2023.1.12

【工場見学】サンアロイの製作現場を見学。鍛造の強みとは?

創業から60年以上ロウ付けバイトを生産している阪本鉄工所様。創業から変わらない鍛造へのこだわり、鍛造の工程、ロウ付けバイトの需要やこれからについて、等々阪本鉄工所の阪本様に聞きました。兵庫県神戸市長田区にある阪本鉄工所様の工場の様子を皆さまにお届けします!






こんにちは、ではさっそく工場を案内しますね。




よろしくお願いします!早速ですが、この床に置いてある工具は..?




これはプレーナー用のバイトで、ワークを平面において削っていく商品です。左側が仕入れた時の状態で、右側が焼いて叩いて曲げた状態ですね。先の部分はフライス加工でさっときれいにして、刃をロウ付けして研磨して刃付けして塗装して、製品として収める予定です。



仕入れた状態の工具
加工後の工具



だいぶん大きいですよね!スローアウェイチップだと信じられないくらいの大きさでインパクトが・・!




うちで扱う中でも一番大きいレベルですね。今回は20本ずつ大口の話が来たのでね、ありがたいです(笑)

今からロウ付けバイトの鍛造をするので、どうぞ見学してください。





鍛造工程

バチバチッ・・。 早速、職人さんが鍛造の準備に取り掛かってくださいました。




鍛造では、まずは炎で熱を加えます。熱を加えることで、不純物を逃がしています。




なるほど・・だんだん先端が赤くなってきましたね!







ええ。そろそろですね。次は叩いていきます。この叩く工程によって、強度が増して丈夫なシャンクが出来上がるんですよ。







工具をハンマーで打つカンカンという音がたまらないですね、ASMR..。



ガッコン、ガッコン!!


仕上げはこのスプリングハンマーという機械で叩きます。スプリングハンマーは曲げ、伸ばし、ならしで使用します。
スプリングハンマーでは出来ない曲げ加工を先程のように二人一組になって、人の手でハンマーで叩いて曲げています。




凄い、なかなかインパクトがありますね・・!




完成









阪本鉄工所さんのロウ付けバイトは、一つ一つ職人さんが丹精込めて手作りされているので、丈夫な商品をお客様のご要望に合わせて作ることが出来るんですね・・!



そうですね。鍛造で製作するのは中々大変でもあるのですが、大きな塊から削り出すのに比べて、強度の高い製品であるというのはメリットではないでしょうか。特殊品であっても、少量からでもお客様のご要望に合わせて簡単な図面を頂ければその通りに作ることが出来るというのも強みですね。




ありがとうございます!ちなみに、御社の場合、標準と特殊品の割合はどれくらいですか?




現在、標準品と特殊品の受注の割合は、4:6で特殊品が半分以上を占めています。




鍛造からの製作経緯工程





ウィー… キーーン!


この後は、フライス加工でチップ座面を整えて、超硬やハイスをロウ付けして研磨・塗装・梱包出荷しています。バイトによっては刃幅に百分台の公差が必要な場合もあるので、 その場合はご協力頂いている会社さんと協業しています。ブレーカーを付けるのはユーザー様で加工されるのが一般的ですね。




超硬とシャンク材の間に入る、銀ローと銅板
ロー付け後の状態



左の画像が、超硬とシャンク材の間に入る銀ローと銅板です。銀ローと銅板でロー付けすると右の画像の状態になります。後は、塗装をすれば完成ですね。




おおおっ!沢山の工程があるんですね。
逃げとかは規定とかあるのですか。




逃げ角に関しては6度逃がすのが一般的ですが、お客様から図面が来て「○○度逃がしてください」と指示があることもありますので、その都度対応させて頂いています。




他メーカーとの違いは、旧型の多さ




さくさくで掲載協力を頂いているロウ付けバイトのPRを、メーカー様の視点からお願いします。




旧型、21型、11型など大手のメーカー様にはない鍛造した型番も、少量から生産出来て常に在庫を持っているところが強みですかね。他にも、他のメーカー様では置いていないような43型の逆勝手なども常に在庫を置いています。 ハイスのバイトとかヘール形状のバイトとかその辺りが今後売れるのではないかと思っています。




ヘール形状のロウ付けバイト


このぐにゃっとした形のものがヘール形状というのですね。こういう材質でこういうのないですかという問い合わせを、さくさくでも少しずつ頂いているので、増えてきているのではと実感を得ています。




品質管理に対するこだわり




商品の品質管理についての御社のこだわりを教えてください。




どこのメーカーさんでも実施されている内容だと思いますが...笑
あえて挙げるとすれば超硬は欠けやすいので、そういったものを出荷前に2重、3重にチェックして気を付けています。 超硬の膨張率とシャンクの鋼の膨張率は全然違います。ロウ付け時に熱を加えるのですが、鋼だけが結構膨張してしまうのに対し超硬は膨張率が低い。 どっちもが高温な状態でくっつけられているため急激に冷めれば鋼がギューッと元のサイズに戻ってしまうのに対し、超硬は元々サイズがそんなに代わっていないので、 超硬の方にものすごく負担がかかってしまう。そこで割れが起きやすいんです。そうならないために、ゆっくりゆっくりと冷ましています。 また、出荷の際には保護シールを貼ったり緩衝材を詰めたりして先端の保護に関しても気を付けています。大きいサイズのものだと何万円とする商品があり、 時間をかけて丹精込めて製作しているので、お客様の手元に良い状態で届くように慎重に製作しています。




    

材質と形状を含めると種類が多く、管理が大変そうです。




阪本鉄工所様商品の陳列棚


    

箱と中身が違うのは死活問題ですし、種類が多いので特に注意していますね。




    

他社では10本1箱で出しているところを、さくさくでは1本で箱詰めして出荷しているのも特徴です。




    

従来から小規模の加工業者さんですと1本・2本での要望が多かったので、対応が必要でした。




ロウ付けバイトの需要の変化




どのようなユーザーさまに使われていますか?




一人・二人でやっていらっしゃるところから、大手ユーザー様まで、旋盤を置いてらっしゃる会社でしたらどこでも幅広く使って頂いています。




幅広くなのですね。近年の、ロウ付けバイトの需要の変化について教えてください! 




ここ何年かの話ではないのですが、ロウ付けバイトを使いこなせるベテランの職人さんがどんどん引退されています。しかし加工用途によっては一定の需要は常にあり、新たなご要望にもお応えしています。




これからの阪本鉄工所のビジネス展開







これから、どのようにビジネスを展開していこうとお考えですか?




さくさくECを活用して全国規模でうちのバイトを使って頂けるようにしたいです。
全国のユーザー様から依頼があってもうちではどうしようもなく、いつかうちの製品を届けることが出来ればいいなと考えていました。さくさくさんからお声がけ頂いた時に、漠然と思い描いていたけれども実現が難しかった良いお話を頂けたと思いました。 スローアウェイの製品は海外でも安いものが増えてきたと聞きますが、ロウ付けバイトで弊社よりも安くて品質が同等程度という製品が海外から来たというのはほとんど聞いたことがないので、今後も安く性能の良い商品を届けていきたいですね。




まとめ




最後になりますが、記事の読者の皆さんにメッセージはありますか?




カタログに載っていない寸法も、簡単な図面でも頂ければ、お客様の用途に合わせて特殊なバイト・完全な別作品だったとしても少量でも製作いたします。どんどんご相談ください。




阪本様、ありがとうございました!







この記事を書いた人