ダイキャストとは? 特徴を知って適切な加工選びに役立てよう

ダイキャストとは? 特徴を知って適切な加工選びに役立てよう

溶かした金属を型に流し込み、目的の形状に仕上げる「鋳造」は、人類が古くから利用している金属加工技術です。鋳造と関係する言葉にダイキャスト(ダイカスト)がありますが、具体的にどのような加工なのでしょうか。
ここでは、ダイキャストの概要や鋳造との違い、ダイキャストのメリット・デメリットなどをご紹介します。

ダイキャストとは

ダイキャスト(ダイカスト)とは、高温に熱して液体状にした非鉄金属を、圧力をかけながら金型に流し込む加工方法のことです。材料にはアルミニウム(Al)や亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)といった非鉄金属を使うのが一般的ですが、銅合金や鉛合金が使われることもあります。
中でも、軽量で熱伝導率や耐食性にも優れている、アルミダイキャストの生産数が特に多いです。細かな形状を製造する際は、加工性が高く高精度な部品を作りやすい亜鉛ダイキャストが使われることもあります。
複雑な形状を高精度に製造できる自由度の高さが特徴で、自動車部品や家電、コピー機、釣り具、カメラ、ミニカーなど、
産業用機器から玩具まで、幅広いものづくりのシーンでダイキャストが活躍しています。

ダイキャストと鋳造の違い

ダイキャストは、金型に溶かした金属を流し込んで目的の形状に仕上げる「鋳造」の一種です。鋳造を発展させた加工方法がダイキャストということができます。
2つの大きな違いは、金属を金型に流し込む方法です。
前述のとおり、ダイキャストは溶かした金属に圧力をかけながら金型に流し込むことで製品を作ります。一方で、鋳造は溶かした金属を金型に流し込み、冷やし固めることで製品を作る加工法です。
大きな違いは圧力をかけるかどうかですが、それによって完成品の精度や鋳肌の滑らかさなどが変わります。
また、ダイキャストは金属製の金型を使用しますが、鋳造は砂型を使用するのが一般的という点も異なります。そのため、初期コストは鋳造の方が安くなる傾向にあります。

ダイキャストのメリット

ダイキャストは、溶かした金属を冷やし固める一般的な鋳造にはないメリットを持っています。ダイキャストで部品などの製造を行うメリットは、以下のとおりです。

・寸法精度が良い

金属を金型に圧入するため、ダイキャストは一般的な鋳造に比べて高い寸法精度を得られます。表面の滑らかさに優れているのもメリットです。
ダイキャスト加工の後、継ぎ目のバリ取りなどを行うだけで製品として完成する場合もあります。
また、メッキやアルマイト、塗装など、用途に合わせてさまざまな表面処理を行うことも可能です。

・生産性に優れる

溶かした金属を金型に圧入するという工程だけで、複雑な形状の製品を仕上げられるのもメリットです。工数が少なく大量生産に適しているため、製造コストを抑えられます。
また、金型を使うため加工の自由度が高く、板金より複雑な三次元形状を作ることができます。素材を切ったり、削ったりすることがないので、切削工具より歩留まりが良い点も特徴です。
加工の自由度は高いですが、金属を型に圧入するという加工方法なので、パイプや中空形状の部品を作ることはできません。内側に出っ張ったアンダー形状の製造にも不向きです。

ダイキャストのデメリット

複雑な形状を作りやすく大量生産にも向くダイキャストですが、デメリットもいくつかあります。メリット・デメリットの両方を理解したうえで、適切な加工方法を選定することが大切です。
ダイキャストのデメリットも確認しておきましょう。

・同じ材料でも強度が低い

圧力をかけながら金属を流し込む際に、周囲の空気や蒸発した離型剤などが製品に取り込まれることがあります。鋳巣(製品内部のガス)が発生しやすく、一般的な鋳造に比べると完成品の強度が劣る点は、ダイキャストのデメリットのひとつです。
そのため、高い強度が求められる製品の加工には適していません。

・初期コストがかかる

ダイキャストを行う際は、金属の塊から専用の金型を設計・鋳造する必要があります。生産設備そのものの初期コストもかかるため、1点ものの試作品や少量生産品の加工だと、コストが見合いません。
また、金型が寿命を迎えた時に同じものを再度製作することになる点もデメリットです。流し込む素材次第では3万ショット程度で金型が寿命を迎えるとされており、トータルのコストはかさみやすい傾向にあります。

目的に合わせた加工方法を選定しよう

ダイキャストは、複雑な形状を高精度に、大量に作るのに適した加工法です。日常生活の中でも、自動車部品や家電など、さまざまな場面でダイキャストによって作られた部品が活躍しています。
一方で、鋳造に比べると完成品の強度は低く、コストがかかるため少量生産にも不向きです。それらのデメリットを踏まえたうえで、鋳造や切削といった他の加工方法と比較・検討する必要があります。
ダイキャストの特性を理解して、適切な加工方法を選定しましょう。

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