マシンバイス(万力)とは?使い方や種類ごとの特徴を加工に生かそう

マシンバイス(万力)とは?使い方や種類ごとの特徴を加工に生かそう

ワークを工作機械に固定する際に活躍するのが「マシンバイス」です。しかし、マシンバイスは種類が多く、それぞれ用途や使い方が異なります。使用する機械や加工ごとに、どれを選べば良いのかわからないと感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、マシンバイスの使い方や種類ごとの特徴、選定時のポイントなどをご紹介します。

マシンバイスとは

マシンバイスとは、工作機械のテーブルに取り付けて使う万力のことです。2つの面でワークを挟み込み、加工中に動かないよう固定します。一般的な手仕上げ加工用のバイス(万力)と同様に、ハンドル、ねじ、固定口金、可動口金によって構成され、台座には工作機械のテーブルに固定するための穴やフランジがあります。
工作機械に合わせて多くの種類があり、それぞれ特徴が異なるため、適した種類のマシンバイスを選定することが重要です。

マシンバイスの使い方

マシンバイスには複数の種類がありますが、「口金にワークを挟んで固定する」という使い方はいずれも同じです。バイスを使ってワークを固定する基本的な流れは、以下のとおりです。

1.バイスを固定する
バイスを固定してから、バイスの口金部分にワークをセットします。

2.ワークを固定する
ねじやハンドルを回してワークを締め付け、固定を行います。締め付けが足りないと、ワークが作業中に動いてしまう恐れがあるため注意が必要です。
逆に、締め付け過ぎはワークの破損や機械の故障につながります。ワークの硬さに応じて、適切な力で締め付けることを心がけましょう。

3.ワークを取り外す
切削や研磨といった加工が完了したら、ねじやハンドルを先ほどとは逆に回して口金を開き、ワークを取り出します。

マシンバイスとクランプの違い

ワークを固定する際に使われる道具としては、マシンバイス以外にもクランプが挙げられます。
バイスは、ボルトなどで本体を作業台やテーブルに固定して使用するものです。また、2つの口金には一般的にワークのみを挟み込みます。
一方で、クランプには基本的に台座がなく、ワークと作業台を一緒に挟み込むことで固定します。いくつかのワークをまとめて固定するといった使い方も可能です。

つまり、本体が作業台に固定されていてワークだけを挟むものがバイス、作業台とワークを一緒に挟んで固定するものがクランプです。どちらも、ワークを固定する目的の道具という点は同じですが、使い方が少し異なるため、使い分けるようにしましょう。

マシンバイスの種類と特徴

マシンバイスにはいくつかの種類があります。ここでは代表的なマシンバイスの種類と、それぞれの特徴をご紹介します。

・精密マシンバイス

一般的なマシンバイスは、精密マシンバイスと呼ばれます。直角度や平行度の精度に優れているのが特徴です。締め付けの際に、可動口金が台座から浮き上がるのを防ぐ「浮き上がり防止機能」を備えたものが多いです。

・3次元バイス

ワークを掴んだまま、傾きをつけた状態で固定できるバイスです。上下・左右・前後と、3次元の角度をつけられます。台座が360度回転し、左右には45度、前後には90度まで傾きをつけられるものもあります。

・ミーリングバイス

精密バイスのなかでも、特にフライス加工で粗加工を行う際に使われるのがミーリングバイスです。可動口金が大きく頑丈に作られているため剛性が高く、強い力がかかってもワークを強固に固定できます。

・油圧バイス

「ハンドルを回転させて口金を動かしワークを挟む」という原理は他のバイスと同じですが、油圧バイスでは口金を押す力に油圧を利用しています。軽い力でも強力な締め付けが可能です。

・ボール盤用バイス

ボール盤での穴あけ加工や、穴を大きくする中ぐり加工の際に使われるバイスです。垂直方向への穴あけ加工を考慮し、ワークを挟む部分の底が空洞になっています。加工中の振動に耐えられるよう、挟み込む力が強めに設計されている点も特徴です。

・ヤンキーバイス

ボール盤用バイスで、精密ボール盤バイスと呼ばれることもあります。横置きでも縦置きでも使用できるのが特徴です。一般的には、口金にV溝が付いていて円形のワークを固定できるようになっています。

手仕上げ加工用バイスの種類

バイスには、工作機械に取り付けて使用するマシンバイス以外にも、手作業で使用する手仕上げ加工用バイスがあります。手仕上げ加工用バイスの種類と特徴は、以下のとおりです。

・横バイス

リードバイスとも呼ばれ、手仕上げ加工用バイスの中でも一般的なタイプです。ボルトなどを使って、本体を作業台に固定してから使用します。
ワークを強固に固定できることから、衝撃が掛かりやすい加工や、精密さを求められる加工に適しています。

・取り付けバイス

横バイスとは異なり、取り付け方法にクランプを採用しているのが取り付けバイスです。ベンチバイスと呼ばれることもあります。着脱が簡単で持ち運びしやすいことから、DIY用途で用いられることが多いタイプです。

・シャコ万力

複数のワーク同士を固定する、ワークと作業台を挟み込むなど、クランプのように使用するのがシャコ万力です。ボルトを回して口金の開きを調整し、対象物を挟んで固定します。
ねじ止めや仮組みといった用途に適していますが、確実に固定する必要がある加工で使われることはほとんどありません。

マシンバイス選定時のポイント

マシンバイスは、形状や用途の異なる製品が多く販売されています。ワークをしっかりと固定できるように、選定する際は以下のポイントを考慮しましょう。

・ワークの大きさに合わせたバイスを選ぶ

マシンバイス選びで重要な大きさの規格は、口開き・口巾・口深さの3点です。マシンバイスは、口金の開く間隔(口開き)の最大値がそれぞれ決められていて、口開きを超える大きさのワークは固定できません。ワークのサイズがマシンバイスの口金の幅(口巾)を大きく超えていると、挟み込んでいる場所からの距離が離れるにつれてビビリが大きくなり、加工性も低下します。

また、口金の深さ(口深さ)とワークのサイズの関係も重要です。ワークのサイズが口深さを大きく超えている場合も、口金から遠い場所でビビリが発生しやすく、ワークが脱落する恐れがあります。
安全で高精度・高効率な加工を実現するには、ワークの大きさを考慮し、適した口開き・口巾・口深さを持つマシンバイスの選定が重要です。

・使用する工作機械に適したバイスを選ぶ

工作機械の種類や加工の向きによっても、最適なマシンバイスは異なります。これは、工作機械には立型・横型などの種類があり、バイスの固定力が確実に発揮される方向とそうでない方向が生まれるためです。
また、工作機械の構造によっては、バイスのハンドルが干渉したり、台座が高くワークが入らなくなったりする場合もあります。

加工に適したバイスを選んで作業に生かそう

マシンバイスは、工作機械で加工を行う際にワークを確実に固定するという重要な役割を持つアイテムです。素早く簡単な操作でワークを固定できるマシンバイスなら、加工時間の短縮にもつながります。
機械加工の際は、ワークのサイズや工作機械の種類、加工方法に適したマシンバイスを選定しましょう。

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