硬さの確認には硬度換算表が便利! 代表的な硬さ試験と換算表の使い方を解説

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硬さの確認には硬度換算表が便利! 代表的な硬さ試験と換算表の使い方を解説

金属や樹脂など、材料の硬さを測定する試験にはいくつかの方法があり、それぞれ材料の硬さを表す方法も異なります。これらの異なる基準で測定された硬さを換算できる表が、「硬度換算表」です。
この記事では、硬度換算表の概要や硬度試験の種類、換算表を使用する際の注意点などをご紹介します。

硬さとは

硬さとは、「材料表面にものを押し付けたりぶつけたりした際に、どれだけ変形しにくいか」を表す、素材の機械的性質のひとつです。一般的には、硬い材料ほど摩耗しにくい、曲がらない、延びない、脆いといった特徴を持ちます。

ものが硬い・柔らかいといった言葉は日常的に口にすることも多い一方で、すべての材料に対して共通した硬さの単位や計算方法は存在しません。これは、硬さには複数の機械的性質が関係している点や、力の強さや物体の材質といった条件によって硬さの測定結果が変わってしまう点が理由です。そのため、さまざまな試験を使い分けることで、相対的な指標として硬さは求められています。

硬さの確認には硬度換算表が便利

素材の硬さを測定する「硬さ試験」には複数の試験方法があります。それぞれ基準となる硬度が異なるので、求めている硬度とは別の試験方法で測定された場合は、わかりにくくなることも考えられます。

このようなときに複数の硬度を見比べ、異なる単位へと換算するために使う表が硬度換算表、または硬さ換算表と呼ばれるものです。硬度換算表を活用すれば、計算しなくても異なる単位での硬度を確認できます。
JISハンドブックの巻末には、SAE(自動車技術者協会)によって作られた硬度換算表が参考として引用されています。

硬度換算表に記載されている硬さ試験の種類

硬さを測定する方法は、それぞれ特徴や得意とする分野が異なるため、いくつかの種類を使い分けています。材料を押し込んだり衝突させたりと、試験方法にはさまざまな種類があり、JISではロックウェル・ビッカース・ショア・ブリネルなどを規定しています。代表的な試験方法とそれぞれの特徴、それぞれが得意とする分野は以下の通りです。

・ロックウェル硬さ

ロックウェル硬さ試験は、日本国内でよく使われる押し込み式の試験方法です。ダイヤモンドまたは超硬合金の圧子を対象物に押し込み、生じたくぼみの深さから硬度を測定します。
圧子と荷重の組み合わせによって、柔らかいものから硬いものまで、さまざまな材料の測定に対応が可能です。圧子と荷重の組み合わせは「スケール」と呼ばれ、いくつかのパターンがあります。

・ビッカース硬さ

ビッカース硬さ試験では、正四角錐のダイヤモンド圧子を対象物に押し込み、くぼみの大きさを測定します。圧子の大きさが違ってもくぼみは相似形となることから、ビッカース硬さは荷重とは無関係に一定です。そのため、大きな荷重をかけるのが困難な薄い材質も測定できるなど、あらゆる材質の硬度測定に適用できる試験方法です。

・ショア硬さ

測定対象に向けて一定の高さからダイヤモンドハンマーを落下させ、ハンマーが跳ね上がった高さを測定するのがショア硬さ試験です。
反発力を利用して測定するので測定物に傷がつきにくく、仕上がり品も試験できるという特徴がありますが、再現性は良好ではなく測定値のバラつきが発生しやすい点に注意が必要です。主にゴムの硬さを計測するときに使用されます。

また、同じく反発力を利用した試験方法に、リーブ硬さ試験というものもあります。ショア硬さとは異なり、跳ね上がった高さではなく、落下速度と跳ね返り速度の比率で硬さを求めるのが特徴です。

・ブリネル硬さ

ブリネル硬さ試験は鋼球や超硬球の圧子を材料に押し付け、生じたくぼみの面積によって硬さを求める試験方法です。くぼみが生じたときの荷重を、荷重を外したときに残っているくぼみの表面積で割った値を硬さとして求めます。このとき、使った圧子の直径と荷重を併記することが一般的です。

圧痕が大きく鋳造品や鋳鉄、非鉄金属などの幅広い材質で利用できる試験方法ですが、材料によってはくぼみが不明確で測定に誤差が生じる場合もあります。また、くぼみができてしまうため製品として使用する材料では行えません。

・ヌープ硬さ

ビッカース硬さ試験と同様にダイヤモンド圧子を試験片に押し付けて、くぼみの対角線の長さを測定する試験です。ビッカース硬さ試験とは圧子の形状が異なり、ヌープ硬さ試験は細長いひし形状の圧子を利用します。くぼみの深さが浅いので、薄く脆い材質でも測定可能です。

ただし、くぼみが小さくなる分、表面が研磨された材料ではないと正確な測定が行えない可能性があります。

硬度換算表の記号の意味

硬度換算表には一定の表記ルールがあり、それによってどのような条件で測定された硬さなのかを知ることができます。ここでは、換算表に記載されている記号や数値の意味を見ていきましょう。

・硬さ記号

硬さ試験はアルファベットの組み合わせで表され、HRCやHV、HS、HB、HKなどの記号があります。これらは、どのような試験方法によって得られた硬さであるかを示すため、硬さ値の末尾に付けられる記号です。
それぞれ、HR(ロックウェル硬さ)、HV(ビッカース硬さ)、HS(ショア硬さ)、HB(ブリネル硬さ)、HK(ヌープ硬さ)のことを指します。
ロックウェル硬さでは圧子と荷重の組み合わせによってスケールが決められているため、HRA/HRB/HRCのように、使用したスケールと合わせて表記する場合が一般的です。

・硬さ値

硬さを表す値で、数字によって表記されます。例えば「60HRC」と表記されている場合は、ロックウェル硬さ試験でCスケールを使って測定したときの硬さ値が60であることがわかります。

・荷重

押し込み式の試験の場合、試験時にかけた荷重も表記されます。「600HV30」と表記されていた場合は、ビッカース硬さ試験で30kgfの荷重をかけたときの硬さ値が600であるという意味です。

硬度換算表を使用する際の注意点

硬度換算表を使用する際には、いくつか注意点があります。ここでは、硬度換算表を使用する際に気を付けたいポイントについてご紹介します。

・近似的な鋼種に適用される

鋼種には数多くの種類が存在し細分化されていますが、硬度換算表はこれらの鋼種を網羅しているわけではありません。
硬度換算表は、幅広い鋼種の中から近似的なものに適用した値を表しているものだと理解して使用する必要があります。

・一部の材料は換算できない

一部の材料は、硬度換算表で換算できない点にも注意が必要です。例えば、オーステナイト系ステンレスや冷間加工したものなどは、換算表を適用することができません。
換算できる場合でも、換算値はあくまでも参考値であることを留意しておきましょう。正確な硬さを調べたい場合は、実際に試験機で検証を行う必要があります。

・表面の条件が限られる

硬さ試験は、どの試験方法においても表面が滑らかであることを条件としています。荒れたり凹凸があったりする表面には適用されず、表面焼入れが施されている場合も硬さの基準が異なるため換算できません。
また、測定する材料には十分な厚みがあることなどの条件がある場合もあります。

・測定位置による硬さの違い

通常、材料の硬さは表面と内側といった場所によって異なります。熱処理を行った材料の場合、場所によって冷却速度が異なることから金属組織や硬さに違いが生まれます。
硬さを測定する場合は、測定位置をあらかじめ決めておくことが重要です。

・引張強さにも注意が必要

硬度換算表には「引張強さ」や「引張強度」も記載されています。引張強さまたは引張強度とは、材料の引張力に対する最大の強度のことです。引張強さを超えると材料は破断します。材料がどれくらいの強度を持ち、どこまで伸びるかを調べれば、弾性率や降伏応力、ヤング率(材料が伸び縮みする方向への弾性率)などを知ることが可能です。

ただし、材料の強度は場所によって異なり、材料の加工や熱処理によって残留応力も存在します。引張強さはあくまで近似値でしかなく、使用する際は目安程度にとどめておきましょう。

硬度の換算には高度換算表を活用しよう

硬度試験は、それぞれの測定に適した材料があり、分野によっては慣例的に使用される試験が決まっているケースもあります。そのような場合でも、硬度換算表があれば別の試験で得られる硬度へと換算が可能です。
ただし、あくまでも近似値でしかなく、一部の材料は換算できないなど、換算表の適用には注意点もあります。換算表の正しい使用方法や、換算表が使用できないケースを把握したうえで活用すると良いでしょう。