- 切削加工におけるクーラントの重要性
- クーラントホースの特徴
- -ホースの長さや形状を自由に調整できる
- -一度セットした形をキープできる
- -ノズルを取り換えられる
- -曲げてもホースの内径が変化しない
- クーラントホースの取り付け方のポイント
- -分離の可能性があるため必要に応じて固定する
- -振動で形状が変化する場合はクランプで対処
- -ホースの薬品耐性を確認
- クーラントを噴射せずに加工を行う方法
- -ドライ加工
- -セミドライ加工
- クーラントホースは適切に使用することが重要
切削加工に欠かせないクーラントホースの重要性。使用時のポイントを押さえよう

切削加工においては、加工時に発生する切削熱への対処にクーラント(切削油)が使われます。クーラントを効率的に供給するために、重要な役割を担っているのが「クーラントホース」です。
この記事では、クーラントホースの重要性や使用時のポイントなどをご紹介します。
切削加工におけるクーラントの重要性

切削加工における切削油の役割は、切削工具と被削材の滑りを良くする「潤滑」、切削熱を奪って冷やす「冷却」、切り粉を洗い流す「洗浄」の3つです。中でも、切削加工で発生する600~1000℃の切削熱を抑える役割が重視されることから、クーラントと呼ばれます。
加工中のクーラントの供給方法は、内部供給・外部供給の2つに大きく分けられます。
内部供給は、切削工具の内部を通して、切削面にクーラントを供給する方式です。高圧でクーラントを噴射でき、深穴や溝の加工にも適しています。
一方で、クーラント供給に対応した工具やツールホルダがないと、内部供給は行えません。ATCの場合は、工具内のクーラントを戻してから換装するため、工具の交換に時間がかかることもあります。
外部供給は、クーラントホースを使って噴射したクーラントを切削面にかける方式です。クーラントホースのノズルの向きは手動で自由に調整可能で、狙った部分にクーラントを供給できます。
被削材の変形や刃物への溶着などを防ぎ、加工の安定性を高めるためには、いずれかの方法でクーラントを加工部に確実に供給することが重要です。
クーラントホースの特徴

クーラントホースの使用によって、より効率的にクーラントを供給できるようになります。金属加工用のクーラントホースの特徴は、以下のとおりです。
・ホースの長さや形状を自由に調整できる
クーラントホースは、複数のホースパーツを連結させて使います。パーツは簡単に接続・切り離しできる構造になっていて、増減させて長さを自由に決めることが可能です。
連結部の角度や連結するパーツを変えれば、形状の調整を自由に行えるため、狙った場所にクーラントを供給できます。
・一度セットした形をキープできる
クーラントを噴射する際の圧力で、ホースの形状が変わらない点も特徴です。機械振動にも強く、一度セットした形状を保ちます。
・ノズルを取り換えられる
クーラントを噴射するノズルの形状が多く、加工に応じて流量・流形が選択できます。
加工の種類やクーラントの種類などに応じて使い分けることで、適切な冷却効果を得られます。
・曲げてもホースの内径が変化しない
クーラントホースは硬質のパーツでできているため、曲げてもホースの内径が変化しません。どのような形にしてもクーラントの流量は変化せず、設定した冷却効果を維持できます。
クーラントホースの取り付け方のポイント

クーラントホースの取り付け方によっては、効果が薄れてしまう場合もあります。加工の際は、以下のポイントに注意することが重要です。
・分離の可能性があるため必要に応じて固定する
クーラントホースは簡単に切り離し・接続ができる反面、クーラントの圧力やノズルの形状によっては分離する可能性があります。
分離を防ぐために、必要に応じてクランプを用いて固定しましょう。
・振動で形状が変化する場合はクランプで対処
基本的に一度決めた形状から変化することはないものの、ホースが長すぎる、可動部が摩耗している、工作機械の振動が大きいといった場合は、クーラントホースの形状が変わる可能性もあります。
形状が変わるときは、クランプで固定するなどの対処が必要です。
・ホースの薬品耐性を確認
クーラントホースは、耐熱性の上限や薬品耐性が公開されています。加工時のクーラント温度や、クーラントの成分を確認してからホースを選定することが重要です。
熱に強いステンレスホースの使用も、対策として考えられます。
クーラントを噴射せずに加工を行う方法

大量のクーラントを使用しないで行う加工方法として、ドライ加工とセミドライ加工の2種類が挙げられます。
クーラントを使った加工に加えて、それぞれの特徴も押さえておきましょう。
・ドライ加工
クーラントを全く使わない加工がドライ加工です。クーラントホースを用いて冷風を送る空冷方式も、ドライ加工に分類されます。
クーラントのメンテナンスや廃油処理、加工後の洗浄作業などが不要で、加工にかかる手間を減らせる点がメリットです。
ただし、空気中への放熱でしか冷却されないため、発熱と加工面の仕上がり、面粗さなどには注意が必要です。切削工具の消耗も、クーラントを使った加工に比べて早くなります。
・セミドライ加工
霧状にしたクーラントを噴射して行う加工がセミドライ加工です。少量のクーラントを使用することから、「微量の潤滑」という意味でMQL(Minimal Quantity Lubrication)とも呼ばれます。
使用するクーラントが少ないため、ポンプやタンクも小型化できる点がメリットです。
ただし、人体への影響を避けるために、オイルミストを吸引・除去する装置(オイルミストコレクタ)の使用が欠かせません。
クーラントホースは適切に使用することが重要
クーラントホースを使えば、クーラントを狙った場所に正確に供給できます。反対に、取り付け位置が不適切だったり、加工中に分離したりすると、クーラントの供給に問題が生じて、加工に影響を与える可能性もあります。
クーラントホースは、切削加工の効率を大きく左右することもある重要なものです。クーラントホースを適切に使用し、加工の効率と品質を高めましょう。