SS400ってどんな素材?メリット・デメリットを知って加工に生かそう

SS400ってどんな素材?メリット・デメリットを知って加工に生かそう

鉄鋼材料には多くの種類があり、用途に応じて使い分けられています。中でも、広く使われているのがSS400です。
SS400にはどのような特徴があり、どういった場面で使われているのでしょうか。この記事では、SS400の特徴やメリット・デメリット、加工についての注意点などをご紹介します。

SS400の特徴

SS400は、SS材(Steel Structure/一般構造用圧延鋼材)に分類される炭素鋼の一種です。
SS材は幅広い分野で使われていますが、SS400はその中でも汎用性が高く、流通量も多いのが特徴です。

SSの後に続く数字は引っ張り強さを表し、引っ張り強さが400~510N/mm2のSS材をSS400と呼びます。加工性やコストに優れており、建築材料や船舶、橋梁、自動車など、幅広い用途で使われています。

板厚の規定

SS400は、JISの規格に沿った板厚が流通しています。4.5mm、6mm、9mm、12mm、16mm、19mmなど、飛び飛びの厚みが設定されていますが、これ以外の厚みを利用することも可能です。

鋼種を表す400という数字は引っ張り強さにより定義されますが、実際の使用時に重要なのは変形に対する耐性を表す降伏点(耐力)です。降伏点は、板厚が厚くなるほど下がる点に注意しなければなりません。
SS400の降伏点は、板厚16㎜以下で245N/mm2、板厚16~40mmで235N/mm2、板厚40~100mm以下で215N/mm2となっています。

SS400のメリット

SS400がさまざまな場所で使われているのは、多くのメリットを持つためです。SS400にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

・流通量が多く種類が豊富

SS400は、鋼材の形状やサイズなどの種類が豊富です。使用箇所に適した鋼材を選びやすく、加工にかかる時間を短くできます。
また、流通量が多いため短納期で、鉄鋼材料としては安価な点もメリットです。工期短縮や工数削減が可能で、コストダウンにもつながります。

・加工性が高い

SS400は軟らかすぎず硬すぎない、適度な硬度を持つ鉄鋼材料で、加工性に優れています。溶接性も高く、さまざまな加工に対応可能です。
ただし、板厚25㎜以上の厚い材料を溶接する場合は、SM材など溶接用の材料が推奨されます。

・焼入れが不要

SS400は比較的炭素の含有量が少ないため、熱による影響を受けにくいのも特徴です。 焼入れなどの熱処理を行う必要がなく、そのままの状態で材料の硬さを発揮できます。

SS400のデメリット

SS400は、メリットだけでなくデメリットもあります。加工に影響を与えることがあるため、デメリットも確認しておきましょう。

・焼入れの効果が得られない

焼入れが不要な点はメリットにもなりますが、必要な強度が得られないというデメリットにもなります。 焼入れによる強度の向上が見込めないため、高い強度が求められる加工においては、別の材料を使わなければいけません。

・錆びやすい

SS400は比較的錆びやすい素材です。腐食防止のために、めっき加工や塗装、酸化被膜といった表面処理が必要になります。

素材として供給されるSS400は、ミルスケール(黒皮)と呼ばれる酸化被膜が施された黒皮材と、ミルスケールを落としたミガキ材に分けられます。
黒皮材は、外観が求められない場面で使われることが多いです。一方で、ミガキ材は材料が露出していて錆びやすいため、一般的には表面処理を施してから使われます。

・鉄鋼材料の中では軟らかい

SS400は軟鉄に分類され、鉄鋼材料の中では比較的軟らかいのが特徴です。機械的強度が求められる場面では、必要な強度に満たないこともあります。
例えば、特に高い硬度が求められるピンや軸受、耐摩耗性が求められる摺動部位などに向いているとは言えません。硬度の求められる用途には、S45Cなどを用いるのが一般的です。

SS400とS45Cの違い

SS400と並んで流通量の多い鋼種に、S45Cがあります。
SS400は一般構造用圧延鋼材(SS材)ですが、S45Cは機械構造用炭素鋼(S-C材)の一種です。

S45Cは炭素含有割合が0.42~0.48%の炭素鋼で、硬鋼に分類されます硬鋼の中では比較的安価で加工性が高く、焼入れによる硬度の調整を行えるのも特徴です。
高い加工性と硬度を生かして、ギヤやプーリー、ピン、シャフト、軸受ブラケット、自動車のエンジン周辺部品など、幅広い場面で使われています。
ただし、SS400と比べるとコストが高く、溶接性は劣ります。

SS400の加工のポイント

SS400の加工は、以下のポイントに注意することが重要です。

・熱の影響を受けた後の強度保証はない

SS400は適度な粘りがあり、曲げ加工もしやすい材料です。熱間加工ではさらに曲げ加工がしやすくなり、硬度の変化も少ないため、熱の影響をあまり考えずに加工できます。
ただし、熱を加えた後の強度が保証されるわけではありません。負荷の高い箇所に使用する場合は、硬度変化に配慮が必要です。

・含有成分で硬度・粘りが変わる

SS400は、リンや硫黄など、強度に影響がある成分の上限値しか規定されていません。材料ごとに含有成分が異なり、硬度や粘りが変わることがあります。
過去と同じ切削条件を、別の材料にも適用できるとは限らず、加工ごとに調整が必要になる点にも注意が必要です。

SS400の特性を理解して加工を行おう

SS400は鉄鋼材料の中では適度な硬さを持つ、流通量が多くコストに優れる、加工性が高いといった特徴を持ちます。使用頻度が高い、代表的な鋼種のひとつです。
ただし、軟らかく焼入れできない、材料ごとに成分が異なる場合があるなど、使用に注意が必要な部分もあります。材料の特性を理解して使うことが重要です。