加工時に重要な切削条件。求め方と各加工における設定のポイント

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加工時に重要な切削条件。求め方と各加工における設定のポイント

切削加工を行う際に、非常に重要な意味を持っているのが切削条件の設定です。この記事では、切削条件におけるそれぞれの項目が持つ意味や求め方、旋盤での旋削加工、フライス盤でのフライス加工における切削条件設定のポイントをご紹介します。

切削条件の設定による影響

切削加工において、効率的な作業を行うために考えなければならない要素は、作業時間・加工精度・工具寿命の3つです。時間的効率を重視し作業時間を短くすると、時間効率は向上させられますが、加工精度を上げられず工具寿命も短くなります。一方で、加工精度を上げるために時間をかけると、作業効率の低下を招いてしまい利益につながりません。

このように3要素はそれぞれ拮抗していて、時間・精度・寿命の3つを同時に100%にすることは不可能です。切削加工を行う際は、これら3要素のバランスを取ることが重要となり、そのバランス調整をする役割を担っているのが切削条件の設定です。 被削材の材質や加工に求められる精度、使用する工具の剛性やコーティングなどを考慮して切削条件を設定することで、工具寿命と精度や時間のバランスが取れた加工が可能になります。

切削条件の求め方の基本

具体的に切削条件はどのような項目を設定すれば良いのでしょうか。ここでは、切削条件の具体的な項目について、それぞれの意味と求め方を解説します。

・切削速度

切削速度とは、切削工具が被削材を切り取る速さのことです。1分間のうちに切れ刃が被削材を進んだ距離で表され、旋盤加工の場合は、被削材が1回転すると被削材の円周分バイトが進んだことになります。切削工具が進む速度や切削加工に要した時間ではありません。

加工の際に切削速度を上げると、作業時間を短縮して仕上げもきれいになりますが、切削熱が上昇し、工具寿命は短くなります。一方で、切削速度が遅すぎる場合も、加工面が粗くなったりビビりが発生したりするため注意が必要です。
切削速度は次の式で求められます。

切削速度 V(m/min)=π×D×N/1000

この式において、Dが表すのは旋削加工の場合は被削材の直径、穴あけやフライス加工の場合は刃径となります。Nは1分あたりの回転数です。

・回転数

回転数は切削機械の主軸が1分間に何回転するかを表します。回転数は切削速度との関係が深く、回転数は切削速度と逆の方法により求められます。

回転数 N(rpm(rev/min))=切削速度×1000/π×D

計算式からもわかるように、回転数が大きくなるほど切削速度も速くなります。

・送り速度

送り速度は、切削工具を移動させる速度のことで、送り量やテーブル送りとも呼ばれます。1刃あたりで何mm進むか(mm/tooth)、1分間あたりに何mm進むか(mm/min)、被削材1回転あたりに何mm進むか(mm/rev)など、送り速度にはいくつかの表記方法があり、表す単位が異なるため注意が必要です。 旋削加工の場合は被削材1回転を基準として表し、次の式で求められます。

旋削の場合 → 1分あたりの送り F(mm/min) = 回転あたりの送り f(mm/rev) x 主軸回転数 N(rpm)
フライスの場合 → 1分あたりの送り F(mm/min) = 一刃あたりの送り f(mm/tooth) x 刃数 t (又は n)x 主軸回転数 N(rpm)

送り速度を大きくすると加工時間は短くなりますが、加工面が荒くなり工具寿命も短くなります。

・切り込み

切削工具の切れ刃が被削材に当たる部分の長さを切り込み d(mm)といいます。切り込みが大きいほど加工時間は短くなりますが、切削抵抗も大きくなり工具の高温化を招きます。工具の素材や被削材の材質に左右されるため、切り込みを決める際は少なめの切り込みから徐々に増やしていくことが重要です。

切削条件では切削速度と送り速度が特に重要

機械で加工を行う際は、工具の回転の速さと移動の速さを具体的に設定することが重要です。切削速度と送り速度のどちらかが適切でない場合、工具の欠けや加工精度の低下といった悪影響につながります。

たとえば、送り速度だけを速くした場合、1枚の刃で削り取れる量は増え、加工を高効率で行えるようになる反面、刃物にかかる負荷は大きくなります。送り速度を遅くすると、きれいに加工を行えるものの、加工効率が低下して非効率です。

また、切削速度の数値も、加工効率や工具寿命に直結します。切削効率を重視する場合は、切削速度を落として工具の負荷を下げながら送り速度を速くする、加工精度を重視する場合は切削速度を上げて送り速度を下げる必要があります。
このように、切削速度と送り速度は、どのような加工を行いたいかに応じて、両方を同じ割合で増減するのがポイントです。

旋削加工における切削条件の求め方

旋削加工において切削条件を考えるときは、切削速度・回転数・被削材直径の3要素に注目します。旋盤加工では回転数が高くなると切削速度は速くなり、被削材直径が小さくなると切削速度も遅くなります。このため、加工の進行によって切削速度が変化することを考慮しなければなりません。

切削速度を一定に保ちつつ、回転数と送り速度を変えながら加工すると、適した切削条件を探しやすくなり、直径の変化によって仕上げが変わることなく加工できます。低めの回転数から徐々に回転数を上げていき、きれいに切削できた箇所の回転数を基準として調整していくと良いでしょう。

フライス加工における切削条件の求め方

フライス加工では使用する切削工具が多彩なため、工具メーカー推奨の切削速度を参照します。メーカーの基準値は広く設定されているので、範囲内で被削材の材質に合わせ調整し、硬い素材なら小さく、柔らかい素材なら大きく設定すると良いでしょう。

切削速度が不明の場合は、切り込みを先に決めて切削速度と送り速度を決める方法が有効です。小さな切り込みと回転数で削ってみて、ビビリがでないよう調整しながら切り込みを大きくしていきます。無理のない切り込みを見つけたら切削速度を上げていくと、最適な条件を見つけやすいです。

切削条件を満たせない場合は注意

使用している機械によっては、メーカー基準の切削条件の回転数を満たしていないことも考えられます。そのような場合は、安定して加工できる範囲の中から、できるだけ高い回転数で加工を行うのがポイントです。送り速度も、回転数と同じ割合だけ下げて加工を始め、様子を見ながら徐々に上げていくのが良いでしょう。
たとえば、回転数30,000rpmが推奨されていて、機械の最大回転数が10,000rpmの場合、送り速度も回転数に合わせて3分の1の数値からスタートしてみましょう。

加工に合わせて適切な切削条件を設定しよう

切削条件は切削加工に重要な加工時間・仕上げ精度・工具寿命の3要素についてバランスを取る役割を持っています。切削条件の設定は、効率的な加工を行うために欠かすことができません。特に、切削速度と送り速度は加工効率や精度、工具寿命に関わる重要な要素です。
加工に合わせて適切な切削条件を設定し、時間とコストのバランスが取れた作業を行いましょう。

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