでは、スタッドボルトを取り外す際のポイントをご紹介します。

・ダブルナットで取り外す

スタッドボルトの取り外し方で一般的なのは、「ダブルナット」と呼ばれる方法です。片方の雄ねじに2つのナットを取り付けたら、下側のナットにレンチをかけて回転させます。
この時、重なり(締め付け)が弱いとナットだけ緩んでしまい、強すぎると作業後にナットを外すのが困難になります。重なりの強さには注意が必要です。

・スタッドボルト専用工具を用いる

スタッドボルトを回転させる専用工具を使用するのも、スタッドボルトを取り外す方法のひとつです。専用工具は、スタッドボルトが貫通した状態で使えるものと、そうではないものに大きく分けられます。
ただし、専用工具を用いた場合でも、固着したスタッドボルトを無理に回そうとするとねじ山が潰れてしまう恐れがあります。

・浸透性潤滑剤を使う

スタッドボルトは、溶接できない異種金属の部品同士の連結に多く使われています。アルミ部品と鉄鋼部品の連結などにも使われますが、異なる金属部品の連結は「異種金属接触腐食」(ガルバニック腐食)によりさびの進行が早く、ねじが固着しやすいです。
異種金属接触腐食とは、異なる種類の金属が接触した状態で水分などに触れた際に、電位差が生じて金属が腐食する現象のことです。
固着などが疑われてスタッドボルトを外すのが困難な場合は、浸透力の高い潤滑剤をスプレーして長時間放置すると、摩擦抵抗が減り外しやすくなります。
また、ボルトやナットを締める時に、焼き付き(かじり)を防止する潤滑剤やコーティング剤を使用しておくのも、固着を防ぐ手だてとして有効です。

・周囲を加熱する

スタッドボルトは、エンジンのアルミ製ハウジングやマフラーのエキゾーストマニホールドといった、熱を持つ部分にも多く使われています。高温加熱と冷却を繰り返すため、スタッドボルトが酸化と固着を起こしている場合が多く、取り外しが困難なことも少なくありません。
そのような場合は、スタッドボルトが差し込まれた部品側をバーナーなどで加熱し、熱膨張させると取り外しやすくなります。ただし、加熱する部品側の熱伝導率が高い場合は、予想より離れた場所まで熱が伝わることもあるため、作業時には注意が必要です。

折れた場合の対処法

作業中に、スタッドボルトが折れてしまうことも考えられます。軸部が露出している場合は強力なプライヤーで軸部をつかみ、スタッドボルトを回せるか試してみてください。
部品に対して凹状に折れた場合は、ポンチによる打撃で回転力を与えたり、スタッドボルトの断面に穴をあけ、特殊工具を差し込んで回したりする方法で取り外せる場合があります。 いずれも不可能な場合、周囲に大きな穴をあけてからねじ山を切り直し、スタッドボルトをサイズアップする方法も有効です。ただし、この方法は修理スペースや強度との兼ね合いもあるため、最後に試みると良いでしょう。

特徴や注意点を知ってさまざまなシーンでスタッドボルトを活用しよう

スタッドボルトは、金型の組み立てや工作機械のワーク固定、自動車部品など、さまざまな場所で使われる汎用性の高いボルトです。エンジンなどの高温になる部分に使用されることも多く、高温と冷却による固着などが起こる可能性があります。頭部がなく一般的なボルトとは取り外し方も異なるため、作業の際は注意が必要です。
事前に正しい使い方や特徴を知っておき、スタッドボルトを有効活用しましょう。

この記事を読まれた方はこんな記事も読まれてます