金属加工の「バリ」とは?発生原因やバリ取りの方法、抑制のコツを解説

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金属加工の「バリ」とは?発生原因やバリ取りの方法、抑制のコツを解説

素材加工において、「バリ」の発生にどう対処するかは重要です。中でも、金属加工におけるバリの対応や処理は大きな課題となります。
しかし、バリとは具体的にどのようなもので、バリによってどのような影響があるのでしょうか。この記事ではバリのメカニズムとその除去方法、抑制方法などを解説します。

金属加工における「バリ」とは?

バリとは、金属や樹脂、木材などの素材を加工した際に発生する出っ張りやトゲのことです。「かえり」または「かえし」と呼ばれることもあります。

JISでは、バリのことを「かどのエッジにおける、幾何学的な形状の外側の残留物で、機械加工又は成形工程における部品上の残留物」と定義しています。加工の残留物と表現されている通り、部品には必要ない余計な部分です。
このバリを除去するための工程が「バリ取り」です。バリ取りが必要な箇所には、設計図や作業指示書において「バリなきこと」といった指示がされます。ただし、「バリなきこと」では、バリをどこまで、どのように除去すれば良いのかは指定されていません。トラブルを避けるために、近年は細かな指示やバリ取りに関する規格を設けるケースが増えているようです。

また、バリは被削材を加工する際で発生しますが、どのような加工法で発生したかによって、呼び方が異なります。バリの呼び方の一例としては、「切削バリ」「研削バリ」「せん断バリ」「鋳造バリ」「成形バリ」「塑性変形バリ」などが挙げられます。

バリが発生する原因

バリが発生する原因は、加工方法によって異なります。バリが発生するメカニズムを、加工方法ごとに3つご紹介します。

・切削や研削加工によるバリ

切削加工や研削加工では、刃物が加工物に食い込む際に塑性変形(元に戻らない変形)が発生し、塑性変形によって押し出された部位がバリとなります。
切削加工によってできる切削バリは、工具で切り込んだ際に発生する「ポアソンバリ」や、残留した切り屑の一部である「ロールオーバーバリ(引きちぎりバリ)」など、生成方法でさらに細かく分けられています。

・せん断やプレス加工によるバリ

せん断やプレス加工では、素材が引きちぎられる際に、素材の一部がダイやパンチの隙間(クリアランス)に移動することでバリが発生します。

・鋳造加工によるバリ

鋳造加工やプラスチック成型などでは、金型の隙間に材料が流れ込むことでバリが発生します。
切削や研削、せん断などの場合は、塑性変形しやすい素材ほどバリが発生する確率は高まります。一方、鋳造加工ではバリの発生しやすさに素材は関係ありません。

バリによって考えられるトラブル

バリ取りを行わずにバリを残したままだと、さまざまなトラブルを引き起こす恐れがあります。バリによって引き起こされるトラブルの一例としては、以下の3つが考えられます。

・精度の低下

正しく加工を行ったとしても、バリがあると寸法が正確になりません。加工精度が低下し、組立時の嵌合(かんごう)が悪くなったり、外形寸法が基準値に収まらなかったりする原因になります。

・製品の摩耗や故障を早める

摺動部や回転部にバリがあると、その部分の動きが悪くなります。電気製品の場合は、バリが原因となってショートなどの電気的トラブルが発生しかねません。
また、バリが別の部品に当たったり、オイルに流されたバリが外れて流路を塞いだりすることで、製品の摩耗・劣化につながる可能性もあります。

・作業者や使用者のけが

バリは鋭利で尖った形をしていることも多いです。特に、金属素材のバリは非常に鋭いため、そのまま放置すると、作業者や使用者がバリでけがをする恐れがあります。作業者がけがをして労災になったり、損害賠償責任を問われたりするケースも考えられるため、注意が必要です。

バリ取りの方法

バリはさまざまなトラブルの原因となるため、バリ取りの作業はほぼ例外なく行う必要があります。
バリ取りの方法は、いくつかの種類に分けられ、いずれの方法も特徴が異なります。被削材やバリの種類、発生箇所などに応じて使い分けることが重要です。ここでは、バリ取りの方法の種類と特徴をご紹介します。

・手工具を使ったバリ取り

バリ取りは、手工具を使って行うことができます。やすりやスクレーパー、ロータリーバー、研磨シート、研磨ディスク、研磨ベルトなど、バリ取り用の専用刃物などが使われます。
バリに直接作用するため、確実に除去できるのがメリットです。ただし、手作業で正確な分、工数がかかります。

・専門機によるバリ取り

バレル研磨やショットブラストなど、砥粒をぶつけてバリを除去する方法です。バレル研磨は研磨工程も兼ねるため工数削減につながり、ショットブラストは加工範囲を調整しやすいといったメリットがあります。
また、専門機を使った手法には、バリだけを燃焼させる熱的加工法や、薬品によって溶融する化学加工法などもあります。

・機械加工によるバリ取り

バリ部分を除去するようプログラムしたマシニングセンタや複合旋盤を使い、切削加工によってバリ取りを行う方法もあります。バリ取り専用のカッター面取りツール、ブラシなどを機械に取り付けてバリ取りを行います。バリ取りのために新たな設備投資を行う必要がない点がメリットです。
また、ブラシを使用する場合は、二次バリの発生を抑える効果が期待できます。これは、ブラシはカッターや砥石といった工具に比べて柔らかく、被削材を傷める可能性が低いためです。
さびや汚れを除去して、表面素材や形状の異なるさまざまなブラシがあるため、バリの大きさや発生している場所、加工物の素材などを加味して選定する必要があります。

・ロボットによるバリ取り

近年はロボット(ロボットアーム)を使ってバリ取りを自動化することもあります。大型の設備が不要で、比較的低コストでバリ取りを自動化できるのがメリットです。
具体的な手法としては、ロボットにバリ取り用の工具を取り付ける方法や、ロボットに被削材を持たせる方法などが挙げられます。

バリ取りを行う際の注意点

バリ取りにはさまざまな方法がありますが、いずれの場合も目的は「不要な部分を除去すること」です。バリが発生している部分以外は、傷をつけないように注意する必要があります。
金属や樹脂、木材といった材質ごとの強度を踏まえて、最適なバリ取りの方法を選定することが重要です。

また、バリ取り作業中に、作業者がけがをする恐れも捨てきれません。保護具を着用する、バリ取り用の設備を整えるなど、安全に作業が行える環境を整えることもポイントです。

バリ取りは自動化するのがおすすめ

バリは使用する工具の摩耗状態などによって形状などが変化するため、手作業で対応するのが一般的でした。しかし、手作業でのバリ取りは加工に時間がかかり、作業者の経験や技術力によって品質にばらつきも生じます。
バリ取りを効率的に行い、製品の品質を安定させたい場合は、工作機械や専用機を活用して、バリ取りを自動化するのがおすすめです。
また、バリ取りを自動化すれば、バリ取りに従事していた作業者を他の作業に回すこともできます。人材を有効活用できる点も、バリ取りを自動化するメリットのひとつです。

バリを抑制する方法

バリの発生を完全になくすことは難しいものの、加工の段階でバリを小さくしたり、除去しやすくしたりすることは可能です。バリを抑制できれば、バリ取りにかかるコストや時間、手間を減らせます。
加工時にバリの発生を抑える方法としては、以下のような工夫が挙げられます。

・適切な素材を選定する

加工時に塑性変形を伴うプレス加工や切削加工、研磨加工は、バリが発生しやすい傾向にあります。これらの加工の際は塑性変形しづらい素材を選定すれば、バリの発生を抑制できます。
ただし、塑性変形しづらい素材は加工が難しくなりがちです。バリの抑制を優先して素材が決定されるケースは少なく、解決策としては限定的といえます。

・加工面の形状を変える

バリは鋭角のエッジで大きくなりやすいという特徴があるため、加工面を鈍角化することで発生が抑えられます。
Rをつける、面取りをする、加工部を平面にするなどの加工が、バリ発生の抑制に有効です。

・切れ味や強度に優れた工具を使用する

切れ味が良い工具の選定も、バリの発生を抑えることにつながります。刃先が摩耗すると切れ味が落ちてバリが出やすくなるので、適切なタイミングでの工具交換が重要です。

また、強度に優れていて刃先を鋭利に保ちやすい工具の使用も、バリの抑制につながります。

・切削条件を変える

切削加工では、切削条件を変えてバリを小さくすることも可能です。回転工具の送り方や向きによっても、バリの大きさや発生する向きは変わります。
切り込み量や送り速度を下げるのも有効です。塑性変形が小さくなるため、バリの発生を抑えられます。

・加工の順番を工夫する

加工の順番や設計を工夫するのも良いでしょう。例えば、一次加工でバリが発生する部分を二次加工で研磨するという順番で加工を行えば、バリ取りの工程を別に設ける必要はありません。「指示なき角部は面取りを行うこと」などと、面取りの工程を設けておくのも有効です。

また、作業者や使用者に影響を与えないように、バリの発生する部分が製品の内側になるように設計する方法も考えられます。

バリ取りは製品の品質を左右する重要な工程

金属やプラスチックを加工する際に発生するバリは、製品の品質に大きく影響します。バリを除去するバリ取りの工程は、加工品質の向上や、作業者・使用者のけがを防ぐ意味でも重要な仕上げ加工です。

バリ取りを自動化したり、バリそのものの発生を極力減らす工夫を取り入れたりすれば、加工にかかるコストを削減できる可能性もあります。適切な方法でバリ取りを行い、加工物にバリを残さないように工夫しましょう。

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