- ラジアルボール盤の「ラジアル」とはどういう意味?
- -自動車やバイクのタイヤ
- -軸受にかかる荷重
- ラジアルボール盤の特徴
- その他のボール盤の種類
- -直立ボール盤
- -卓上ボール盤
- -多軸ボール盤
- -多頭ボール盤
- -深穴ボール盤
- -タレットボール盤
- ラジアルボール盤でできる加工
- ラジアルボール盤を活用するメリット
- -連続の穴あけ加工で効率が高い
- -ワーク固定時の傷つき防止
- -サイズの大きいワークにも対応
- -角度をつけた加工が可能
- ラジアルボール盤を使用する際の注意点
- -巻き込まれ事故が発生しない服装を
- -保護メガネの着用は必須
- -ワークの固定は確実に行う
- -コラム・アーム・主軸頭なども固定する
- -被削材に適した切削工具の使用
- ラジアルボール盤で高効率の作業を行おう
ラジアルボール盤は、主にドリルなどを使って加工を行うボール盤の一種です。ボール盤には他にも多くの種類がありますが、ラジアルボール盤はどのような特徴を持っているのでしょうか。
この記事では、ラジアルボール盤の特徴やその他のボール盤の種類、ラジアルボール盤を使用するメリットなどをご紹介します。
ラジアルボール盤の「ラジアル」とは?
ラジアルボール盤の「ラジアル(Radial)」は、英語で「星状の」「放射状の」「半径」などの意味を持つ言葉です。ラジアルボール盤以外にも、さまざまな場面でラジアルという言葉が使われています。
・自動車やバイクのタイヤ
自動車やバイクには、「ラジアルタイヤ」と呼ばれるタイヤが使われています。これはタイヤのカーカス(タイヤの骨組み)が中央から放射状に伸びているラジアル構造になっているものです。
耐摩耗性やグリップ力に優れており、高速でも安定して走行できることから、普通自動車やスポーツバイクなど、多くの車種で採用されています。
タイヤには、カーカスを斜め方向に複数枚配置するバイアス構造を採用した「バイアスタイヤ」という種類もあります。高速走行時の安定性はラジアルタイヤに劣るものの、高荷重に耐えることができ、低速時の乗り心地に優れているのがメリットです。
比較的製造も簡単なことから、低速での走行を想定したモーターサイクルや、高い荷重がかかる産業車両などで使われています。
・軸受にかかる荷重
軸受(ベアリング)の中心線に対して垂直方向(回転しているものの円周方向)にかかる荷重は「ラジアル荷重」と呼ばれます。ラジアル荷重を支える軸受が「ラジアル軸受」です。
一方で、中心線に対して水平方向にかかる荷重は「アキシャル荷重(アキシアル荷重)」や「スラスト荷重」といいます。スラスト荷重を支える軸受は「アキシャル軸受」または「スラスト軸受」です。
アキシャル軸受でラジアル荷重を支えたり、ラジアル軸受でアキシャル荷重を支えたりすることはできません。荷重に対して適切な軸受を選定することが大切です。
ラジアルボール盤の特徴
ラジアルボール盤は、穴あけやリーマ加工、タップ加工などが行えるボール盤の一種です。他のボール盤と異なり、主軸頭を支持するアームがコラムを軸にしてラジアル方向(円周状)に旋回するのが特徴です。
アームはラジアルアームと呼ばれ、主軸頭がラジアルアーム上をスライドします。コラムが上下、ラジアルアームが旋回、主軸頭が前後にスライドし、上下左右前後のXYZ軸移動が可能です。主頭軸に加えて、ドリルの回転軸を傾斜できるものもラジアルボール盤と呼ばれる場合があります。
高さの調整は、コラムに沿ってラジアルアームが上下するタイプと、テーブルが上下してワークの高さを変えるタイプの2つに分けられます。また、サイズも作業台に設置できる卓上タイプのものから非常に大型なものまで取り揃えられていて、用途に応じて選ぶことが可能です。
その他のボール盤の種類
ボール盤にはラジアルボール盤以外にも多くの種類があり、加工の目的や方法によって使い分けられています。ここでは、ラジアルボール盤以外のボール盤の種類とそれぞれの特徴をご紹介します。
・直立ボール盤
床に直接据え付けて使う、スタンダードなボール盤です。主軸は垂直になっており、上下に移動します。ワークを固定するテーブルの形状には丸形や角型があり、穴の位置決めはワークを動かして行います。異なる場所に穴をあけたい場合は、ワークの位置を調整して再固定する工程が必要です。
・卓上ボール盤
作業台の上に固定して使用する小型のボール盤です。基本構造は直立ボール盤と同様で、主軸は上下に動きます。穴径13mmまでの加工に使用できるものが一般的です。
・多軸ボール盤
多数のドリル軸を持ち、同時に複数の穴あけが行えるボール盤です。大量生産に適していて、多くは特定製品の加工に合わせた専用機として使用されています。
・多頭ボール盤
1つのテーブルに対して、複数の主軸頭を持つボール盤です。あらかじめ複数の切削工具を主軸頭に装着しておけば、異なる加工を連続で行えます。
・深穴ボール盤
通常のボール盤よりも深穴の加工に特化したボール盤です。ガンドリルや深穴加工機とも呼ばれます。
・タレットボール盤
タレットという回転式の刃物台を備えたボール盤です。タレットに装着した複数の工具を使い分けることで、連続して加工を行えます。
ラジアルボール盤でできる加工
ラジアルボール盤でできる加工は、原則として一般的なボール盤と変わりません。ドリルを使用した穴あけ加工をはじめ、リーマと呼ばれる切削工具を使って穴の内側を削る「リーマ加工」や、タップを使ってめねじを切る「ねじ切り加工」など、さまざまな加工を行うことができます。
また、種類の異なるドリルを使い分けることで、径が大きな穴や深穴など、幅広い穴あけに対応することも可能です。
ラジアルボール盤を活用するメリット
多くの種類があるボール盤ですが、ラジアルボール盤を使うことで、どのようなメリットを得られるのでしょうか。ラジアルボール盤の原理を踏まえながら、活用するメリットをご紹介します。
・連続の穴あけ加工で効率が高い
ラジアルボール盤は、主軸頭が上下左右前後に動く機構を持っています。そのため、1つのワークに複数の穴をあける時も、ワークの位置を動かしたり、再固定したりせずに加工可能です。連続で穴あけを行いたいシーンでは、高い効率を発揮します。
・ワーク固定時の傷つき防止
ラジアルボール盤の主軸頭が旋回・水平移動できる範囲なら、ワークを再固定して位置決めをする必要はありません。これにより、ワーク固定時に傷や打痕がつくリスクを減らせます。
・サイズの大きいワークにも対応
卓上ボール盤や直立ボール盤の場合、テーブルの広さやふところ寸法によってワークのサイズが制限されます。一方、ラジアルボール盤はラジアルアームによりふところが深く、サイズの大きいワークも加工できるなど、幅広い材料の穴あけに使用可能です。
・角度をつけた加工が可能
ラジアルボール盤には、主軸頭の角度を変えられるものもあります。角度を変えられるタイプは、斜めにドリルを進めるような使い方も可能です。穴あけだけでなく、中ぐり加工や座ぐり加工、リーマ加工など、一般的なボール盤で行える加工も、角度をつけた状態で行えます。
ワークを再固定することなく、あらゆる場所にあらゆる角度から加工が行える点も、ラジアルボール盤の強みです。
ラジアルボール盤を使用する際の注意点
ラジアルボール盤を含め、ボール盤での作業時には事故の危険が伴います。安全に作業を行うために、ラジアルボール盤を使う際の注意点をご紹介します。
・巻き込まれ事故が発生しない服装で作業する
ラジアルボール盤を含め、ボール盤を使った作業では巻き込まれ事故が多発しています。布製の軍手や袖口・肘部分の幅が広い長袖衣類の着用は避ける、長髪は後ろでまとめるなど、巻き込みへの対策は必須です。
・保護メガネの着用は必須
ボール盤での作業時は切り屑や切削カスが飛散します。保護メガネを着用し、目を切り屑から守る必要があります。
・ワークの固定は確実に行う
ワークがしっかり固定されていないと、加工精度の低下や工具の破損につながります。それだけでなく、ワーク自体が高速回転したり、飛んでいったりして人体にぶつかる恐れもあります。ワークの固定は確実に行うことが重要です。
・コラム・アーム・主軸頭なども固定する
コラムやラジアルアーム、主軸頭は位置調整した後に固定レバーで確実に固定しましょう。固定が確実でない場合、工具破損や軸ブレによる加工精度の低下を招く恐れがあります。
・被削材に適した切削工具の使用
被削材に不適切な切削工具を使用すると、精度低下・工具破損・効率低下につながります。また、破損した工具による事故のリスクも考えられます。
工具の素材やコーティングの材質、すくい角などをよく確かめ、被削材に適した工具を選定することが重要です。
ラジアルボール盤で高効率の作業を行おう
ラジアルボール盤は、ワークの固定回数を減らし、高い効率での連続作業が行えるボール盤です。大きなワークの加工も得意としているため、幅広い使い方ができます。
今回ご紹介した特徴や注意点を踏まえてラジアルボール盤を正しく使い、安全で高効率な作業を行いましょう。