ザグリ加工とは? 加工の前に確認したいメリット・デメリット

ザグリ加工とは? 加工の前に確認したいメリット・デメリット

製造業や建築現場、DIYなど、ねじ・ボルトはさまざまな分野で使われており、ものづくりに欠かせない部品となっています。製品を作るうえで重要な役割を持つねじやボルト、それらの緩みを防止する座金を安定させる目的で行われるのが「ザグリ加工」です。
身近な場所でも多く行われているザグリ加工ですが、具体的にどのようなものなのでしょうか。
ここでは、ザグリ加工の概要や加工方法、加工を行うメリット・デメリットなどをご紹介します。

ザグリ加工とは

ザグリ加工とは、ねじやボルトを締める時に、製品の表面から頭が出てしまうのを防ぐために段を設ける穴加工のことです。「座ぐり」と表記されることもあります。
一般的には、六角穴付きボルトを使う場所に設けられるケースが多いです。
穴の深さや形状に応じて、座金部分だけを隠すように浅い穴を掘る「ザグリ」や、ボルトの頭全体を隠せる深い穴を掘る「深ザグリ」、皿ねじの頭が出ないように円錐状の穴を掘る「皿ザグリ(皿穴加工)」の3種類に大きく分けられます。
特に、皿ねじの頭は製品の表面から出てはいけません。皿ねじを用いる際は、皿ザグリ加工は必須の工程といえます。
3つの中では深ザグリが主流となっていて、単に「ザグリ」といった時は深ザグリを指すことが一般的です。

ザグリ加工を行う方法

ねじやボルトの頭を隠すザグリ加工ですが、やり方は大きく以下の2種類に分けられます。

・ドリルでボルト用の穴をあけた後に、エンドミルでザグリを加工する方法
・切れ刃が2段になっている段付きドリル(ザグリドリル/ドリル付き沈めスライス)を使用する方法

段付きドリルを使う方法は、穴あけとザグリ加工を同時に行えるのがメリットです。工具を切り替える手間がかからないので、作業工数を削減できます。
ただし、段付きドリルは工具と同じ径のザグリしか加工できません。加工寸法が限られることから、さまざまな径のザグリを作るには複数の専用工具が必要でコストがかさみます。

ザグリ加工を行うメリット

ザグリを設けるには、穴をあけた後にエンドミルで加工を行うか、ザグリ加工専用の工具を用意することになります。加工の手間やコストが増えてしまいますが、どのようなメリットを得られるのでしょうか。
ザグリ加工を行う主なメリットとしては、以下の3点が挙げられます。

・ねじの緩みの防止

ねじやボルトは、締め付けた時に頭部と材料部分の接触面積が大きいほど、締結力が高まるのが特徴です。
ただし、ドリルで穴をあけただけの材料の表面には、細かな凹凸があります。そのままねじやボルトを締め付けても緩みやすく、製品の不備や故障につながる恐れがあり危険です。
ザグリ加工を行い材料の表面を滑らかにすると、ねじやボルトの締結力を高めることができます。取り付けの信頼性が高まり、製品の安定性向上に寄与するのがメリットです。

・製品の安全性向上

ねじやボルトの頭が製品の表面から飛び出していると、作業者や製品購入者のけがにつながりかねません。ザグリ加工によって段を設け、頭を覆い隠すことで、意図しないけがや事故を防ぐことが可能です。
また、ねじやボルトが目立ちにくくなるため、製品の美観の向上にもつながります。

・干渉の防止

ねじやボルトの頭が飛び出していると、製品を設計する際に頭が他の部品に干渉したり、他のボルトの締め付け作業が行いにくくなったりする恐れもあります。
ザグリ加工によって頭を隠すことで、頭の寸法を無視できるようになるため、設計や加工の自由度が高まる点もメリットです。

ザグリ加工を行う時の注意点

メリットの多いザグリ加工ですが、注意したい点もいくつかあります。
通常、ザグリを作るには穴あけとザグリ加工の2工程を要します。段付きドリルを使うことで作業工数の削減や品質の向上を見込めるとはいえ、その場合は専用工具を用意しなければいけません。
ザグリを大量に設けた結果、コストや作業工数がかさんでしまう恐れもあります。製品の仕様上、頭が飛び出しても問題ない部分はザグリ加工を省略する、1つの段付きドリルでキリ穴とザグリをあけられるように設計するといった工夫を行いましょう。
また、ザグリ加工を実施してボルトの頭を隠すと、一部の締結用工具が使えない点にも注意が必要です。例えば、レンチのようにボルトの頭を横からつかんで回す工具は、ザグリ加工を施した場合は使用できません。
締めたり、緩めたりする機会が多い場所にザグリ加工を施した結果、作業効率の低下につながる可能性があります。
ザグリ径を大きめに設定してソケットレンチで締める方法にする、ボルトをキャップスクリュー(六角穴付きボルト)に変更するといった対策も必須です。

ザグリ加工で製品の品質を高めよう

ねじやボルトの頭が出っ張るのを防げるザグリ加工は、締結力の向上や頭部の干渉防止、作業者または使用者のけがの予防など、さまざまなメリットを得られる加工です。
一方で、工数が増える、ボルトの締結に専用の工具が必要になるなど、デメリットもいくつか考えられます。
使用するボルトの種類や、製品の用途などに応じて、ザグリ加工の実施を検討することが大切です。

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