工具材質のサーメットとは? 特徴を知って切削工具を使い分けよう

工具材質のサーメットとは? 特徴を知って切削工具を使い分けよう

切削工具に使われる材質にはさまざまな種類がありますが、代表的な材質のひとつにサーメットが挙げられます。具体的に、サーメットはどのような特性を持ち、どんな加工に活用できるのでしょうか。
ここでは、サーメットの特徴や工具としてのメリット・デメリット、代表的な工具の材質などをご紹介します。

サーメットとは

サーメットとは、切削工具に使われる材質のひとつです。セラミック(ceramic)のように硬く、メタル(metal)のように粘り強いという意味で、2つを合わせてサーメット(cermet)と名付けられました。自然界には存在しない人工素材で、工具や機械部品などに広く使われています。

サーメットは超硬合金の代替素材として開発されたものですが、主成分は超硬合金と異なります。切削工具で使われる超硬合金は、WC(炭化タングステン)を主成分として、結合剤にはCo(コバルト)を用いています。一方、サーメットはTiC(炭化チタン)を主成分とし、結合剤にはNi(ニッケル)を使用しているのが特徴です。これは、TiCに対してはNi(ニッケル)の方が結合力を高くできるためです。

しかし、TiCとNiの組み合わせは、WCとCoの組み合わせほど結合力を出すことはできず、もろくなってしまうという欠点がありました。そこで、Mo(モリブテン)や窒化チタン(TiN)を加えて靭性を向上させた「TiC-TiN-Mo-Ni」が、現在のサーメットでは主流になっています。

サーメット工具の特徴

サーメットは、多くの切削工具に使われている材質です。具体的に、サーメットで作られた工具はどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、サーメットで作られた工具の特徴をご紹介します。

・硬度が高い

サーメットの主成分であるTiCは、超硬合金の主成分であるWCより硬いのが特徴です。サーメットで作られた切削工具なら、超硬合金だと加工が難しい硬度の高い難削材にも対応できます。
また、耐酸化性に優れていて摩耗しにくいため、工具寿命が長い点もメリットです。

・耐熱性に優れる

サーメットは耐熱性にも優れていて、高温でも硬度が低下しにくい素材です。切削熱による工具硬度低下が少なく、超硬合金の切削工具を使用するよりも高速切削が行えます。

・耐溶着性が高い

超硬合金に使われるWCは、鉄と反応して合金化しやすいという特性があります。超硬合金を切削工具として使用すると、刃先に被削材の材質が溶着して構成刃先が発生する可能性が高いです。
一方、サーメットは鉄との親和性が低い素材なので、構成刃先ができやすい鋼の加工においても高速切削が可能です。

・良好な仕上げ面

サーメットは耐溶着性や耐摩耗性が高いため、面粗さが良好です。切削距離が増しても面粗さの低下が緩やかで、長く安定した品質の加工が行えます。

サーメットの欠点

多くのメリットがあるサーメットですが、取り扱いに注意が必要な点もあります。サーメットの持つデメリットとしては、以下の点が挙げられます。

・衝撃に弱く刃先の欠けが起こりやすい

改善が続けられているものの、サーメットの靭性は超硬合金よりも低いです。機械的衝撃で欠けやすく、切削加工の条件によっては欠けが起こります。
欠けを防止するために、高送りや高切り込みは避け、小送り・小切り込みで使用する必要があります。

・刃先に熱がこもりやすい

サーメットの主成分であるTiCは、熱伝導率が低く熱容量も小さいため、刃先に熱がこもりやすいです。切削時に熱がたまり、空転時の急冷によって熱亀裂(欠け)が生じる恐れがあります。
旋削の断続切削やフライス加工にサーメットを適用する場合は、刃先の熱亀裂を回避するために、乾式切削をおすすめします。

サーメット以外の工具材質の一例

サーメット以外にも、切削工具はさまざまな材質を使って作られています。ここでは、代表的な工具材質の一例をご紹介します。

・炭素工具鋼

炭素を1.5%ほど含む鋼で、工具に使用するために開発された金属素材が炭素工具鋼です。タングステンやクロムを加えた合金工具鋼が主流となっていて、一般的な鋼より硬度が高く、耐摩耗性に優れているのが特徴です。
ただし耐熱性は低く、200~300℃で硬度低下するため高速切削には向きません。

・超硬合金

WCにCoを結合剤として加え、焼結して固めたものが超硬合金です。硬度や耐熱性、靭性のバランスが良く、切削工具に使われる材質の中では中間的な存在となっています。

・CBN焼結体

ダイヤモンドに次ぐ硬度を持つ材質で、人工ダイヤモンドとも呼ばれます。窒素とホウ素をベースにした化合物で、CBNは「立方晶窒化ホウ素」の略です。
耐熱温度が1300℃とダイヤモンドよりも高く、熱焼入れ鋼や耐熱合金の加工にも使用できます。

材質の特性を知って工具を使い分けよう

切削工具は、材質によって使用に適している条件が異なります。サーメットをはじめ、炭素工具鋼や超硬合金といった材質の特性を知って、工具を適切に使い分ける必要があります。
効率的な加工を行うために、工具材質ごとの特性にも目を向けてみてはいかがでしょうか。