鋼材の特徴とは? 代表的な種類とそれぞれの違いを解説

MENU
MENU

鋼材の特徴とは? 代表的な種類とそれぞれの違いを解説

日常的に「鉄」と呼んでいるものは、実は「鋼」のことを指しています。鉄と鋼はどのように違い、鋼にはどういった種類があるのでしょうか。この記事では鋼の特徴や鉄との違い、代表的な種類とそれぞれの特徴などについてご紹介します。

鋼の特徴

炭素を含む鉄鋼は「炭素鋼」や「鋼」と呼ばれます。鋼はもともと「刃金」と書かれていました。字からもわかるように、日本刀に代表される刃物に使う金属として、価値の高いものだったのです。

鋼には炭素(C)が含まれていますが、実際には鉄(Fe)の中に炭素が分子として混ざっているわけではなく、セメンタイトと呼ばれる化合物(Fe3C)の状態で含有しています。「セメントのように硬い」ことから名付けられたこのセメンタイトという物質によって、鋼は硬さを得ているのです。 鋼は炭素量が多ければ硬くなりますが、その反面粘り強さが少なくなり、炭素量が少なければ柔らかくなりますが粘り強さが増すという性質を持っています。そのため、用途に応じて硬さと粘り強さのバランスを取ることで、多くの場面で使用されているのです。

鋼と鉄の違い

鋼と鉄は、どちらも鉄と炭素からできている素材です。これら2つの違いは、含まれている炭素量にあります。

実は、日常的に鉄と呼ばれている素材はほとんどが鋼で、純粋な鉄がそのまま使われることはありません。純粋な鉄(純鉄)は、酸化しやすい、脆い、柔軟性に欠けるなど欠点が多く、工業用途に適さないためです。

しかし、含まれている炭素量が増えると、硬く強くなっていきます。このような事情から、鉄に炭素を意図的に含ませることで、強度や扱いやすさを向上させた「鋼」が広く使われています。

炭素量や硬さによる鋼の種類

鋼は、炭素の含有量や添加されている成分、硬さなどから、いくつかの種類に分けることができます。代表的な鋼材の種類とそれぞれの特徴、切削時のポイントなどは、以下のとおりです。

1. 低炭素鋼

広義の炭素鋼、つまり鋼全体の中で炭素含有量0.30%以下のものは、一般的には「低炭素鋼」や「軟鋼」と呼ばれます。

低炭素鋼は切り屑が延びやすく仕上げ面を傷つけやすいため、切り屑の処理方法を考えなければなりません。

切り屑が溶着すると、切り屑が刃先を覆って新しい刃先の層を作ってしまう「構成刃先」が起こり、加工後の仕上がりが悪くなります。 そのため、溶着しにくく切り屑を細かく処理できる切削工具の選定が必要です。

2. 高炭素鋼

炭素鋼の中で炭素含有量が0.30~2.1%のものは「高炭素鋼」と呼ばれます。機械の構造部品やドリルなど、硬度が求められる用途で使われるのは主に高炭素鋼です。ただし、炭素量が増えて硬度が増すと靭性は下がります。

加工を行う際は、把握力に優れたホルダで工具を固定すると、仕上げ中のビビリを抑えることができます。

工具の耐久性や仕上げ面の精度を保ちたい場合は、切削速度や送り速度を早くして切り込み量を減らす「高速加工」を行うのが有効です。

3. 低合金鋼

炭素鋼に、5大元素(炭素・シリコン・マンガン・リン・硫黄)以外の元素を一定以上添加した合金が「合金鋼」です。低合金鋼とは、一般的にニッケル(Ni)やクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)などの合金成分が5%以下添加されているものを指します。

低合金鋼は、合金成分と施されている熱処理によって被削性が異なることを留意しましょう。すくい面摩耗と逃げ面摩耗に注意し、旋削加工での超硬チップなどの工具ではブレーカのあるものが推奨されます。

4. 高合金鋼

合金成分の量が10%以上の合金を高合金鋼と呼びます。合金成分の増加に伴って硬度が高くなり被削性は悪化するため、より硬い材種の切削工具を選定する必要があります。

炭素鋼の用途による分類

前述したとおり、鋼は炭素含有量や添加されている成分によって呼び方や用途が異なります。材料としての「強さ」には、硬さ・粘り強さ・耐摩耗性・耐食性などさまざまな視点があり、全てを完全に満たすものはありません。用途に応じて、さまざまな種類の鋼を使い分けることが重要です。

ここからは、一般的に広く使われている炭素鋼の用途ごとの分類をご紹介します。

・SPC材

炭素含有量0.1%未満の鋼は、JISではSPC材として規格されています。SPCはSteel Plate Coldの頭文字で、冷間圧延鋼板として家電の外装などに使われています。

・SS材

炭素含有量0.1~0.3%ほどの鋼は、構造用鋼(Steel Structure)に分類され、SS材と名付けられています。SSのあと3桁の数字が付き、それぞれ引っ張り強さを表しています。 一般構造用圧延鋼材としてよく知られているのは、SS300、SS400、SS490、SS540の4種類です。中でもSS400は低炭素鋼=軟鋼の代表的存在で、建築や自動車など多岐にわたる分野で活躍しています。

・S-C材

炭素含有量0.1~0.6%の鋼は、機械構造用炭素鋼鋼材と呼ばれます。S-Cの間に入る数字は炭素含有量を表し、使われることが多いS45Cは炭素含有量0.45%という意味です。 S-C材は焼入れ・焼戻しなどの熱処理によって特性を変えることもでき、強度が必要な軸やピンなどに使われています。

・SK材

SK材のSはsteel、Kはkougu(工具)を表し、炭素工具鋼鋼材と呼ばれる鋼です。0.6~1.5%の炭素を含み、S-C材と同様に、SKの後ろに付く2桁の数字は炭素含有量を表しています。 硬さと耐摩耗性に優れますが、SK材の多くは高温で硬度が低下するため、やすりや斧のような熱の発生が起こりづらい手工具を中心に使われることが一般的です。

炭素工具鋼以外にも、合金工具鋼や高速度工具鋼(ハイス)などの種類があり、用途によって使い分けられています。

用途に応じた使い分けが大切

鋼の特性は種類によって異なりますが、一般的には硬さが増すほど粘り強さは小さくなります。適した用途や被削性を大きく左右するため、鋼材を使いたい、加工したいといった場合は、炭素含有量に注目することが大切です。
炭素含有量ごとの違いや特徴を押さえておけば、切削工具の選定や切削条件の設定も行いやすくなるはずです。