治具(ジグ)とはどんなもの? 使用する4つのメリットと種類を解説

治具(ジグ)とはどんなもの? 使用する4つのメリットと種類を解説

治具(じぐ)は、製品の品質や精度の向上、加工の効率化を図る役割を担っています。ワークを直接加工する工具ではないものの、製造においてなくてはならない重要な存在です。
この記事では、治具とはどういった場面で使われるもので、どのような効果を得られるのかなどを解説します。

ワークの固定や作業をガイドするのが「治具」

治具(じぐ)とは、加工の際にワークを固定して位置決めをしたり、加工のガイドをしたりする補助工具のことです。英語で「工作物を固定したり、工具の制御を行ったりする器具」を意味する「jig」の当て字で、治工具(じこうぐ)や補助工具と呼ばれることもあります。
クランプやバイス(万力)といった「取り付け具」も治具の一種です。

加工を補助する役割の治具ですが、加工物や加工内容に合わせて、専用のものが作られることが一般的です。部品の製作や組み立て、品質検査や寸法測定など、さまざまな場面で活躍しています。

治工具と「工具」の違い

前述のとおり、治具は治工具と呼ばれることもあります。「工具」と含まれているものの、一般的な工具とは用途が異なります。
工具は、ものを切ったり、削ったりしてワークの形状を変えるものです。加工において、なくてはならない道具といえます。

一方で、治具はワークを直接加工するものではありません。加工をサポートする道具なので、治具がなくても加工自体は行うことができます。
実際にワークを変形させる道具が工具、加工をサポートする道具が治具(治工具)と考えると、違いがわかりやすいのではないでしょうか。

治具を使用する効果

切削工具や研削工具のような、直接ワークの形状を変える工具は、それらがなければ目的の加工も行えません。切削工具とは異なり、治具はあくまでも加工を補助する工具なので、なくても加工自体は行えます。
しかし、部品の製作や組み立てなど、さまざまな用途で治具は使われています。治具を使うことで、どのような効果を得られるのでしょうか。

・品質の安定化

治具によって加工をサポートすると、手と目視のみで行うよりも、正確な位置合わせが実現します。位置合わせの正確性が高まることで、加工精度を均一化することが可能です。
その結果、加工の再現性も高まり、品質の安定化につながります。

・作業の簡易化

治具を使って位置決めを行えば、誰でも同じ場所にワークを設置できるようになります。位置決め作業が簡単になり、作業者の熟練度の違いに起因する作業精度のぶれを防ぐことが可能です。

・人的ミスや属人化の防止

ドリルを使った穴あけ加工なども、治具のガイドを通じて行えば、作業者が誰であれ加工精度が変わることはありません。人的ミスの防止や、属人化の解消による生産性の向上も期待できます。

ただし、治具は部品や製品ごとに専用のものを用意することが一般的です。ロット数が少ない製品は、治具製作にかかるコストが負担になる場合もあります。

・加工時間の短縮

治具の使用によって、位置決めや操作などが素早くできるようになり、生産性の向上につながる点もメリットです。
一般的に、穴あけ加工は定規を当ててケガキやポンチ打刻を行ってから、ドリルで穴をあけていきます。
しかし、ガイド付きの治具を使えば、ケガキやポンチ打刻といった作業は不要です。治具をセットした後、直接ドリルを押し当てるだけで作業が完了します。

代表的な治具の種類

治具は、部品の製作や組み立て、品質検査や寸法測定など、さまざまな場面で使われています。代表的な治具の種類は、以下のとおりです。

・ライン加工で使われている手作業向けの治具

ライン加工で手作業を行う工程では、次のような治具が使われています。

・貼り付けや接着作業における位置決め治具
・塗装やシーリング作業でのマスキング治具
・他の部品を挿入する際にガイドを行う治具 など

所定の場所にワークを置くと自動でクランプが作動するなど、治具そのものが自動化されている場合もあります。

・機械加工で使われている治具

機械加工でも、加工精度や機械の動作精度を高めるために治具が使われています。使われている治具の例は、以下のとおりです。

・溶接する部品同士を固定する治具
・曲げ加工において、曲げ具合を決める押し付け部や受け具
・工作機械での切削加工時に使われる、特殊な形状のワークにも対応する固定治具 など

複数の加工を行えるNC工作機械用の治具は、1つで複数のワークに対応できるように、多くのねじ穴が設けられていることもあります。

・検査工程で使われる測定用治具

検査工程においては、定められた手順で定められた箇所を測定しなければいけません。作業者ごとに測定の手順や検査する箇所が違っていては、正しい検査結果が出せず、品質も安定しないためです。
そのため、治具によって基準の箇所を定めて、作業者が変わっても同じ基準で測定できるようにしたり、複雑な形状でも測定しやすくしたりする必要があります。
検査工程では、製品の検査項目や測定箇所、形状、基準位置などに合わせて作られた、専用の治具が使われることが一般的です。

・用途別の治具の種類

検査や測定用だけでなく、治具は用途に応じてさまざまな種類に分類することができます。用途別の治具の例は、以下のとおりです。

【固定治具】
部品や材料を一カ所に固定し、加工をサポートします。バイスやクランプ(万力)が固定治具の例です。

【切断治具】
刃物が傾かないようにワークと刃物の位置を固定し、所定の大きさに切断する作業をサポートする治具です。裁断機が例として挙げられます。

【挿入・引抜治具】
材料を決まった位置に挿入したり、固定されているものを引き抜いたりする際に使用する治具です。プーラーなどが該当します。

【溶着治具】
材料同士を接着するために使用する治具です。熱によって材料を溶かして接着します。

【カシメ治具】
材料同士の接合部分を締めたり、つぶしたりして固定する際に使用します。

その他にも、塗装をサポートする塗装治具や、熱処理の際に材料を固定する熱処理治具、液体内で製品同士がぶつかるのを防ぐめっき治具など、作業の目的に応じた多くの治具が使われています。

治具設計のポイント

治具を使う目的は、作業を効率化して生産性を高めることです。治具を設計する際は、目的を明確にしたうえで、作業の特性を考慮する必要があります。

また、治具の精度は作業の効率や精度に直結します。対象物を確実に固定できるか、位置決めの再現性が高いか、使いやすさに優れているかなどを確認しながら、設計・製作を行うことも大切です。

治具を活用して加工を効率化しよう

作業をサポートする役割を担っている治具は、製造現場で欠かすことができないものです。特に、加工の精度や速度の向上、作業の簡易化などが求められる製品を量産する場面において、治具の持つ役割は重要といえます。

ただし、治具は基本的には作業や材料に合わせて専用のものを使用することが一般的です。場合によっては、治具を製作したことによってコストがかさんでしまう場合もあります。

また、治具は作業内容に応じて多くの種類に分けられます。作業の効率化や製品の品質・生産性の向上を達成するには、作業目的に適した治具を用意することも重要です。
治具を上手に活用して、高効率な加工を行いましょう。

この記事を読まれた方はこんな記事も読まれてます