金属加工とは? 加工の種類と使われる金属材料の特徴を解説

MENU
MENU

金属加工とは? 加工の種類と使われる金属材料の特徴を解説

文明は金属とともに発展してきたといわれるほど、金属加工は人類に欠かせない重要な技術のひとつです。金属加工は時代に合わせて進化していて、現代ではさまざまな加工方法があります。
今回は、金属加工の種類や、金属加工に欠かせない工作機械の概要、金属材料の種類などをご紹介します。

現代のものづくりに欠かせない「金属加工」

金属は先史時代から使われていて、現代においても日常生活や産業で不可欠なものです。金属材料は板状やブロック状、棒状など、さまざまな形状で作られますが、そのままの状態で使うことはほとんどありません。必要に応じて、求める形状や状態に加工して使用します。

金属の形や状態を変える加工にはさまざまな方法があり、それらを総称した言葉が金属加工です。金属でできた機械部品や、プラスチック製品を成形する金型、お菓子作りで使う容器、医療用の器具類など、多くのものが金属加工で生み出されています。

金属の形状を変える加工の種類

金属加工は、形を変えるものや強度を上げるものなど、いくつかの種類に分けられます。形を変える金属加工は、大きく以下のように分類できます。

・除去加工

素材の不要な部分を削り取り、目的の形状にするのが除去加工です。不要な部分の除去には、刃物や砥石、電気のエネルギー、化学反応などを用います。

刃物(工具)を使って金属を削り取る「切削加工」が、代表的な除去加工の方法です。切削加工以外にも、研削加工や研磨加工、放電加工、レーザー加工、エッチング加工、サンドブラスト、ウォータジェット加工などが除去加工に分類されます。
切削加工の種類については、以下の記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。

⇒「切削加工とは? メリット・デメリットから加工時の注意点まで解説」

・付加加工

材料を付け加えて目的の形状に仕上げるのが付加加工です。例としては、溶接や接着など、接合によって材料を付加する加工方法が挙げられます。めっき加工や塗装も付加加工の一種です。

・成形加工

成形加工は、素材の一部を取り除いたり材料を付け加えたりすることなく、目的の形状を作る加工方法です。圧力や熱などを加えて金属素材の変形・成形を行うのが特徴で、鋳造や鍛造、プレス加工などが成形加工にあたります。

・3Dプリンター

3Dプリンターを使った加工と聞くと、プラスチックの積層造形のイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。「ものを足して成形する」というイメージから、付加加工に分類されることもありますが、3Dプリンターを使った加工方法にはいくつか種類があり、一概に付加加工と言い切れるわけではありません。

例えば、溶融した金属を積層・凝固して造形する「メタルデポジッション方式」は付加加工ともいえますし、金属を溶融させて流すという観点から成形加工と考えることもできます。
一方で、敷き詰めた金属粉末にレーザーや電子ビームを照射し、造形する部分の粉末を溶融・凝固させる「パウダーヘッド方式」の3Dプリンターは、必要な部分だけを取り出して残りの粉末は取り除くことから、除去加工と解釈可能です。

3Dプリンターによる金属加工は研究開発が進んでいる途中で、今後も既存の分類や性質に当てはまらない加工方法が登場する可能性も十分にあります。

金属の性質を変える加工の種類

金属加工には、金属の形状ではなく性質を変える加工もあります。金属の性質を変えて目的のものを作る加工方法には、以下のような種類があります。

・熱処理

熱処理とは、加熱・冷却によって金属の組織を変え、硬さや粘り強さなどを改善する加工のことです。鋼材の熱処理の場合は、焼入れ・焼もどし・焼なまし・焼ならしなどの手法があります。
鋼材の熱処理については、以下の記事でも詳しく解説しています。

⇒「鋼材の焼入れとは? 加工に関わる熱処理の基礎知識」

・表面処理

表面処理は、物理的な摩擦や衝突、電気エネルギー、化学反応などで金属の表面を変える加工のことです。見た目の改善に加え、汚れの付着を防ぐ目的でも行われる研磨加工は、表面処理の一種です。サンドブラストやローレット加工も、物理的な処理で表面の手触りや質感を変える表面処理といえます。

電気エネルギーを用いた表面加工では、放電加工によって金属表面を溶融させ、滑らかにすることも可能です。
また、金属表面に腐食しにくい金属の被膜を生成するめっき加工や、化学反応を利用して酸化被膜を生成するアルマイト処理なども、表面処理に分類されます。

金属加工に欠かせない工作機械

金属が現在までさまざまな場所で使われているのは、「硬い」という性質を持つのが大きな理由です。金属のような硬い素材を効率的に加工するために発展してきたのが、工作機械による「機械加工」です。

工作機械は主に除去加工に使われ、代表的なものとしてはフライス盤や旋盤、ボール盤などが挙げられます。これらの工作機械は、ものづくりに使われる機械や装置を構成する部品を作る役割も担うものです。機械を生み出すための機械であることから「マザーマシン(母なる機械)」とも呼ばれます。
人の手では不可能な精度とスピードでの加工を可能にする工作機械は、あらゆる産業を支える現代社会に欠かせない存在といえます。
工作機械については以下で詳しく解説しているので、併せてご確認ください。

金属加工で使われる金属の種類

金属加工では、特性の異なるさまざまな金属材料を、用途に応じて使い分けています。ここからは、代表的な金属材料の種類と、それぞれの特徴をご紹介します。

・鉄

鉄は、人類が最も多く使用している金属です。ただし、純度の高い「純鉄」は柔らかい、脆い、酸化しやすいなどの特徴を備えていて実用には向きません。日常的に「鉄」と呼ばれるのは、炭素を0.02~2.1%含んだ「鋼」や、炭素を2.1%~6.7%含んだ「鋳鉄」です。

炭素の含有量や熱処理の方法で性質が大きく変わるため、幅広い用途で使われています。

・アルミニウム

アルミニウムは、他の金属材料に比べて軽量で柔らかく、合金にして使われることが多い金属です。耐食性に優れる、導電性や熱伝導性が高い、加工性が良いなど、さまざまなメリットを備えています。

アルミニウム合金には多くの種類がありますが、マグネシウムや銅などを加えた「ジュラルミン」が有名です。軽量かつ強度に優れていることから、航空機の構造素材として使われています。

・ステンレス鋼

ステンレス鋼は鉄鋼材料の一種で、鉄を主原料に、クロムを10.5%以上含んだ合金です。耐食性に優れていてサビにくいことから、水回りの製品や機械部品など、多くの場所で利用されています。優れた特徴を持つ反面、高硬度で靭性もあるため、切削加工が難しい点には注意が必要です。

・銅

加工性に優れている銅は、古くから人類が利用してきた金属の一種です。酸素の含有量によって、タフピッチ銅や脱酸銅、無酸素銅の3種類に分けることができます。美しい光沢や抗菌効果、優れた伝導性などを持ち、調理道具や食器、電子機器の導線など、現在も多くの場面で使われています。

・真ちゅう(黄銅)

銅と亜鉛の合金で、加工性や導電性、展延性に優れているのが特徴です。亜鉛の含有量や添加する元素の種類を変えることで、さまざまな種類の合金が作られています。5円硬貨やネジ、コンセントなどに使用されている、身近な金属の一種です。

・チタン

軽量ながら、強度や耐食性などに優れた金属がチタンです。航空機の部品をはじめ、軽さと強度が求められる用途で広く使われています。金属アレルギーを起こしにくいため、アクセサリーの素材として使われることも多いです。

金属材料の加工方法の選び方

製品を作る際は、適した加工方法を選ばないと、精度や作業効率の低下、消耗品や工具寿命の悪化、加工コストの増大などにつながる恐れがあります。金属加工を選択する際は、以下のポイントを意識することが重要です。

・加工方法の特徴を理解する

金属加工は、造形に関する加工は除去加工や付加加工、成形加工に、性質に関する加工は熱処理や表面加工に大きく分けられます。また、加工方法はさらに細分化されていて、それぞれ加工できる素材の種類や精度、コスト、加工速度などが異なります。
加工方法ごとの得意不得意を理解し、求める加工に対して適切な方法を選択することが重要です。

・適切な機械と工具を使用する

多くの金属加工は機械を使って行います。使用する機械は、加工する素材の大きさや性質、求める精度などに適したものでなければなりません。
例えば、機械に固定するのが難しい大きさの素材を無理に加工しようとすれば、加工精度を維持できないでしょう。

また、多くの機械加工では、刃物や砥石などの切削工具、消耗品なども必要になります。加工精度と効率を維持するには、工具や消耗品に関しても、加工する金属材料の種類や加工方法に適したものを使用することが重要です。

・生産体制のバランスを考える

少量を数ヶ月に1回生産するのか、継続的に大量生産するのかによって、適した加工方法や必要な機械の種類は異なります。生産ラインや機械の導入数など、生産体制に応じて加工方法を検討することも大切です。
品質基準や供給量、生産速度、製造コストなどを考慮して生産体制を整えると良いでしょう。

各加工方法の特徴を知って効率的な金属加工に生かそう

さまざまなものを生み出す機械も、部品の多くは金属から作られています。産業を支える基盤ともいえる金属加工には多くの方法があり、それぞれに得手不得手があります。

また、加工方法だけでなく、金属材料にも多くの種類があり、それぞれ特性が異なることもポイントです。効率的に金属加工を行うには、金属材料の特徴を踏まえたうえで、適切な加工方法を選択する必要があります。
加工方法や金属材料の特徴などを押さえて、効率的な金属加工に生かしましょう。

この記事を読まれた方はこんな記事も読まれてます