ドリルによる穴あけ加工の種類は? 加工時の注意点と穴を曲げないための方法を併せてご紹介

ドリルによる穴あけ加工の種類は? 加工時の注意点と穴を曲げないための方法を併せてご紹介

ドリルの穴あけ加工は、回転装置を使った切削作業の中で基本となる作業です。穴あけ加工において精度の高い作業ができていなければ、後工程ですべての精度が落ちてしまうことも考えられます。高精度で仕上がりの良い穴あけ加工を行うには、知識と経験、そして作業の熟練が必要です。 知識や経験はすぐには身につきませんが、早期にレベルアップできる部分もあります。この記事では、ドリルの穴あけ加工の種類や加工時の注意点などをご紹介します。

ドリルによる穴あけ加工の種類

ドリルの穴あけ加工の種類と、それに適した刃形状にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、穴深さや大きさが特殊な場合の4つの加工法についてご紹介します。

・浅穴あけ加工

一般的に、ドリル直径の3倍以下の穴あけ加工は「浅穴あけ加工」に分類されます。ムク材に対し直接ドリルを当てて掘り進める「ソリッドドリリング加工」が、最も一般的に使用される方法です。

・大径穴あけ加工

大きな径の穴あけの方法には「トレパニング加工」や「カウンターボウリング」、「ヘリカル加工」があります。 トレパニング加工は穴の中心を円柱状に残しつつ、あけたい穴の径から内側数ミリまでの円筒状の壁を抜き一気に大径の穴をあける加工方法です。トレパニングドリル、またはトレパニングヘッドと呼ばれる切削工具を用います。 カウンターボウリング加工は、すでにある穴の径を大きくする加工法です。センタリングができないため精度を出すことが難しく、使用する工具には高い剛性と最適な切削条件が求められます。 ヘリカル加工はドリルを使った穴あけ加工ではなく、フライス盤を使って行う方法です。小径のエンドミルでヘリカルコンタリング切削を行うことで、大きな穴を作っていきます。

・深穴加工

深穴加工には、「ロングドリル」や「スーパーロングドリル」と呼ばれる全長・溝長の長いドリルを使います。深穴をあける場合は切りくずの排出が重要なため、ロングドリルは溝長が長いのが特徴です。 しかし、ロングドリルは全長が長いほどシャンクから刃先までが遠くなるため喰いつきが不安定となり、そのため被削材に押し付けられたときに「ブレ」が起きてしまい、ドリルの破損や穴の曲がりにつながる可能性もあります。 そこで使われるのが「パイロットドリル」です。穴位置精度を向上させ、逃げを発生させないようにする役割を持っています。 また、深穴加工では切りくずの排出や切削抵抗が重要になるため、特に切削速度と送りに気を使う必要があります。

・微細穴加工

径が0.01mmから0.2mmほどの小さな穴加工には、微細穴加工用のドリルを使います。このような加工では、工具精度や切削条件が非常に重要です。 微細穴加工ではクーラント圧が工具寿命や生産性のカギを握っており、切りくずの処理性に長ける高圧クーラントが推奨されています。

穴あけ加工で使われるドリルの種類

穴あけ加工で使われるドリルは、らせん状の溝が付いたツイストドリルと呼ばれるものが一般的です。ツイストドリルは、シャンクと呼ばれる柄の部分と切れ刃から構成されており、シャンクは先細りになっているテーパーシャンクと、真っすぐな円筒状のストレートシャンクに分けられます。

テーパ―シャンクはドリルの保持力が高く、回転の際の振動に強いのが特長です。一方でストレートシャンクは、直径13mm以下のものが一般的で、大型のドリルを保持するのが難しい卓上ボール盤などで使用されます。

また、シャンク以外にも、刃立ちの形状や油穴の有無などによってさまざまな種類に分けられます。

ドリル以外の穴あけ加工

穴あけ加工の際は、ドリルで穴をあけるだけでなく、用途に応じて穴に特定の加工を施すことがあります。ドリル以外の穴あけ加工の方法について、代表的なものをいくつかご紹介します。

・タップ加工

ドリルを使った穴あけ加工などによってあけられた穴に、ねじを入れる「ねじ穴」を作る加工がタップ加工です。外周にらせん状の溝を持ったタップという工具を使って行います。ボール盤などにタップを取り付けて作業するのが一般的ですが、タップハンドルを使って手作業でねじ穴を作ることも可能です。

・リーマ加工

ドリルなどであけた穴の内面を、より精密に仕上げるために行うのがリーマ加工です。内径寸法や真円度などの精度が求められる穴あけ加工で行われます。リーマと呼ばれる工具で内径を所定の寸法まで広げながら、ドリル加工の後を滑らかに整えます。 ただし、あくまで穴の精度を整えるための加工で、軸のズレなどを修正する加工ではない点に注意が必要です。

・座ぐり加工

ねじ穴の入り口部分を窪ませて、段付き穴を作る加工です。ねじやボルトの頭を隠す必要がある時に行われます。座ぐり加工専用のドリルで加工を行うのが一般的ですが、エンドミルで加工することもできます。

ドリルで加工を行う場合の注意点

ドリルによる穴あけ加工では、いくつかの点に注意することで作業性や安全性が向上します。工具寿命を延ばしたり生産性を高めたりできるため、注意点を押さえておくと良いでしょう。

・シンニングを行う

シンニングとは芯厚部の先端に切れ刃を持たせる研磨加工です。シンニング加工を施すことで、ドリルを被削材に押し当てる際の喰いつきが向上し芯ブレが減少します。 シンニング加工は切れ刃の形状から次の4つに分けられ、それぞれ特徴が異なります。目的に応じて、適切な加工方法を選定することが重要です。

X形は一般加工や深穴加工に適し、スラスト荷重が大幅に減少し喰いつき性も良くなります。 XR形は、喰いつき性に関してはやや劣るものの、切れ刃の強度が高くステンレス鋼の加工などでも使用される形状です。 S型は研磨が容易なため使用頻度が高く、金属から非金属まで広く使われます。 N型は芯厚が大きい場合に有効なため、芯厚の大きいロングドリルを用いる深穴加工に適しています。

・切削条件の選定

切削作業において理想的な加工を実現するには、高精度な良い仕上がり・作業の早さ・工具寿命の長さの3つが大切ですが、この3つは拮抗関係にあり、すべてを100%にすることは困難です。 そこで、この3つのバランスをとり最適な状態で切削するための「切削条件」を求める必要があります。最適な切削条件を探すためには、加工に使うドリルの径・材質・コーティング、被削材の材質が必要です。

・油量と圧力

スムーズな穴あけ加工をするためには、ドリルの切削抵抗と摩擦熱の対策が重要です。摩擦熱は工具や被削材の変形を引き起こす恐れがあるため、刃先まで切削油が行き渡るように、切削油の油圧・油量を計算する必要があります。また、切削油には切りくずの生成を助ける働きもあり、切りくずの排出率にも大きく影響します。

・切りくず排出

切りくずが詰まってしまうと、ドリルによる穴あけ加工にはドリルのブレ・製品品質の低下・工具寿命の低下・ドリルやチップの破損などのデメリットが生じます。 切りくずの排出性は、ドリルの種類・径・材質、切削油の油圧・油量、被削材の材質などによって決まるため、被削材と穴の大きさや深さに適したドリルの選定、切削油圧・油量の確保による最適な切削条件の設定が必要です。 また、切りくずの形状によっても、ある程度切りくずの排出性を判断できます。例えば、細かい間隔の円錐らせん状の切りくずは、送り速度が低いときに発生しやすいです。逆に、送り速度が高いと扇形の細かい切りくずができやすくなります。

曲がりのない穴をあける方法

ドリル加工においては、穴が曲がってしまうこともあります。穴曲がりが発生する原因は、おもにドリルが最初に喰いつき被削材に侵入する際のブレと曲がりです。ここでは、これらを回避するために行う具体的な対策をご紹介します。

・センター穴加工を行う

シンニング加工を行わない場合、ドリル先端には平坦な部分が残ります。この場合、ドリルの径が大きくなるほど平坦部も大きいです。この平坦な部分が食いつき時のブレを生じさせ、食いつき箇所が軸からずれると曲がりが起こります。 この平坦部をなくすのがシンニング加工です。ただし、シンニング加工をしても、中心がずれていたり平坦部が残ったりすることで同様の症状が発生します。 ドリルの喰いつき性を良くするためには、センター穴加工を行う方法が確実です。小径のドリルであらかじめ穴をあけておくことで、大径ドリルの食いつき精度を向上させ、曲がりを防止できます。

・剛性が高い材質のドリルを選ぶ

曲がりの防止には、ドリルの材質と剛性も重要です。高剛性のドリルなら、喰いつき時の芯ズレが発生しにくくなります。 また、ドリルにはシングルマージンのものとダブルマージンのものが存在しますが、ダブルマージンを採用したドリルの方が穴の曲がりや精度に関しては有効です。 曲がり対策や真円度を要求される穴あけには、超硬素材かつダブルマージンを採用したドリルを選定すると良いでしょう。

加工方法に応じて適切なドリル選定を

ドリルによる穴あけ加工には、さまざまな種類や注意点があります。安全性を高めて効率よく作業を行うためにも、加工方法に合ったドリルを選定し、適切な切削条件の設定を行いましょう。