SUS(ステンレス鋼)とは?身近な金属素材の特徴と種類ごとの使い分け方

SUS(ステンレス鋼)とは?身近な金属素材の特徴と種類ごとの使い分け方

SUSは幅広い分野において、さまざまな用途で使われている金属素材です。具体的にどのような特徴を持ち、どういった分野で使われているのでしょうか。
この記事では、SUSの特徴や用途、SUSを代表する4系統の種類などをご紹介します。

SUSとは

SUS(サス)は「Steel Use Stainless」の略で、鉄(Fe)を主成分として、クロム(Cr)を10.5%以上含む鉄合金の一種です。ステンレス鋼とも呼ばれます。
鉄やクロム以外にも炭素(C)、ニッケル(Ni)などが含まれていて、添加する元素の量を調整して性質を変えられるのが特徴です。
JISだけでも100以上の種類があり、SUS304やSUS410など「SUS+3桁の数字」で種類を区分しています。

「Stainless」が「さびない」という意味の英語であることからもわかるように、SUSの一番の特徴は「さびに強い」という点です。
一般的な「金属」は、鉄と酸素が結びついて酸化鉄になることで、さびが発生します。
一方で、SUSは鉄にクロムを含有させて「不動態被膜」と呼ばれる腐食に強い膜を表面に生成しているのが特徴です。不動態被膜は傷ついてもすぐに再生するため、SUSはさび(腐食)に強いという特性を持つことができます。

ただし、実際には何らかの原因でさびることもあるため、厳密には「さびにくい鉄の合金」といえます。

SUSの特徴と用途

SUSは、「さびにくい」という代表的な特徴の他にも、優れた性質を多く備えている合金です。ここでは、一般的なSUSの特徴と、それを生かした主な用途をご紹介します。

・耐熱性があり高温に強い

SUSは耐熱性を備えていて、500℃ほどまで引っ張り強度が大きく低下することはありません。熱に強いため、高温になる自動車のブレーキディスクなどに使われています。
ただし、種類によっては500℃を超えると大きく強度が落ちてしまいます。

・放熱性が低く保温性に優れる

SUSは熱伝導率が低いのも特徴です。放熱性が低く保温性に優れていることから、水筒やポットの内壁などにも用いられています。
一方で、放熱性が必要とされるエンジン部品には向いていません。

・抵抗が高めで電気を通しにくい

鉄や銅、アルミニウムといった他の金属素材と比較して、SUSは抵抗が高く電気を通しにくいです。導電体ではあるものの、通電箇所に使われることはほとんどありません。

・清潔に使える

さびにくい特性から、水に触れる場所でも清潔に使い続けられます。光沢のある美しい美観を保ちやすいため、食器や調理器具、シンクの他、食品の生産設備、化学プラントなどでも使われています。

SUSの代表的な種類

SUSは、大きく4つの系統に分けることができます。系統ごとの特徴と、代表的な鋼種は以下のとおりです。

・オーステナイト系

オーステナイト系は、鉄を主成分として炭素0.15%以下、クロム16%~20%、ニッケル8%以上を含むSUSが分類されます。他系統のSUSよりも耐食性や耐熱性に優れていて、一部を除き磁性を持ちません。溶接しやすいため、さまざまな加工が可能です。

オーステナイト系の中では、クロム18%、ニッケル8%を添加したSUS304(サス サンマルヨン)が代表的な鋼種として挙げられます。クロムとニッケルの含有量から「18-8」と記載される場合もあります。
全般に高い耐食性や耐熱性を持つため、食器や工業設備、電車の外板など、幅広い用途で使われている種類です。

・フェライト系

フェライト系は、鉄を主成分として炭素0.12%以下、クロム11%~32%を含みます。基本的にはニッケルを含みません。
耐食性はやや劣るものの、熱処理による硬化がほとんどないため、成形加工にも適しています。オーステナイト系と異なり、磁性を持つのも特徴です。

フェライト系の中では、クロム18%を含有しニッケルは含まないSUS430(18クロム/18-0)が代表的です。台所のシンクや厨房機器、洗濯機のドラム、建築金具などで使われています。

・二相系

オーステナイト系とフェライト系の金属組織を持つのが二相系です。オーステナイト・フェライト系とも呼ばれます。
海水や応力腐食割れに対する耐性を備えていることから、海水に触れる装置や、海水を冷却水として使う発電所、プラントなどで使われています。

・マルテンサイト系

マルテンサイト系は、炭素0.1%~0.40%、クロム12%~18%を含む系統です。焼入れで硬度を上げられるため、配合と熱処理によって特性を変えやすいという特徴を持ちます。

クロム13%を含むSUS403や、SUS410などが代表的なマルテンサイト系です。SUSの中でも強度が高いため、機械構造部品やタッピングネジに使われます。焼入れできるという特性を生かして、刃物に使われることも多いです。

SUSの特性を理解して適した用途に活用しよう

SUSは、鉄合金の中では特殊な「さびにくい」という性質を持つ金属素材です。耐食性だけでなく、耐熱性や強度にも優れているため、食器や機械部品、プラント設備など、さまざまな用途で活躍しています。
ただし、SUSには非常に多くの鋼種があり、それぞれ特性が異なります。SUSの特性を生かすには、鋼種ごとに適した用途があると理解しておくことが重要です。