シャーリング加工とは? 加工で使われる機械の種類と加工時のポイント

シャーリング加工とは? 加工で使われる機械の種類と加工時のポイント

シャーリング加工は、金属加工において重要な作業のひとつです。シャーリング加工を行う際に使用する機械は、シャーリングマシンと呼ばれます。
この記事では、シャーリング加工に使われるシャーリングマシンの種類や、安全にシャーリング加工を行うためのポイントをご紹介します。

シャーリング加工とは

シャーリング加工(せん断加工)は、金属を切断する加工の一種です。
ハサミで紙を切るのと同じように、上下の刃で金属板を挟み込むようにして切断するのが特徴です。金属の切断方法にはいくつかの種類がありますが、その中でもシャーリング加工は極めて物理的に切断する方法といえるでしょう。
シャーリング加工に使われる機械は「シャーリングマシン」や「せん断機」と呼ばれます。

シャーリング加工で使う機械の種類

シャーリング加工で使用するシャーリングマシンは、動作原理によって2種類に分けられます。加工の際は、それぞれの特徴を知っておくことが大切です。ここでは、シャーリングマシンの種類と特徴をご紹介します。

・機械式シャーリングマシン

刃を押し下げる動力が機械式のシャーリングマシンです。メカ式シャーリングマシンやメカシャーリングとも呼ばれ、モーターの回転力をクラッチで伝達することで刃を駆動させます。本体構造がシンプルなので、メンテナンスは簡単です。
切断スピードが速く作業を高効率で行えるのも魅力ですが、一般的に6mmを超える厚板には対応できません。

・油圧式シャーリングマシン

油圧によって刃を動かし、せん断を行うシャーリングマシンです。安定した圧力で切断できるため、切断面はきれいに仕上がります。また、6mmを超える厚板も切断可能です。
油圧シリンダーによって刃を動かすため高速な動作が難しく、加工スピードは機械式に劣りますが、切断時の衝撃は小さいです。騒音や振動は少なく、刃の寿命も機械式より長くなります。
ただし、定期的な作動油交換を行う必要があることから、メンテナンスコストは高い傾向にあります。

シャーリング加工を行う際のポイント

金属を自動または半自動で切断してくれるシャーリングマシンは、金属加工に欠かせない便利な機械です。しかし、使用する際は注意しなければならない点もあります。シャーリングマシンによる事故や加工品質の劣化などを防ぐために、以下のポイントに注意して作業を行いましょう。

・クリアランスの調整

シャーリング加工の際は、加工品質に影響を与えるクリアランスについて知っておく必要があります。クリアランスとは、上刃と下刃が重なり合ったときの隙間のことです。
クリアランスが小さいと切断時の負荷や刃の消耗が増え、大きいとダレやバリも大きくなり品質の低下につながります。
加工を行う際は、クリアランスを都度調整し、刃の寿命と品質のバランスを取るようにしましょう。

・シャー角の調整

シャーリングマシンの刃は、切断する板に対して平行ではなく、角度がついた状態で押し当てられます。ハサミで紙を切る際に、角度のついた状態で紙を挟み込んでいる原理と同じです。
このときの上刃と下刃の角度を「シャー角」や「レーキ角」といいます。
シャー角を大きく設定すると、切断時に必要な力が小さくなるため刃の寿命が延びますが、ボウ(たわみ)やツイスト(ねじれ)、キャンバー(反り)などの変形が生じやすくなります。寸法精度が落ちるのを防ぐために、切断する板の材質や板厚、加工スピードに応じて、シャー角の調整が必要です。

・歩留まりを考えた板取り

シャーリングによって加工を行う際は、できる限り多くの加工材を取り、残材が少なくなるようにしましょう。歩留まりが高くなるように板取りすると、コストと作業時間の効率化が見込めます。
ただし、材料にヘアラインがある場合は、製品に対してヘアラインがどの方向で入るかを考慮して切断しなくてはなりません。

・最大板厚の確認と厳守

シャーリングマシンには、機械ごとにそれぞれ最大板厚が定められています。最大板厚を超えた材料の切断は機械の故障につながるため、最大板厚を確認し厳守しましょう。

・稼働部への接近は厳禁

シャーリングマシンの稼働中は、材料の挿入部に絶対に手を近づけてはいけません。刃だけでなく、板押さえによっても事故につながる恐れがあります。
また、シューター付近では切断後の加工剤が落ちてくるため、マシンの後方も注意が必要です。事故を回避するため、加工材のストッパーや侵入防止柵を設置するなどの対処を行っておきましょう。

シャーリング加工とレーザー加工を用途に応じて使い分けよう

シャーリング加工は素早く連続で金属を切断したり、一度の動作で複数の加工材を取ったりできるため、現代の産業に欠かせない加工機となっています。
シャーリング加工と同様の加工が行える加工方法に、レーザー加工が挙げられます。レーザー加工は複雑な形状の加工が行え、仕上がりもきれいですが、加工速度はシャーリング加工に劣り、厚板の加工にも向きません。
効率的な作業を行うために、シャーリング加工とレーザー加工を用途に応じて使い分けると良いでしょう。

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