エンドミルは種類が豊富! それぞれの特徴とボールエンドミルの使い方

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エンドミルは種類が豊富! それぞれの特徴とボールエンドミルの使い方

エンドミルはマシニングセンタ(M/C)に取り付けて切削加工を行う工具です。
しかしエンドミルにはさまざまな種類があり、どのように選定すれば良いのか迷う方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、エンドミルの種類と用途、先端形状が特殊なボールエンドミルの使い方についてご紹介します。

エンドミルの構造は大きく分けて2種類

エンドミルの構造は、ソリッドとスローアウェイ、鋼シャンクに超硬の刃をロウ付けしたロウ付けエンドミルの3種類に分けられます。
ソリッドエンドミルはシャンクから刃先までが一体になっているエンドミルで、高剛性なことから精度の高い加工が可能です。また、摩耗しても再研磨・再コーティングして使うこともできます。
一方のスローアウェイエンドミルはインサートと呼ばれる切れ刃をネジや押さえ金で固定する、シャンクと刃先が別体として作られたものです。
超硬素材の使用を一部に抑えることでコストダウンを実現しているほか、切れ刃が摩耗したときにすぐに新品と交換できるといったメリットがあります。

ハイスエンドミルと超硬エンドミルの違い

刃先まで一体になっているソリッドエンドミルは、使われている材質によってハイスエンドミルと超硬エンドミルに分けられ、それぞれ特徴が異なります。

1. ハイスエンドミル

高速度鋼(HSSハイス)で作られており、一般的に広く使われているのがハイスエンドミルです。
超硬エンドミルに比べると切削速度が低く被削材も限定されますが、コストパフォーマンスに優れているほか、柔軟性がありチッピングや欠損が発生しにくいというメリットもあります。

2. 超硬エンドミル

超硬合金を刃部に使ったエンドミルは超硬エンドミルと呼ばれます。
比較的高価ですが切削速度や精度、耐摩耗性に優れ、幅広い被削材に対応可能です。しかし、ハイスエンドミルに比べると靭性が低く、機械そのものや工具の保持剛性などの影響により欠けや折損が起こりやすいため、保持具(ホルダ)の選定やメンテナンスに注意しなければなりません。

エンドミルの種類

エンドミルは素材や構造だけでなく、外周刃の形状にも種類があり、用途によって使い分けられます。

1. スクエアエンドミル

スクエアエンドミルは最も汎用性が高く、一般的に普及しているエンドミルです。
底刃がほぼ平坦で、水平面・垂直面の溝加工、肩削りなどに使われます。
また、切れ刃の種類も多く、粗削り、中仕上げ、仕上げのいずれにも対応できます。

2. ラフィングエンドミル

ラフィングエンドミルはスクエアエンドミルと同様に底刃はほぼ平坦ですが、外周刃が波状になっているのが特徴です。
波状の部分により切り屑が小さく分断されるため切り屑の排出性に優れ、切削抵抗が小さいので被削材を大きく切り込むことができます。ただし、大きく切り込む分切削面が荒く、仕上げは出来ません。コーナーR付きも多く存在します。

3. ボールエンドミル

ボールエンドミルは、刃の先端が球面(R形状)になっています。 3次元加工やR加工など曲面の切削には欠かせません。平面や側面、段差、溝、ポケットなど、さまざまな加工形状に対応できるエンドミルです。

ただし、平面加工や傾斜面の加工でボールエンドミルを使用すると、仕上げ面には波のような凹凸形状(カプス/スキャロップ)が残ってしまいます。加工精度を高めるために更に凹凸をならす必要があるなど、加工に時間がかかるため、曲面加工で使用するのが一般的です。

曲面加工の方法には、エンドミルを一定方向に動かしながら目的形状に沿って引き上げたり、押し上げたりする「走査線加工」と、エンドミルを水平に動かし続ける「等高線加工」などがあります。

4. ラジアスエンドミル

ラジアスエンドミルはスクエアエンドミルに似ていますが、底刃と外周刃が繋がる部分が球面(R形状)になっている点が特徴で、コーナー部の強度アップや高送りに適しています。
ボールエンドミルに比べ使用できる形状は限定されるものの、平面切削だけでなく曲面切削にも使われます。また、常に外周刃で切削することから均一な切削面を作りやすいため、粗取りや中仕上げ、最終仕上げなど、幅広い用途で使われるエンドミルです。

5. テーパエンドミル

外周刃が円錐状になっていて、テーパ加工が可能なエンドミルです。
加工に応じてさまざまな角度のものを使い分ける必要がありますが、金型の抜け勾配を作る際に活躍し、リブ溝加工やインロー部の加工などにも使われます。

エンドミルの底刃の種類

エンドミルは底刃の種類によってもそれぞれ特徴があり、用途が分かれます。底刃の形状は水平面や隅肉部の切削に影響する重要な部分です。

1. スクエアエンド

スクエアエンドまたはフラットエンド、普通刃などと呼ばれ、コーナー部がピン角になっていて、水平面・垂直面の切削加工が得意です。
スクエアエンドミルは、さらにセンタカットとセンタ穴付きでタイプが分かれます。
センタカットはドリルのように、軸方向切り込みによる穴あけ加工が可能です。
センタ穴付きは穴あけ加工はできませんが、再研磨の際に両持ちできるため優れた振れ精度の再現という点でメリットがあります。

2. ボールエンド

ボールエンドミルは、先端が丸くなっていて曲面の加工が得意です。
倣い加工等の3次元的な形状を加工する場合に活躍しますが、先端中心部のチップポケットが小さいため、切り屑の排出性は良くありません。

3. ラジアスエンド

スクエアエンドミルとボールエンドミルの中間的存在が、ラジアスエンドミルです。
先端の底刃部はほぼ平坦ですが、コーナー部にRが付いていることから、隅肉部をR加工するときに用いられます。
また、水平面を切削する場合には高硬度の被削材の高送り加工が可能です。

ネック部の種類による違い

エンドミルのシャンク部の長さや径は、製品によって異なります。シャンクと刃部との境目をネックと言い、ネックとシャンクの形状により以下の4種類に大別できます。

標準(ストレートシャンク)
ロングシャンク
ロングネックシャンク
テーパネックシャンク
・ストレートシャンク

汎用的に使われているのがストレートシャンクで、一般的な形状のネック形状です。

・ロングシャンク

深堀用に使われることが多く、ストレートシャンクに比べ少し長めのシャンクを持つため、突き出し長さの選択幅が広くなります。

・ロングネックシャンク

ネック部分が一度くびれるように細くなるのが特徴で、全長も長いため深彫りに最適です。

・テーバネックシャンク

ネック部分がシャンクから刃部に向けて細くなっていく形状で、抜け勾配の付いた壁際の深掘りに使われます。

刃数によるエンドミルの特徴の違い

エンドミルは刃数にも2枚刃・3枚刃・4枚刃・6~枚刃と種類があります。
一般的に刃数が少ないほどチップポケットは大きくなるため、切り屑の排出性は上がり剛性が低くなります。
刃数の少ない2枚刃・3枚刃なら、切り屑排出性が良く軸方向送りへの対応も可能です(底刃形状や被削材質によります)。
反対に刃数が多ければ剛性が高くなりますが、切り屑排出性は低下していきます。6~枚刃は特に高剛性ですが径方向の仕上げや高硬度被削材の加工が主な使い方となります。

ボールエンドミルを使用する時のポイント

ボールエンドミルは、他のエンドミルとは違い先端が丸くなっています。形状が大きく異なるため、加工時には注意が必要です。
ここからは、ボールエンドミルならではの注意点やポイントをご紹介します。

・切削速度が場所によって変わる

ボールエンドミルは、工具の先端に近いほど切削速度が小さくなります。通常、切削工具の回転数や工具径によって切削速度は上下します。先端が丸いボールエンドミルにおいては、回転の中心部(工具の先端)に近づくほど切削速度が遅くなり、工具径が0になる先端部は切削速度も0になるということです。

そのままでは仕上げ精度の低下、構成刃先の発生といった問題につながる恐れがあるため、切削点を意識しながら加工を行う必要があります。切削点が先端に集中しないように工具経路を工夫する、送り速度を小さくする、ボールエンドミルに傾斜をつけ、底刃の外側で加工を行うといった対策が有効です。

・刃こぼれしやすい

前述のとおり、ボールエンドミルは工具径が場所ごとに異なるため、切削速度も場所によって大きく変わります。切削抵抗の大きい先端部分に切削点が集中すると、刃こぼれが起こりやすい点にも注意が必要です。

・切り屑の排出性に劣る

エンドミルは、切り屑をチップポケットと呼ばれる刃と刃の隙間から排出します。ボールエンドミルは先細りした形状になっているので、先端付近はチップポケットが小さく、切り屑の排出性に劣ります。
切り屑による加工面の劣化や、工具の損傷につながる恐れがある点も覚えておきましょう。

用途に応じてエンドミルは使い分けよう

エンドミルは外周刃や底刃、ネックやシャンクの形状、刃数などに種類があり、それぞれ用途が分かれています。
ぜひこの記事もご参考に、用途に適したエンドミルを選定して使い分けるようにしましょう。