アルミニウム合金の種類ごとの特性と加工時のポイント

MENU
MENU

アルミニウム合金の種類ごとの特性と加工時のポイント

アルミニウムについて、多くの人は最初に「軽い」というイメージが浮かぶのではないでしょうか。確かにアルミニウムは軽さが特徴の金属ですが、それ以外にも優れた特性を持ち、さまざまな場所で使われています。
今回は、アルミニウムの特性やアルミニウム合金の種類、加工方法などについてご紹介します。

アルミニウムの特性

アルミニウムが多くの場面で使われているのは、数々の優れた特性を備えているのが理由です。アルミニウムの持つ特性と、使われている分野の例をご紹介します。

・比重が軽い

アルミニウムの比重は2.7で、金属の中では非常に低いです。鉄が比重7.8、銅が比重8.9なので、比較すると約1/3の軽さということになります。
自動車やバイク、飛行機といった乗り物の部品、スマートフォン・タブレットといった持ち運びが前提の電子機器など、重たい金属を使いにくい場面で多く活躍しています。

・導電性が高い

アルミニウムは電気を通しやすいのも特徴で、送電線や圧着端子などに使われています。
導電性の高い金属としては銅も挙げられますが、同じ重さで比較した場合、アルミは銅の約2倍の電気を通します。

・熱伝導率が高い

アルミニウムは鉄の約3倍の熱伝導率を備えていて、熱を伝えやすい素材です。放熱性も高く、熱しやすく冷めやすいという特性を持っています。
この特性を活かして、エンジンパーツやLEDの放熱フィン、ヒートシンクなどに使われています。

・比強度が高い

アルミニウムは軽いだけでなく、強度にも優れています。比強度(密度あたりの引っ張り強さ)は一般鋼が5.4、銅が2.7ですが、アルミは11.5です。強度を確保しながら軽くできるため、構造用材料としても優れています。

・耐食性が高い

アルミニウムは空気に触れると安定した酸化皮膜を形成し、腐食を防止する性質があります。アルマイト処理によって人工的に酸化皮膜を作ることで、さらに防食効果を高められるのも特徴です。

・磁気を帯びない

アルミニウムは磁気を帯びない非磁性体なので、磁場の影響を受けません。船の磁気コンパスや磁気ディスクの部品など、磁気による影響が想定される場所で使われます。

・低温に強い

低温に強く、極低温でも靭性(粘り強さ)を維持できるので、割れや脆性破壊が起こりにくいという特徴も備えています。低温環境で使用する宇宙機器やLNGタンク材などの材料としても欠かせません。

・溶解温度が低い

アルミニウムの融点は約660℃と、金属の中ではかなり低いです。少ないエネルギーで溶かすことができるため、鋳造加工が容易に行えます。
また、リサイクル時も省エネルギーなので、コストや環境保護の観点でも優れています。

アルミニウム合金の種類ごとの特性

アルミニウムは優れた特性を持ちますが、純度が高くなるほど強度に劣ります。純粋なアルミニウムを用いる分野は少なく、他の物質を添加したアルミニウム合金を使うことがほとんどです。
アルミニウム合金は、加える元素の種類や配合から4桁の数字で分類されています。番手ごとの特性や用途は以下の通りです。

・1000番台(純アルミニウム)

純度99%以上のものが分類され、純アルミニウムと呼ばれます。A1100・A1050などが代表的です。番号の下2桁は純度を示し、A1100なら純度99%以上、A1050なら純度99.5%以上となります。
加工性や耐食性に優れますが強度は低く、粘り気があるのが特徴です。主に1円硬貨や電線、反射板の原料として使われています。

・2000番台(Al-Cu系合金)

A2017・A2024などが代表的で、A2017はジュラルミン、A2024は超ジュラルミンと呼ばれます。銅(Cu)を添加して強度を向上させているのが特徴で、切削加工に向く一方で耐食性には劣ります。航空機部品やねじ、歯車などが主な用途です。

・3000番台(Al-Mn系合金)

3000番台は、マンガン(Mn)を添加することで、耐食性を維持しながら強度を高めています。A3003が代表的です。マグネシウムを加えて、より強度を高めることもできます。

ただし、3000番台のアルミニウム合金が切削材料に使われることは、ほとんどありません。建材やアルミ缶、電球の口金といった用途で使われます。

・4000番台(Al-Si系合金)

シリコン(Si・ケイ素)を添加し、耐摩耗性や耐熱性を向上させています。A4032が代表的です。銅やマンガンを加えて、耐熱性をさらに向上させた合金もあります。

熱膨張率が少なく、ピストンやシリンダーヘッドなど、熱を持つ摺動(しゅうどう)部品に使われています。3000番台と同様に、切削加工で使われることは多くありません。

・5000番台(Al-Mg系合金)

マグネシウム(Mg)を添加し、強度や耐食性、溶接性、切削加工性などを高めています。A5052・A5056が代表的です。切削加工の材料として広く使われているのは、この5000番台のアルミ合金です。
種類が多く、用途が広いアルミニウム合金で、調理器具や燃料タンク、建材、反射板などに使われています。

・6000番台(Al-Mg-Si系合金)

マグネシウムとシリコンを添加したアルミニウム合金で、5000番台よりも強度と耐食性に優れています。A6061・A6063が代表的です。

建材や車両・船舶の構造材に加えて、押出性に優れているA6063は建材用のサッシにも使われています。

・7000番台(Al-Zn-Mg系合金)

亜鉛(Zn)とマグネシウムを加えて熱処理を施したもので、アルミニウム合金の中で最高の強度を持っています。超々ジュラルミンと呼ばれるA7075が代表的です。
「Al-Zn-Mg-Cu系合金」と、銅を含まない「Al-Zn-Mg系合金」に大きく分けられ、強度が高いのは銅を添加しているAl-Zn-Mg-Cu系合金です。溶接性にも優れていますが、熱処理が不十分だと応力による経年劣化を引き起こす可能性があります。

高い強度が必要な航空機部品や自動車部品、スポーツ用品などが主な用途です

アルミニウム合金の加工方法

アルミニウムやアルミニウム合金は、強度に優れたものや靭性の高いものなどがあり、使い分けに応じてさまざまな加工が可能です。
ここでは、アルミニウム合金の加工方法の例を、それぞれの特性を踏まえながらご紹介します。

・成形加工

アルミニウムが持つ高い靭性を活かし、塑性変形させて成形する方法です。成型加工にはプレス加工や曲げ、絞り、押出成形などの種類があります。

・切削加工

刃物によってアルミニウムの塊から不要な部分を削り取って除去し、目的の形状を成形する方法です。ドリル加工やフライス加工、旋削加工などがあります。
加工には、ボール盤やフライス盤、旋盤などの工作機械、それらの機能を複合的に持つマシニングセンタやターニングセンタなどが用いられます。

・接合

溶接のほか、機械的または接着剤による接合が可能です。溶接方法はアーク溶接が主流ですが、アルミニウムは酸化皮膜を形成しやすいため、TIG溶接(アルゴンガス)やMIG溶接(炭酸ガス)も適用されます。
機械的な接合方法としてはボルトやナットによる接合に加えて、板を折ったり重ねたりして変形させることで接合する方法もあります。

・切断

シャーリングによる切断のほか、丸鋸や帯鋸、ジグソーなどでの切断が可能です。柔らかいため、薄い板であればカッターなどを使って個人でも切断できます。

アルミニウム合金を加工する時のポイント

優れた特性を持ち、さまざまな場所で使用されるアルミですが、加工時に意識したいポイントもいくつかあります。アルミニウムを加工する際は、以下の点に注意しましょう。

・一般鋼に比べ強度は低い

一般鋼に比べると、アルミニウムは硬さや耐久性といった強度に劣ります。素材に傷や凹みが生じやすいため、使用箇所や取り扱いに注意が必要です。

・溶接に技術が必要

酸化皮膜を形成しやすく、空気中の酸素と触れると溶融が困難になるため、溶接加工時に使用できるシールドガスの種類が限定されます。
また、融点が低くすぐに溶け落ちてしまうことから、高精度の溶接には技術が必要です。

・構成刃先が起こりやすい

靭性が高く融点も低いアルミは、切削加工時に刃物へ付着しやすいです。高速切削を行った場合、切削工具の刃先に付着して構成刃先を作ってしまいます。
精度が高く効率的な切削を行うには、切粉をこまめに除去する、切削油を使用する、切削スピードを含めた切削条件を調整するなど、適切な対処が必要です。

・コストが割高

一般的な鋼材と比較して、アルミニウム合金は高価な素材です。使用はアルミの特性が必要な場所に限定し、製造コストが割高になるのを防ぐ工夫も欠かせません。

種類ごとの特性を理解して最適な加工を行おう

アルミニウムやアルミニウム合金は、軽さや導電性、耐食性、熱伝導性など、優れた特性を持ち、さまざまな場所で使われる素材です。
一方で、細かな特性は種類ごとに異なり、加工の際に意識したい注意点も少なくありません。アルミニウムや合金を使用する際は、特性を正しく理解して適した加工方法を選択することが重要です。