超硬ドリルの特徴は?メリットやデメリット、切削条件など詳しく解説

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超硬ドリルの特徴は?メリットやデメリット、切削条件など詳しく解説

穴あけ加工に使用されるドリルは、数ある切削工具の中でも代表的な存在といえるでしょう。
ドリルは刃の形状の違いなどでさまざまな種類がありますが、工業用で使用されるドリルは超硬ドリルとハイスドリルの2種類に大きく分けることができます。
今回はその中でも、超硬ドリルの特徴についてご紹介していきます。

超硬ドリルとは

「超硬」とは、炭化タングステンや炭化チタンといった金属炭化物の粉末に、コバルトなどを加えて焼結して作られた合金を指します。材料の強さの尺度となるヤング率は鉄の3倍あり、HRAは90前後になるなど、名前の通り非常に硬いことが特徴です。
超硬ドリルは鋼を母材とするハイス(高速度鋼)よりも硬度が高いため、高速な切削加工が行えるほか、精密な加工が必要な切削にも向いています。

超硬ドリルのメリット

ドリルに使われる主な母材は超硬とハイスの2種類があり、これらを使ったドリルはそれぞれ、超硬ドリルとハイスドリルと呼ばれます。 超硬ドリルはハイスドリルに比べ、どのようなメリットがあるのでしょうか。

・高温硬度特性が高い

超硬ドリルは高温硬度特性が高いため、高温になってもドリルの硬度低下が少なく、高速な切削が可能で、高い作業効率で加工することができます。 また、耐摩耗性も高く変形による工具欠損が起こりづらいので、工具寿命はハイスドリルより長いです。工具寿命の長さは経済的な面だけでなく、工具交換の時間も節約できるため作業効率面でのメリットも高めています。

・剛性がある

超硬ドリルは剛性に優れています。切削の際にドリル自体が変形して穴が曲がったり拡大したりするのを抑えるため、高精度な加工が可能です。

・耐溶着性が高い

切削加工を行うと大きな摩擦熱が生じ、このときにドリルと被加工物の間に切り屑が挟まるなどの要因で圧力が一点に集中すると、被加工物が溶解してしまうことがあります。 溶けた被加工物が工具に付着し固まってしまった状態を「溶着」と呼びますが、これは加工精度の悪化や工具欠損の原因の一つです。
超硬ドリルは耐溶着性が高く又コーティングも様々な種類が存在し、仕上げ面を良好にでき加工精度を上げられるという点も大きなメリットとなります。

超硬ドリルのデメリット

多くのメリットを持つ超硬ドリルですが、デメリットもいくつかあります。 まず、超硬ドリルはハイスドリルに比べて靭性が低いため、靭性破壊が起こりやすいです。靭性破壊とは塑性変形がほとんど起こらないまま破壊に至る現象のことで、加工時の穴の曲がりが抑えられるので高精度な加工は行えますが、工具保持力が弱くシャンクがスリップした場合などにはチッピングや欠損、折損のような損傷も起こりやすくなります。
また、超硬素材に含まれるタングステンは希少金属なので、超硬ドリルはハイスドリルよりも購入コストが高いです。 ただし、高速な切削が可能で工具寿命も長いため、適切に使用した場合は、切削長あたりのコストとしてみるとハイスより安価になる場合も少なくありません。

超硬ドリルの切削条件

切削条件とは、工具の特徴を最大限生かして適切に切削を行う際の条件です。 切削速度や回転数、比切削抵抗などが条件に当たりますが、それぞれドリルの径や種類、被加工物の材質などによって異なります。一般的には、ドリルのカタログに推奨される切削条件が記載されているため、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
ただし、切削条件はあくまで目安であり、被加工物の材質や切削を行う場所の環境、切り屑の排出など、そのときの状況を考慮して都度調整する必要があります。

超硬ドリルの使い方

超硬ドリルは一般鋼やステンレス鋼はもとよりインコネルなどの耐熱合金、難削材などの硬度が高目で、ハイスドリルでは削れないような硬い素材の加工に向いています。
しかし、ドリルは切れ刃の形状に応じて用途が異なるため、刃先の形状や長さ、ねじれ角を確認したうえで、最適なものを選ぶことも大切です。刃の形状や長さは穴の大きさや深さ、加工できる素材の種類、加工の精度に、ねじれ角は切削抵抗やドリルの強度、切り屑の排出性、切削油の供給効率などに深く関わります。
また、硬度の高い素材を加工する場合や深穴加工を行う際はドリルにシンニングを行い、穴あけ効率や工具寿命を向上させるのも良い方法です。 シンニングとは、ドリルの心厚部の切れ刃を形成する研磨のことで、X形・XR形・S形・N形などの種類があり、それぞれスラスト荷重低減や食いつき向上、切削抵抗の低減などの効果が得られます。

超硬ドリルは高精度な穴あけができ利便性が高い

超硬ドリルはハイスドリルに比べて長寿命で高精度な加工が行えるため、高速かつ高精度な穴あけ加工が望まれる近年、需要が高まっています。 導入コストこそ高いものの、長く使えるため切削長あたりのコストが低減され、最終的な運用コストはハイスより低くなる点も大きなメリットです。
又、再研磨や再コーティングにより再使用が出来ることも魅力です。 超硬ドリルを効率よく安全に使うためには、加工物や用途に応じて適切なドリルを選ぶことが大切だということを押さえておきましょう。