ドリルとはどんな切削工具?覚えておきたい加工方法や種類の基礎知識

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ドリルとはどんな切削工具?覚えておきたい加工方法や種類の基礎知識

ドリルは、切削工具の代表的存在ともいえるものです。一般的には「ねじれ」のある形状のドリルが主流ですが、実はさまざまな種類や形状があります。この記事では、ドリルの特徴や各部の名称、種類などについてご紹介します。

ドリルとは

ドリルは、材料に穴あけを行う切削工具です。回転する刃を対象物に押し当てることで削り取り、切りくずを排出しながら穴を掘り進めます。
さまざまな工具に取り付けて使うことが可能で、一般的な電動ドリルのほか、充電式のバッテリー式ドリルドライバー、ボール盤や旋盤、フライス盤、インパクトドライバー、振動ドリルやハンマードリルなどでも使われます。

ドリルのことを「ツイストドリル」と呼ぶことがありますが、ツイストドリルはねじれがある一般的なドリルのことです。「ねじれのないドリル」も存在していて、用途に応じて使い分けることができます。
ツイストドリルは数多くあるドリルの中の1種類であると覚えておくと良いでしょう。

また、電動ドリルの本体を略してドリルと呼ぶ場合も多いため、それと区別するためにドリルを「キリ」と呼ぶ人もいます。これは日本古来の穴あけ工具である「錐(きり)」に由来するものです。

ちなみに、英語のドリル(Drill)には「穴をあける」以外にも「反復練習」や「訓練」という意味もあります。このことから、学習用の問題集をドリルと呼ぶようになったそうです。

ドリル各部の名称と働き

ドリルは、各部分に細かく名前が付けられていて、それぞれ働きが異なります。一般的なツイストドリルを例に、ドリル各部の名称とそれぞれの働きをご紹介します。

・全長

ドリルの構成部位すべての長さが全長です。

・シャンク

ドリルを工作機械やホルダに取り付ける際に、挟み込む部分がシャンクです。形状からストレートシャンクやテーパシャンクなどの種類に分けられ、取り付ける機械に適した規格を使用する必要があります。

全長からシャンクを引いた部分は「ボディ」と呼ばれます。

・リード

ドリルの溝を1周した時の長さがリードです。溝のねじれ具合は「リード角」と呼ばれ、リード角が大きいほど切れ味が鋭く、リード角が小さいほど刃先の剛性が高くなります。

・溝長

溝長は、切りくずを排出するための溝が入っている部分の長さです。溝穴の長さが、ドリルで穴あけできる深さとなります。

・先端角

ドリルの先端部の角度は「先端角」と呼ばれます。118°が一般的ですが、角度によってドリルの切れ味や強度が異なるため、用途や素材に応じた使い分けが重要です。先端角が小さいほど刃先が脆くなるものの、切れ味は鋭くなります。反対に、先端角が大きいと強度は高くなりますが、食い付き性が落ちます。

・切れ刃

加工物を切削する刃の部分です。切れ刃が被削材に接する角度は「すくい角」、接することなく追従する箇所の角度は「逃げ角」と呼ばれます。すくい角と逃げ角は、ドリルの切削速度・切削抵抗に関わります。

・チゼルエッジ

先端部にある芯部がチゼルエッジです。切れ刃ではないので、加工物を切削することができません。被削材の変形や加工精度の悪化につながるため、通常は「シンニング」と呼ばれる溝を付け、チゼルエッジを薄くします。

・マージン

ドリルの先端から外周にかけ、ねじれの最も外側を縁取りしている箇所が「マージン」です。先端部で穴の直径を決定し、外周ではドリルの直進性を維持するガイドの役割を持ちます。

マージンの幅が太いほど穴の真円度は向上しますが、摩擦が発生しやすくなるため、工具寿命に影響を与える恐れがあります。

ドリルによる加工方法

ドリルは押し付ける力と回転する力を加えることによって穴あけを行います。これは、どのような加工をする場合も基本的には同様です。しかし、ドリルによる穴あけ加工の方法にはいくつか種類があるため、それに応じてドリルを選ぶ必要があります。

・浅穴あけ加工

一般的な浅穴の加工では、ソリッドドリリングと呼ばれる無垢の穴あけ加工が行われます。被削材に対し、ツイストドリルによって穴をあけていく方法です。

・大径穴あけ加工

大径の穴あけでは、トレパニング加工やカウンターボウリングなどの加工が行われます。トレパニング加工は、穴の中心に円柱状のコアを残すよう切削していく加工方法で「トレパニングドリル」と呼ばれるドリルが用いられます。
カウンターボウリングは、すでにある穴を大きく加工していく方法です。「スローアウェイドリル」がよく用いられますが、高精度の加工は難しいというデメリットがあります。

・深穴加工

深穴加工には「ロングドリル」や「スーパーロングドリル」など、溝長の大きなドリルを使います。切りくずの排出性が求められるため、切削速度や送りに注意する必要があります。

浅穴加工や深穴加工において、精度の高い穴あけを行うには、シンニング加工や切削条件の設定が重要です。また、センター穴をあけておくことも穴曲がりの防止対策として有効です。

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ドリルの種類

ドリルは素材や構造、形状によってさまざまな種類に分けられます。加工精度を高めるためには、使用用途ごとに適切な種類を使用することが重要です。一般的なドリルの分類をご紹介します。

・素材や構造による分類

一般的なツイストドリルの中でも材質や構造、形状によってさまざまな種類が存在します。例えば、ドリルの材質にはコスト面で優れる「ハイス」や耐摩耗性・耐溶着性に優れる「超硬」が使われ、構造はソリッド・ロウ付け・スローアウェイの3種類に分けられます。また、ドリルを固定するシャンクの形状や刃の形状もいくつか種類があるため、適切な材質や構造、形状のものを選ぶことが、ドリルを使用するうえでは重要です。

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・使用用途による分類

ドリルは、使用用途によって形状が異なります。例えば、バニシングドリルなら一度の加工で切削による穴加工と加工面を滑らかにするバニシング加工が可能です。またセンタードリルのように、本来の目的はセンター穴をあけることですが、面取りや薄板への穴あけに用いられるドリルもあります。

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「センタードリル」の記事へ

ドリルを使った穴あけ加工のポイント

ドリルを使って穴あけ加工を行う際に、穴が曲がってしまうことがあります。これは、ドリルが被削材に食い付く際にブレや曲がりが発生するのが主な原因です。
食い付き精度を向上し、ブレや曲がりを防ぐために、センター穴加工を行っておきましょう。剛性が高く、芯ズレが発生しにくいドリルを選ぶことも重要です。

また、加工中に切りくずが詰まってしまうと、ブレや品質の低下、工具の破損などが発生する恐れがあります。被削材や穴の大きさ、深さなどを踏まえてドリルを使用し、最適な切削条件を設定することを心がけましょう。

ドリルは用途に応じて使い分けよう

ドリルにはさまざまな種類があり、サイズや形状も細かく分類されています。高精度な加工を行うには、用途に応じた最適なドリルを選定し使い分けることが重要です。行う作業に応じたドリルを複数揃えておくと、作業品質の向上にもつなげることができるでしょう。