- レーザ加工機とは
- レーザ加工機の構成
- -レーザ発振器系
- -加工光学系
- -加工物質系
- レーザ加工機の種類
- -CO2レーザ加工機
- -YAGレーザ加工機
- -ファイバーレーザ加工機
- レーザ加工機を使うメリット
- -金型をおこす必要がない
- -非接触で加工できる
- -高難度な加工・特殊な加工が可能
- -メンテナンス性が高い
- レーザ加工機のデメリット
- -プレス加工より時間効率は低い
- -苦手な素材がある
- -導入・維持ともに高コスト
- レーザ加工機を導入する際のポイント
- -加工したい素材
- -レーザ加工機の出力
- レーザ加工機は幅広い範囲に対応できる工作機械
製造現場では多くの機械が使われています。金属や木材、革製品やガラスなど、幅広い素材への加工が可能なレーザ加工機もそのひとつです。この記事では、レーザ加工機の原理や種類、メリット・デメリットなどをご紹介します。
レーザ加工機とは
レーザ加工機(レーザー加工機)とは、レーザ光によって加工を行う機械のことです。レーザカッターやレーザ彫刻機、レーザ刻印機などと呼ばれる場合もありますが、「レーザ光を使った加工機」という点では、呼び方による違いはありません。
レーザ光は、直進性が強い(指向性)、単一波長の集まり(単色性)、波長が揃っている(可干渉性、コヒーレンス)、エネルギー密度が高い(高出力)といった特徴を備えています。エネルギー密度の高いレーザ光を集光して照射することで、素材の切断や穴あけ、溶接、素材表面へのマーキング、彫刻などを行うのが、レーザ加工機の原理です。
一般的には、加工中に出た粉塵を吹き飛ばすために、レーザ光の照射と同時にアシストガスも吹き付けて加工を行います。
レーザ加工機の構成
レーザ加工機は、効率良くレーザ光を照射するために、異なる役割を持ついくつかの部位から構成されています。ここではレーザ加工機を構成する部位と、それぞれの役割をご紹介します。
・レーザ発振器系
レーザ光を発振する装置がレーザ発振器系です。励起光と呼ばれる光をレーザ媒体に照射し波長を整えた後に、共振器に当てることで増幅させてエネルギー密度を高めるというメカニズムが用いられています。求められる加工精度や加工する素材から、出力・波長・パルス幅・発振モードなどの性能を選ぶ必要があります。
・加工光学系
レーザ発振器系で発振させたレーザ光を集光して、テーブルへと照射する装置です。レーザ光を伝送する「光路」と、伝送したレーザ光を集光・照射する「集光系」から構成されます。伝送の仕組みは、ミラーに反射させて伝送させる方法と、光ファイバーによって伝送する方法に分けられます。また、レーザ光で融解した金属を除去するアシストガスの噴射装置も、加工光学系の一部です。
・加工物質系
ワークを固定するためのテーブルと加工物のことです。テーブルには駆動系が備えられたものもあり、ワークを適切な速度で移動させながら必要な照射時間を与える役割も持っています。ワークを動かす場合は、テーブルの移動速度が重要です。レーザ加工機が低出力の場合は、適切な速度設定を行わないと精密な加工になりません。
レーザ加工機の種類
レーザ加工機は、使われるレーザ光の種類によって3種類に分けられます。ここでは、それぞれの特徴をご紹介します。
・CO2レーザ加工機
最も広く使われているのが、炭酸ガス(CO2)を媒質にしたレーザ光で加工を行うCO2レーザ加工機です。金属や木材、ゴム、ガラスなど多様な素材に使用でき、加工機の価格も比較的安価なのが特徴です。ただし、アルミや銅のような反射率の高い金属の加工には適していません。
・YAGレーザ加工機
YAGレーザ加工機の「YAG」とは、Yttrium(イットリウム)、 Aluminum(アルミニウム) Garnet(ガーネット)の頭文字を取ったものです。熱による変形が少なく、マーキングや彫刻、溶接といった用途で利用されていますが、本体価格、イニシャルコストともに高価な点がデメリットです。金属加工以外でも、目や歯の治療といった医療分野で使われています。
・ファイバーレーザ加工機
ファイバーレーザ加工機は、光ファイバーを媒質に用いて加工を行います。レーザ光を高出力かつピンポイントに照射できるのが特徴で、CO2レーザ加工機が苦手とする銅やアルミニウムの溶接も可能です。
また、アシストガスを使わずエネルギー効率が良いという特徴もあり、ランニングコストを低く抑えられます。しかし、加工機そのものは高額でイニシャルコストが大きいため、導入時にはコストバランスを考える必要があります。
レーザ加工機を使うメリット
金属加工にはさまざまな工作機械が使用されますが、その中でもレーザ加工機を使用するメリットとしては、どのような点が挙げられるでしょうか。考えられるメリットとしては、以下のようなものがあります。
・金型をおこす必要がない
レーザ加工機は、プレス加工とは異なり金型を使用しないので、金型制作を行う必要がありません。リードタイムを短縮でき、生産工程においても金型交換の段取りにかかる時間を削減できます。
・非接触で加工できる
レーザ加工機は非接触で加工を行います。直接的な力を素材に加えないので、歪みやひび割れのリスク、バリやカエリの発生を抑えることが可能です。 安定した品質を維持でき、面取りや研磨のような後工程も削減できます。
・高難度な加工・特殊な加工が可能
刃物では難しい小さな半径での曲線切断や、極小径の穴あけといった難度の高い加工も行えます。複雑な図形や絵柄をスキャンして再現する加工や、防錆性を高める表面改善なども可能です。
・メンテナンス性が高い
刃物を用いる切削加工と異なり、切削工具の摩耗や破損といった消耗がないのもレーザ加工機の特徴です。薬液も使わないため、メンテナンスの手間が少なくなります。また、加工の原動力として回転や往復運動を使用しないので、振動によるトラブルが少なく、稼働音を低減できるのもメリットです。
レーザ加工機のデメリット
数多くのメリットがあるレーザ加工機ですが、デメリットがないわけではありません。使用する際は、以下のようなデメリットがあることも覚えておきましょう。
・プレス加工より時間効率は低い
難度の高い加工を行える反面、金型を用いたタレットパンチプレス加工や切削加工に比べると、レーザ加工機の加工速度は遅いです。時間効率が低くなるので、状況に応じて加工方法を使い分けることが重要となります。
・苦手な素材がある
レーザ加工機には焦点距離というレーザ光が集中している範囲があり、焦点距離の範囲外だとエネルギー密度は低下します。厚い素材は焦点の位置から遠ざかってしまうため、レーザ加工機での加工には不向きです。また、反射率や熱伝導率の高い金属の加工も、レーザの種類によっては苦手としています。
・導入・維持ともに高コスト
他の工作機械に比べると、レーザ加工機は価格が高いです。また、アシストガス代や焦点レンズ、ミラーの交換費用、電気代といったランニングコストもかかります。導入・維持を通して全般的に高コストなので、適した加工に使用して対費用効果を上げる工夫が必要です。
レーザ加工機を導入する際のポイント
レーザ加工機は、種類ごとに特徴や機能が異なります。それぞれの違いを踏まえたうえで、適切なものを選ぶことが重要です。レーザ加工機を選定する際に確認しておきたいポイントには、以下の点が挙げられます。
・加工したい素材
レーザ加工機は、加工を行いたい素材によって適切な種類が異なります。例えば、さまざまな素材を加工する必要がある場合は対応できる幅が広いCO2レーザ加工機が、反射率の高い金属の加工に用いる場合はファイバーレーザ加工機が最適です。
また、テーブルのサイズによって、レーザ加工機で加工を行える素材の大きさが変わります。素材の種類やサイズを踏まえて、最適なレーザ加工機を選定することが重要です。
・レーザ加工機の出力
レーザ加工機の出力を確認することもポイントです。一般的には、出力が大きいレーザ加工機ほど、厚みのある素材も切断可能で、加工時間も短くなります。出力の調整幅が広くなるので、さまざまな加工に対応できる点もメリットです。
ただし、一般的には出力が大きくなるほど価格も高くなる傾向にあります。簡単なマーキングや彫刻でのみ使用する場合は、出力が小さいレーザ加工機でも対応可能なことも考えられます。導入時のコストを削減できる可能性があるため、目的の加工に必要なレーザ出力を備えているか事前に確認しておくことも重要です。
レーザ加工機は幅広い範囲に対応できる工作機械
レーザ加工機にはデメリットもあるものの、それを上回る多くのメリットがあります。高精度で安定した品質を維持でき複雑な加工も可能など、幅広い加工に対応できる点はレーザ加工機の利点です。レーザ加工機の特性を理解し適した加工に使うことで、高効率な作業を実現しましょう。