- バイトを使った旋盤加工の仕組み
- 旋盤バイトの種類
- -形状や使用法による分類と呼び方
- -構造による分類と呼び方
- -勝手による分類
- スローアウェイバイトとは
- スローアウェイバイトに使うチップの種類
- -旋削チップに使われる材質
- -チップの形状
- -チップブレーカの形状
- -逃げ角による違い
- バイトは用途に応じて使い分けることが大切
旋盤の加工で使われるバイトにはいくつか種類があるため、作業時には適切なものを選定して使い分けることが大切です。適切なものを使わなければ、作業に時間がかかる、工具の寿命を縮めてしまう、仕上がりが悪くなるといったデメリットを招いてしまいます。 そこで今回は、バイトの種類について詳しくご紹介します。一般的に使われることが多い、スローアウェイバイトのチップの種類についても解説していますので、バイト選定のご参考にしてください。
バイトを使った旋盤加工の仕組み
旋盤加工は、切削工具を固定して、チャックに取り付けた素材を回転させて行う切削加工のひとつです。バイトという刃物を回転する素材に押し当てることで、素材の外周や端面を削っていく加工方法で、主に丸い形状をした部品の加工に適しています。加工の際は、切削時に切りくずが通る刃の面(すくい面)の角度によって、削れる幅や深さを変えることが可能です。
加工によって複数のバイトを使い分けることで、外周を削る外周加工や端面を削る端面加工、ねじ山を作るねじ切り加工、被削材の内側にバイトを当てて内径を削る内径加工など、さまざまな加工が行えます。
旋盤バイトの種類
旋盤で使うバイトは、形状や構造の違いによっていくつかの種類に分けられます。その中から、加工に応じて適切なものを選定することが大切です。ここでは旋盤バイトの種類についてご紹介します。
・形状や使用法による分類と呼び方
旋盤バイトは、加工方法によって形状が異なります。 刃先が剣のように尖っている「剣バイト」や、片側に向かって尖っている「斜剣バイト」は、その見た目から呼称が付けられているものです。刃が横向きに付いている「片刃バイト」もあります。 一方で、外周から溝入れをしたり切断したりする際に使う「突切バイト」、ねじ山を作る際に使う「ねじ切りバイト」、内径加工に使う「中ぐり(ボーリング)バイト」は、その使用法から呼称が付けられたものです。
・構造による分類と呼び方
旋盤バイトは、胴体部分の「シャンク」と先端部分の「刃先」からできている切削工具です。構造の違いによっていくつかの種類に分けられ、刃とシャンクが一体の「ムクバイト」、刃先がシャンクにロウ付けされた「付刃バイト」、刃先のチップを交換できる「スローアウェイバイト」の3つがあります。
ムクバイトや付刃バイトは、グラインダーなどを使って刃先を成形する必要があるので、技術と経験が必要になります。
・勝手による分類
旋盤バイトは、種類によって刃が付いている方向が異なります。刃が付いている方向を示すのが「勝手」です。作業者から見た時に、刃先が左を向いていて被削材の右側から切削するのが右勝手、左側から切削するのが左勝手、両側を切削できるバイトは「勝手なし」と呼ばれます。通常は右勝手のバイトが使用されます。
ただし、スローアウェイバイトで内径加工を行う場合は、右勝手のボーリングバーに左勝手のチップを使用します。チップに勝手がある場合は注意が必要です。
スローアウェイバイトとは
スローアウェイバイトは刃先を交換できる構造のバイトです。その刃先は「スローアウェイチップ」と呼ばれ、ねじや押え金でシャンクに固定します。 スローアウェイバイトは摩耗や破損により切れ味が悪くなった際に、刃先を研磨する必要がなく、チップのみを交換するだけで使用が可能です。コスト面や生産性に優れ、研磨する必要がないので現在ではバイトの主流として用いられています。
スローアウェイバイトに使うチップの種類
スローアウェイバイトに使われるチップにはいくつか種類があり、材質や用途などによって選定方法が異なります。ここでは、スローアウェイバイトに用いられるチップの種類やそれぞれの違いについてご紹介します。
・旋削チップに使われる材質
スローアウェイバイトのチップに使われる素材は、超硬コーティングやサーメット、セラミックなどを含めた9種類に大別でき、なかでも超硬合金で作られたチップがもっとも多く使用されています。これは、超硬合金が「硬さ」と「粘り強さ」の両方を備えているためです。 超硬合金チップは、記号や色によって判別できるよう、それぞれを表すアルファベット1文字と色が規格化され、被削材に適した目安として以下のように表示されています。
- ・鉄鋼(P/青)
- ・ステンレス鋼(M/黄)
- ・鋳鉄(K/赤)
- ・アルミニウム合金(N/緑)
- ・チタン合金(S/茶)
- ・焼入れ鋼(H/灰)
削る材料の材質に応じて、これらのチップを使い分けましょう。
・チップの形状
チップは形状によって、被削材との近接性が異なります。主なチップの形状は以下のとおりです。
刃先角度が大きいほどチップの剛性は高くなりますが、一方で切削抵抗によるビビリが起こりやすくなります。
・チップブレーカの形状
切りくずを細かく分断することで作業者の安全性を高め、製品の傷つきを防ぐ役割を持つのがチップブレーカです。送り速度や切込み深さによって排出される切りくずの形状が異なるため、それに合わせて分断できるよう工夫されています。
チップブレーカの形状にもいくつか種類があり、すくい面に溝を付けただけのものや、複雑な凸凹を付けたものなどがあります。チップブレーカの効果を正しく発揮するためには、粗加工・中粗加工・仕上げ加工のそれぞれに適した形状を使うことが重要で送りや切り込み量も適正に設定することが必要です。
・逃げ角による違い
逃げ角とは、工具の逃げ面と被削材の摩擦を避け、刃先を被削材に送り込む機能を持つ部分です。逃げ角を大きくすると摩擦の減少と刃先強度の低下が、逃げ角を小さくすると刃先強度の向上と工具寿命の低下が起こります。一般的には、硬い被削材には小さな逃げ角、柔らかい被削材の加工には大きな逃げ角が有効です。
チップの先端形状の逃げ角は、先端形状が90°になっていて逃げ角がない「ネガチップ」と、90°より小さい角度で逃げ角のある「ポジチップ」の2種類あります。
ネガチップは両面型と片面型があり、刃先強度が高く重切削条件でも可能です。一方で、切削抵抗が小さくビビリが発生しにくいポジチップは、内径加工に適しています。
バイトは用途に応じて使い分けることが大切
バイトは形状や構造の違いによって、いくつかの種類に分けられます。製品の設計や加工方法、被削材の材質などに合わせて、適したものを選定することが大切です。 スローアウェイバイトの場合は、チップの材質や形状によっても選定方法が異なります。バイトやチップの正しい使い分けが、加工の仕上がりや作業の精度、作業効率や適正なコスト管理につながるので、用途に応じてそれぞれ使い分けるようにしましょう。