放電加工の基礎知識。加工の種類やメリット・デメリットを解説

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放電加工の基礎知識。加工の種類やメリット・デメリットを解説

放電加工は、切削加工や研削・研磨加工とは異なり、電気のエネルギーによってワーク(対象物)に直接触れることなく目的の形状に仕上げていく加工です。しかし、放電加工はどのような原理でワークを削っていくのでしょうか。
この記事では、放電加工の具体的な原理や種類、放電加工のメリット・デメリットなどをご紹介します。

「放電」とは?

放電加工では、名前のとおり「放電」と呼ばれる原理を使用して加工を行います。加工の原理を知るためには、放電そのものがどのような現象か押さえておくこともポイントです。

絶縁体に高い電圧をかけると、絶縁破壊と呼ばれる現象が発生して絶縁性を失います。絶縁性を失った絶縁体の内部や表面に電流が流れる現象が放電です。身近な放電の例としては、雷や静電気などが挙げられます。

また、電池やバッテリーを使って製品を動かすのも放電の一種です。例えば、電池のプラス極とマイナス極、電球の3つを動線でつなぐと、プラス極からマイナス極に電流が流れるため、電球が光ります。これが、電池における放電の仕組みです。

放電加工の原理

放電加工は、電極とワークの間で連続的に放電を繰り返し、ワークを溶解させて目的の形状を作る加工方法です。目的の形状に必要な部分以外を除去する加工のため、除去加工法に分類されます。

電極の形状によって複雑な形状を一度の加工で作り出すことができ、少量生産に適しているのが特徴です。放電するための電極には、銅やグラファイトのような電気を通しやすい材料が使われます。

絶縁性の加工液の中にワークを沈め、ワークと電極の間に電圧を与えると、ワークと電極間でアーク放電(高温度の陰極から熱電子が放出されることで維持される放電)が発生します。放電によって高温になったワークは溶解し、溶解した金属が加工液を沸騰させることで、小規模な水蒸気爆発が起こります。それによって溶解した部分が吹き飛ばされ、不要な部分が除去されていくというのが、放電加工の原理です。

放電加工の種類

放電加工は、型掘り放電加工とワイヤ放電加工の2種類に大きく分けられます。ここでは、それぞれの特徴をご紹介します。

・型彫り放電加工

型彫り放電加工では、加工形状を反転させた形状の電極をワークに近づけ、放電することで彫り進めていきます。ワークを固定し、数値制御によってX軸とY軸に移動させながら目的の形状を作り出すNC放電加工機を使用するのが主流です。

また、極めて細い棒状の電極を用いて、ワークに微細な穴をあける細穴放電加工もあります。通常の穴あけ加工では難しい細長い穴をあけられるのが特徴です。

・ワイヤ放電加工

電極となるワイヤによって、ワークを目的の形状に切り抜く加工方法です。糸のこ盤のように一筆書きの切り抜きができます。
ワイヤ放電加工も型彫り放電加工と同様に、NCによる自動加工が主流となっています。

放電加工を行うメリット

放電加工は切削加工や研削・研磨加工と同じく、除去加工に分類される加工方法です。これらの加工方法と比較したとき、放電加工にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

・高精度な加工が可能

放電加工は切削加工に比べ、細かい形状においても高精度で加工が行えます。ワーク表面を1ミクロン精度で加工できるほど、高い寸法精度も実現可能です。

・硬い素材も加工できる

刃物を使った加工の場合、使用する刃物より硬い金属は加工できませんが、放電加工は電気エネルギーによって加工するため、硬い素材でも加工可能です。
難削材の加工でも、高価で特殊な切削工具を準備したり、加工速度を落としたりする必要がなくなります。

・非接触で対象物への負荷が少ない

放電加工はアーク放電によって溶解させて彫り進めます。対象物に接触しないため、応力を発生させずに加工可能で、残留応力による寸法誤差や変形、バリの発生の心配がありません。

・常に冷却したまま加工できる

放電加工では、ワークは常に加工液によって冷却され続けます。これにより、熱による変形がほとんど発生しません。

放電加工のデメリット

メリットの大きい放電加工ですが、デメリットもあります。放電加工が苦手とする条件や注意点としては、以下のようなものが挙げられます。

・加工に時間がかかる

放電加工は、放電を繰り返すことでワークを少しずつ溶解させていきます。一度に削れる量が少なく加工に時間がかかるため、大量生産にはあまり適していません。

・導電性のない素材は加工できない

導電性のないワークの場合、放電できないため熱が発生しません。電気を通すものなら硬さに関わらず加工できますが、導電性のない素材の加工は不可能です。

・電極が摩耗する

放電加工で使用する電極は、加工時に発生する火花によって少しずつ溶けていきます。特に、型掘り放電加工では電極の角部の摩耗が進むと、求めている仕上げ形状を得られません。
サブ電極を用意し、消耗に応じて途中で取り替えながら加工を進める必要があります。

・【型彫り放電】電極を作成する必要がある

型彫り放電加工の場合、目的の形状に合わせた電極を作成する必要がある点もデメリットです。放電加工そのものに時間がかかるうえに、電極を作成する工程も増えるため、生産性は低下します。

・【ワイヤ放電】加工の向きが限定される

ワイヤ放電加工は、糸のこのように上下に張ったワイヤで加工を行います。ワイヤは垂直方向に張られているので、底のある加工や水平方向に切断するような加工はできない点もデメリットのひとつです。

放電加工と電解加工の違い

放電加工に似た加工法として、電解加工があります。電解加工とは、電極とワークの間で放電を行いながら、アルカリ性の電解液をかけることで化学的に溶解させる加工方法です。放電加工と同様に、導電性のある素材であれば難削材でも高精度に加工が行えます。

放電加工は放電によって生じる熱でワークを溶解させて除去しますが、電解加工は放電と電解液による化学分解によって除去するという点が、両者の大きな違いです。

原理を知って放電加工を使いこなそう

放電加工は高精度で熱によるワークの変形もなく、高硬度な難削材でも加工できる方法です。ただし、加工に時間がかかりやすい、導電性がないワークには使用できないなど、デメリットがないわけではありません。
放電加工の仕組みや特徴、種類と注意点をあらかじめ知っておき、効率の良い加工を行いましょう。

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