- ドリルの母材の種類
- -ハイスドリル
- -超硬ドリル
- ドリルの構造の種類
- -ソリッドドリル
- -超硬ロウ付ドリル
- -スローアウェイドリル
- シャンクの形状と種類
- -ストレートシャンクドリル
- -テーパシャンクドリル
- ドリル部分の形状の種類
- -コアドリル
- -テーパピンドリル
- -段付きドリル
- -油穴付きドリル
- -ねじれ角による違い
- -ボディの長さ
- 多くの種類があるドリルは多彩な用途で使用できる
ドリルの種類にはどのようなものがある?素材や形状による種類と特徴とは

穴明け工具の代表的存在であり一般的にも身近なドリルは、多彩な場面で活躍しています。
そんなドリルですが、母材や形状などによって、どのような種類に分けられるのでしょうか。
この記事では、ドリルの種類とそれぞれの用途について詳しくご紹介します。
ドリルの母材の種類
ドリルに使われる母材には大きく分けて2つの種類があります。ここでは、母材によるドリル刃の特徴をご紹介します。
・ハイスドリル
ハイスドリルは、高速度工具鋼(HSS)で作られたドリルです。近年では一般的なハイス鋼にコバルトやバナジウムを混合することで、耐熱性と耐摩耗性を高めたものも増えています。 超硬合金に比べると粘りがあって折れにくく、コストパフォーマンスに優れるため、ボール盤で行われる加工では現在でも多用されています。 また、表面処理により特性が異なるのもハイスドリルの特徴です。 表面処理がないもののほか、耐食性に優れた四三酸化鉄皮膜処理や、耐食性や耐摩耗性に優れ、熱が発生しにくいため工具寿命を長くできるTiN処理(チタンコーティング)、「ホモ処理」と呼ばれ強固な皮膜で耐久性を高める水蒸気被膜処理などがあります。
・超硬ドリル
ハイス鋼よりさらに硬い、超硬合金を使用したドリルを超硬ドリルと呼びます。超硬合金とは、炭化タングステンにコバルトやニッケルを加えて焼結したものです。 高温時の硬度低下が少ないため精密加工を得意とし、耐摩耗性・耐溶着性にも優れます。ただし折れや欠けが発生しやすくコストが高くなるため、被削材に応じてハイスドリルと使い分けることが多いです。
ドリルの構造の種類
ドリルは構造を見てみても、全体が一体型のもの、刃の部分だけ超硬をロウ付けしたもの、刃を交換できる構造となっているものなど種類が分かれ、それぞれ一長一短があります。
・ソリッドドリル
根本から刃先まで一体のものがソリッドドリルで、ムクドリルとも呼ばれます。ムクは無垢材と同義で、1つの材料から削り出し成形したという意味です。 最も普及しているドリルで、ハイス、超硬ともに大半はこの構造となっています。
・ロウ付けドリル
超硬合金やダイヤモンド、サーメットなどの超硬質材料を、切れ刃だけに付けたものを付刃ドリルと呼びます。付刃ドリルは、先端2枚の切れ刃部分に超硬合金をロウ付けすることでコストを抑えているのが特徴です。 付刃ドリルの中でも先端部分のみ超硬合金となっているものは、先ムクドリルと呼ばれます。
・スローアウェイドリル
スローアウェイドリルは切れ刃部分(インサート)を交換することができるドリルです。そのため、刃先交換式ドリルとも呼ばれています。 幅広い刃部材料から使用するものを選ぶことができ、被削材や切削条件に合わせて対応できるほか、刃先が摩耗してもインサートを交換するだけで繰り返し使用できる点などが、スローアウェイドリルの大きなメリットです。
シャンクの形状の種類
ドリルをM/Cやボール盤、電動ドリル、電動ドライバーで使う際は、刃の柄の部分を工具保持具に固定する必要があります。 この柄の部分をシャンクと呼び、まっすぐなものや六角軸などさまざまなタイプがありますが、ここでは鉄工用ドリルに多く採用されているストレートシャンクとテーパシャンクについてご紹介します。

・ストレートシャンクドリル
シャンクが一定の円筒形になっているものがストレートシャンクで、刃部とシャンクが同じ径になっていることが特徴です。 ボール盤等でシャンクを固定する三つ爪のドリルチャックは最大サイズでも10mmと13mmのものしか固定できませんが、M/C等では主に保持具としてコレットチャックを用いるため多種のコレットを準備することで様々なサイズに対応できます。

・テーパシャンクドリル
刃部とシャンクの境目からシャンク後端にかけて細くなっていく形状のものが、テーパシャンクドリルです。 正式にはモールステーパシャンクという名称で、装着に独特の方法が必要になりますが、ホールド性に優れフレが少なく精密加工に向いています。主に旋盤や大型のボール盤などで使われることが多いです。
ドリル部分の形状の種類
ドリルは形状による分類もされています。ここでは、それぞれの形状によるドリルの特徴をご紹介します。

・コアドリル
コアドリルは円筒状の穴あけ作業をするための工具です。板材などに適したサイズの穴を抜く場合に使われます。 センタリングのための小さなドリルや軸がないものもあり、そのようなタイプは切削開始時のブレが大きいため、しっかりと固定する必要があります。
・テーパピンドリル
テーパピンドリルは刃部がテーパ状になっており、穴あけとテーパ加工を同時に行うできるドリルです。
・段付きドリル
先端側の刃が細い径、シャンク側に一段太い刃径を備えた、2段階の刃径を持つのが段付きドリルです。段付き穴や面取りの加工を同時に行うことができます。
・油穴付きドリル
切削油を工具内部に通し刃先へ供給できるドリルが油穴付きドリルです。 切削油が刃先に届くので、深穴加工時においても切削時の発熱を抑え、切り屑の排出をスムーズにしながらの切削が可能です。しかし、性能を発揮するには切削油の射出機能を持つ専用の機械を使用しなければいけません。

ツイストドリル
溝が軸に対して右ねじれ、または左ねじれになっているドリル。

ストレートドリル
溝がねじれていないドリル。
ねじれ角が小さければ芯厚が多く取れるため剛性が高くなるほか、切削油が刃先まで届きやすく、反対にねじれ角が大きければ切れ刃が鋭利になり切削抵抗は小さくなるので、切り屑の排出性も高まります。
・刃長(溝長)について
- スタブドリル
- レギュラードリル
- ロングドリル
ドリルは長さによっても呼び方や使い方が変わります。長さに明確な基準はありませんが、「刃長(溝長)の長さ(L)/直径(D)」で長さを区別するのが一般的です。 L/Dが2~3のものはスタブドリル、4~5はレギュラードリル、5以上はロングドリルと分類され、中でも10を超えるものはスーパーロングドリルと呼ばれることもあります。
多くの種類があるドリルは多彩な用途で使用できる
ドリルには母材や構造、形状などでさまざまな種類に分けられます。加工の条件に適したものを選定し使うことで、より穴あけの作業効率を向上させることができるため、それぞれの違いを把握し、用途に応じた種類を選ぶことが大切です。