エンドミルの使い方は?種類別の使い方やアップカットとダウンカットの違いなどを解説

エンドミルの使い方は?種類別の使い方やアップカットとダウンカットの違いなどを解説

エンドミルによる切削加工では、実にさまざまな形状を作り出すことができます。
しかし、目的の形状を削り出すためには適したエンドミルを選定し、それぞれの使い方を抑えておくことが大切です。

そこでこの記事では、エンドミルは種類別にどのような加工ができるのかをはじめ、
種類別の使い方、加工時に注意しなければならないアップカットとダウンカットの違いについてご紹介します。

エンドミルの主な使い方

エンドミルは、マシニングセンタ(M/C)等に取り付けて使うフライス工具の一種です。同じく切削工具であるドリルが軸(上下)方向にのみ移動するのに対し、
M/Cに取り付けられたエンドミルは上下・左右・奥・手前と3次元に動かすことができます。
そのため、エンドミルを使用するフライス加工では、平面・壁面・穴あけ・溝切り・肩加工・ポケット加工などさまざまな加工が可能です。

エンドミルとリーマの違い

エンドミルに形状的にはよく似た切削工具にリーマがあります。いずれもフライス盤に取り付けて使いますが、用途が大きく異なります。
エンドミルは横方向に切削し、新しい形状を削り出していくために使う工具です。一方、リーマはドリルなどであけた穴の仕上げに使用します。

エンドミルの種類別の使い方

エンドミルは刃先や外周の切れ刃の形状によって大きく5つの種類に分けられ、それぞれ向いている材質や加工内容が変わるため、適したものを選定しなければなりません。
エンドミルの種類別に、どのような用途での使用に適しているのかをご紹介します。

1.スクエアエンドミル

スクエアエンドミルはほぼ平坦な先端形状を持ち、水平面と垂直面を切削するのに使われます。 荒削りから仕上げまで用いることができる汎用的なエンドミルです。

2.ラフィングエンドミル

先端はほぼ平坦刃ですが、外周刃に小さな溝(または波状)があり切削能力を上げているものはラフィングエンドミルと呼ばれます。 基本的な切削の特徴はスクエアエンドミルと同様ですが、切削能力が高く荒削りに向いている反面、切削面に細かい溝が残るため仕上げには向いていません。

3.ボールエンドミル

ボールエンドミルは先端が球状で、曲面加工を得意とするエンドミルです。曲面を再現できるため型を成型する際の加工で役割が大きく、主に仕上げで使用されます。

4.ラジアスエンドミル

スクエアエンドミルの底刃と外周刃がR形状(球面)に形成されており、R形状の切れ刃部分でも切削を行うものがラジアスエンドミルです。 ヘリカル加工も含め水平面・垂直面の加工も可能な汎用性の高い万能型のエンドミルで、ボールエンドミルと同様の用途で使われることもあります。しかし、隅肉の直角を出すことはできず、使用できる曲面の形状も限定される点には注意が必要です。

5.テーパエンドミル

テーパエンドミルは、円錐状の外周刃が特徴です。角度のついた面を作れるため、抜き勾配を考えなければならない金型製作をはじめ、リブ溝やインロー部の切削を行う場面で活躍します。

アップカットとダウンカットの違い

切削工具は通常の場合、時計回り(右回転)です。エンドミルの側面で切削するとき、切れ刃が当たる面と被削材の送り方向によって切削方法の特徴が変わるため、
違いを理解しておく必要があります。

1.アップカット

右回転するエンドミルに対し、被削材が当たる面を左から右に送るのがアップカットです。 アップカットではエンドミルの回転とは相対する方向に被削材を進めるためややビビリが発生しやすく、切れ刃が被削材と接触している(擦過)時間が長くなり刃先が摩擦熱で摩耗しやすい(短寿命)というデメリットがあります。 しかし、ビビリが発生しなければ切削面に光沢が出るので、きれいな仕上げ面を得やすいのがアップカットのメリットです。

2.ダウンカット

右回転するエンドミルに対し、被削材が当たる面を右から左に送るのがダウンカットです。 エンドミルの回転と被削材の進む方向が同じになるので、切れ刃が被削材に食い込んだ時の切り屑の厚みは厚く、喰い付きによる衝撃が発生しやすくなります。 しかし、注意点をクリアした場合の切削効率は良いため、刃先部の摩耗が少なく工具寿命は長くなるというメリットがあります。

エンドミルは刃の形状に応じてさまざまな使い方ができる

エンドミルは刃先の形状に応じてさまざまな切削加工ができる工具です。
刃先形状に加え、シャンク径や刃長、被削材の材質や加工の大きさも考えて選定すると、目的に沿ったエンドミルが見つかります。
また、加工の際にアップカットとダウンカットによって加工具合が変わることも考慮すれば、より高い精度の加工が可能になるでしょう。
上図のようにアップカットの場合、工具は被削材に対して右から左へ切削することとなるため、材料面をすくい上げるような形で加工されますのでやや食い込みがちになります。
一方、ダウンカットは工具が左から右への切削となるため、加工後の壁面はやや掘り下がるような形となります。
これらの現象の度合いは工具の刃長の長さや一刃辺りの送り量、被削材質や硬度によっても変化しますのでご注意ください。